【獣医師監修】猫のブラッシング、正しい方法と頻度は?嫌がる猫への対策とブラシの選び方

猫は非常にきれい好きで、自分で毛を舐めてお手入れ(グルーミング)をしますが、特に換毛期には抜け毛が多くなります。飼い主さんがブラッシングで抜け毛ケアをしないと、グルーミングの際に大量の毛を飲み込み、体に負担をかけてしまう可能性があります。

定期的なブラッシングは、抜け毛を取り除くだけでなく、血行を促進し美しい毛並みを保つ効果も期待できます。何より、愛猫との大切なコミュニケーションの時間にもなります。愛猫の健康を守るためにも、日頃からブラッシングを習慣にしましょう。

この記事では、猫のブラッシングに欠かせないブラシの選び方から、毛の長さ別の正しいやり方、適切な頻度、そしてブラッシングを嫌がる猫への対策まで、詳しく解説します。

猫のブラッシングにはブラシを使おう!選び方は?

猫のブラッシングは、手ぐしだけでは不十分です。専用のブラシを使うことで、皮膚を傷つけることなく、効率的に抜け毛や毛のもつれを取り除くことができます。愛猫に合ったブラシを選ぶことが、快適なブラッシングの第一歩です。

ブラシのおおまかな種類と用途

猫のブラッシング効果を高めるには、複数のブラシを使い分けるのがおすすめです。ブラシには「獣毛ブラシ」「コーム」「ラバーブラシ」「ピンブラシ」「スリッカーブラシ」など様々な種類があり、それぞれ用途や適した毛の長さが異なります。

ブラシの種類 適した被毛の長さ 主な用途
獣毛ブラシ 全てに対応 抜け毛の除去、毛艶出し
コーム 全てに対応 毛玉の発見、毛並みを整える
ラバーブラシ 短毛種 マッサージ、抜け毛の除去
ピンブラシ 長毛種 毛のもつれをほぐす、毛並みを整える
スリッカーブラシ 長毛種 毛玉の除去、アンダーコートの抜け毛除去

ブラシの細かい種類と利点・欠点

猫用ブラシは1本1,500円~3,000円程度が相場で、材質も「金属」「シリコン」「プラスチック」「天然毛」など様々です。それぞれの素材にメリット・デメリットがあるため、特徴を理解して選びましょう。

  • 金属製(スリッカーブラシなど):毛玉やもつれを効率的に取れますが、先端が鋭利なため、力を入れすぎると皮膚を傷つける危険性があります。使い方には注意が必要です。
  • プラスチック製:安価で手入れが簡単ですが、静電気が起きやすく、切れ毛の原因になることがあります。
  • シリコン製(ラバーブラシなど):肌あたりが柔らかく、マッサージ効果も期待できます。水洗いできるため衛生的です。
  • 天然毛製(獣毛ブラシなど):豚毛や猪毛が一般的で、適度な油分と水分が含まれています。静電気が起きにくく、ブラッシングすることで被毛に美しい艶を与えます。

例えば、獣毛ブラシには、しっかり抜け毛を取る硬めの「ハードタイプ」と、マッサージや仕上げに適した肌触りの良い「ソフトタイプ」があります。一つのブラシで全てをまかなうのではなく、それぞれの欠点を他のブラシで補いながら、愛猫に合ったブラッシングをしてあげるのが理想です。

短毛種の愛猫に用意したいブラシは?やり方は?

短毛種におすすめのブラシ

獣毛ブラシ(ソフトタイプ)
コーム
ラバーブラシ

短毛種の猫には、皮膚への刺激が少ない「ラバーブラシ」や「ソフトタイプの獣毛ブラシ」、そして毛並みを整える「コーム」の3種類を用意するのがおすすめです。被毛が短いため、ブラシの先端が直接皮膚に当たりやすいことを考慮して、肌あたりの優しいものを選びましょう。

【短毛種のブラッシングのやり方】

  1. まず、肌あたりの良い「ラバーブラシ」でマッサージするように優しく撫で、抜け毛を浮かせます。多くの猫が気持ちよさを感じるステップです。
  2. 次に、「ソフトタイプの獣毛ブラシ」で、浮き上がった抜け毛を絡め取りながら、毛並みに沿ってブラッシングします。
  3. 最後に「コーム」を全体に軽く通し、毛並みをきれいに整えて完了です。

金属製のブラシやハードタイプの獣毛ブラシは、短毛種の皮膚を傷つけてしまう恐れがあるため、使用は避けた方が賢明です。

長毛種の愛猫に用意したいブラシは?やり方は?

長毛種におすすめのブラシ

獣毛ブラシ(ハードタイプ)
コーム
ピンブラシ or スリッカーブラシ

長毛種の猫は、毛が長く絡まりやすいため、短毛種よりも丁寧なブラッシングが必要です。「ピンブラシ」や「スリッカーブラシ」で毛のもつれをほぐし、「ハードタイプの獣毛ブラシ」でしっかり抜け毛を取り、「コーム」で仕上げるのが基本的なやり方です。

【長毛種のブラッシングのやり方】

  1. まず「ピンブラシ」を使い、毛のもつれを優しくほぐします。いきなり根元からとかすのではなく、毛先から少しずつ進めるのがポイントです。
  2. 次に「スリッカーブラシ」で、毛の奥にある不要なアンダーコートや、複雑に絡んだ毛玉を処理します。この時、ブラシの先端が皮膚に直接当たらないよう、手首のスナップを効かせて優しくとかしましょう。
  3. 仕上げに「コーム」を全体に通し、毛玉が残っていないか最終チェックをします。
  4. 最後に「獣毛ブラシ」で毛並みを整え、美しい艶を出してあげましょう。

長毛種のブラッシングに使うブラシは先端が硬いものが多いため、常に力を入れすぎないよう注意し、ゆっくり丁寧に手を動かしてあげてください。

猫のブラッシング、頻度は?

理想的なブラッシングの頻度

短毛種:週に2~3回
長毛種:毎日1回

猫のブラッシングの適切な頻度は、毛の長さによって異なります。短毛種は週に2~3回、長毛種は毎日1回が理想です。特に春と秋の換毛期(3月~5月、9月~11月頃)は抜け毛が急増するため、いつもより時間をかけて丁寧に行ってください。

ただし、これはあくまで目安です。ブラッシングのしすぎは、かえって皮膚を傷つけたり、被毛を薄くしてしまったりする原因にもなります。愛猫の皮膚の状態や毛の量を見ながら頻度を調整しましょう。

長毛種の場合、毎日のブラッシングを怠ると、グルーミングで飲み込んだ毛が消化器官内で固まり、「毛球症」を引き起こすリスクが高まります。毛球症は食欲不振や嘔吐を引き起こし、重症化すると外科手術が必要になることもあるため、日々のケアが非常に重要です。

猫がブラッシングを嫌がるときの対策は?

ブラッシングを嫌がる主な理由

過去のブラッシングで痛い思いをした(トラウマ)
ブラシが体に合っておらず不快感がある
そもそも体に触られるのが苦手

ブラッシングをしようとすると逃げたり怒ったりする子もいます。猫がブラッシングを嫌がるのには、必ず理由があります。無理強いはせず、まずは原因を探り、少しずつ慣れてもらうための対策をとりましょう。

【嫌がる猫への対策ステップ】

  1. ブラシの見直し: 今使っているブラシが、愛猫の毛の長さや皮膚に合っているか確認しましょう。肌あたりの優しいラバーブラシや獣毛ブラシ(ソフト)から試してみるのがおすすめです。
  2. スキンシップから始める: まずはブラシを使わず、手で優しく撫でることから始めます。猫が喜ぶ首周りや背中などから触れていき、リラックスできる時間を作ってあげましょう。
  3. 短い時間で終わらせる: 慣れないうちは、ブラシを体に数回あてるだけですぐにやめます。「ブラッシングは怖くない」と学習してもらうことが目的です。
  4. ご褒美を活用する: ブラッシングが終わったら、すぐにおやつをあげたり、おもちゃで遊んであげたりして、「良いこと」と関連付けさせましょう。
  5. タイミングを選ぶ: 猫がリラックスしている食後や、眠そうなタイミングを狙うのも効果的です。

過去に痛い思いをしたトラウマがある猫には、特に根気強いアプローチが必要です。焦らず、毎日少しずつ「気持ちいいこと」として認識させてあげてください。

念入りにブラッシングしてあげたい場所や注意点は?

猫のブラッシングでは、特に毛玉ができやすい場所を意識することが大切です。また、猫が触られるのを嫌がるデリケートな部分でもあるため、注意深くケアしてあげましょう。

【特にケアしたい場所】

  • 脇の下
  • お腹
  • 後ろ足の付け根(内股)
  • お尻周り

これらの場所は体がこすれやすく、毛が絡まりやすい部分です。毛玉ができてしまった場合は、無理にブラシで引っ張らず、まずは指で優しくほぐしてみてください。どうしてもほぐれない固い毛玉は、皮膚を傷つけないよう、ペット用のハサミやバリカンで慎重にカットすることも検討しましょう。

【ブラッシングの注意点】

  • 力を入れすぎない: 人が頭を撫でるくらいの優しい力加減を意識してください。
  • 毛の流れに沿って: 毛並みに逆らってブラッシングすると猫は不快に感じます。
  • 無理強いはしない: 猫が嫌がったら、その日は潔く諦めましょう。
  • こまめに褒める: 「えらいね」「気持ちいいね」など、優しく声をかけながら行いましょう。

猫のブラッシングは愛情を込めて

猫のブラッシングで最も大切なのは、愛猫に痛い思いや不快感を与えず、「気持ちのいい時間」だと感じてもらうことです。一度でもトラウマになってしまうと、その後のケアが格段に難しくなります。

愛猫の毛の長さに合ったブラシを選び、正しいやり方で、嫌がらない範囲から少しずつ慣らしていきましょう。ブラッシングは、愛猫の健康を維持するための大切な習慣であり、飼い主さんとの絆を深める絶好のコミュニケーションです。ぜひ愛情を込めて、日々のケアを続けてあげてくださいね。

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