膀胱炎は人間にとって身近な病気ですが、大切な愛猫も同じように膀胱炎にかかることをご存知でしょうか。
いつもは元気いっぱいなのに、なんだか最近おとなしい…もし下記のような行動に心当たりがあれば、猫の膀胱炎を疑うサインかもしれません。
- うずくまって動かない
- 触ると嫌がったり、唸り声をあげたりする
- トイレにいる時間が長い
愛猫のいつもと違う様子に、飼い主様はこんな不安を感じていませんか?
- ✓ 猫の膀胱炎ってどんな症状が出るの?
- ✓ そもそも、どうして膀胱炎になるの?
- ✓ 病院に行かなくても自然に治るもの?
この記事では、猫の膀胱炎について、飼い主様が知りたい情報を網羅的に解説します。
具体的な症状や原因、動物病院での治療法、そして再発させないための予防策まで詳しくご紹介します。愛猫の膀胱炎が疑われる場合はもちろん、今後のために知識を深めたい方も、ぜひ参考にしてください。
猫の膀胱炎ってどんな病気?
膀胱炎とは
膀胱炎とは、腎臓から送られてきた尿を一時的に溜めておく袋状の器官「膀胱」の粘膜に炎症が起きる病気です。尿道から侵入した細菌が膀胱内で増殖し、炎症を引き起こすことが主な原因です。
特にメス猫はオス猫に比べて尿道が短く太いため、細菌が侵入しやすく、膀胱炎にかかりやすい傾向があります。また、膀胱内にできた尿結晶や尿結石が膀胱の粘膜を傷つけることで、二次的に膀胱炎を発症するケースも少なくありません。
膀胱炎の症状
猫が膀胱炎になると、以下のような様々なサインを見せます。痛みや不快感から、元気がなくなり食欲不振や嘔吐につながることもあります。
- 頻尿(何度もトイレに行く)
- 排尿困難(トイレで長くうずくまっているのにおしっこが少ししか出ない)
- 血尿(おしっこがピンク色や茶褐色になる)
- トイレ以外での粗相
- 排尿時に痛そうに鳴く
- お腹を触られるのを嫌がる
- おしっこの臭いがいつもよりきつい
猫の様子の変化に気づいたら、おしっこの色や量も確認してみましょう。白い色の猫砂を使うと、血尿などの異常を発見しやすくなるためおすすめです。
膀胱炎になる原因
猫の膀胱炎は、原因によって大きく「細菌性膀胱炎」と「特発性膀胱炎」に分けられます。
細菌性膀胱炎は、大腸菌などの細菌感染が原因で起こります。尿検査で細菌が見つかるため、原因の特定が比較的容易です。
一方、検査をしても明確な原因が見つからない膀胱炎を猫特発性(とくはつせい)膀胱炎と呼びます。こちらは、ストレスが最大の誘因と考えられており、その他にも肥満、飲水量の不足、運動不足、寒さなどが複合的に関わっているとされています。
猫は非常にデリケートな動物です。引っ越しや模様替え、家族構成の変化、来客など、環境の変化がストレスとなり、特発性膀胱炎の引き金になることがあります。
猫の膀胱炎、治療方法は?
猫の膀胱炎の治療は、まず動物病院で原因を正確に突き止めることから始まります。原因によって治療アプローチが異なるため、自己判断は禁物です。
細菌性膀胱炎の場合は、原因菌に有効な抗生物質の投与が主な治療となります。尿結石が原因であれば、食事療法で石を溶かしたり、外科手術や膀胱洗浄で石を取り除いたりすることもあります。
原因が特定できない特発性膀胱炎の場合は、対症療法と環境改善が治療の中心です。具体的には、消炎剤で痛みを和らげつつ、「清潔な水をいつでも飲める環境を整える」「ウェットフードなどで水分摂取量を増やす」「ストレスの原因を取り除く」といったケアを行います。
動物病院での診察料は、初診で2,000円程度が目安ですが、検査や処置の内容によって変動します。手術や特別な治療が必要な場合は、10,000円~50,000円、あるいはそれ以上かかることも想定しておくとよいでしょう。
自然治癒できる?治らない場合は?
軽度の特発性膀胱炎の場合、ストレス軽減などの環境改善によって症状が落ち着き、結果的に自然治癒するように見えることもあります。しかし、細菌性膀胱炎や尿石症を放置すると、重症化したり腎臓に悪影響を及ぼしたりする危険性があります。まずは動物病院で診断を受けることが大前提です。
また、処方された薬を飲んでも症状が改善しない、一度治ってもすぐに再発を繰り返す、というケースも少なくありません。もし2~3ヶ月治療を続けても改善が見られない場合は、別の病気が隠れている可能性も考えられます。かかりつけ医に相談の上、X線検査や超音波(エコー)検査といったより詳しい検査を受けたり、セカンドオピニオンを求めたりすることも検討しましょう。
猫の膀胱炎、対策できる?
猫の膀胱炎は再発しやすい病気でもあるため、日頃からの予防・対策が非常に重要です。原因別に効果的な対策をご紹介します。
細菌感染が原因の膀胱炎対策ですべきこと
細菌の侵入と増殖を防ぐためには、「トイレ環境の清潔維持」と「飲水量を増やして排尿を促す」ことが基本です。
トイレは常に清潔に保ち、猫砂は少なくとも1週間に1回は全量を交換しましょう。また、猫がいつでも新鮮な水を飲めるよう、水飲み場を複数箇所に設置し、毎日欠かさず水を取り替えてあげてください。
vet所属獣医師先生
特発性の膀胱炎対策ですべきこと
特発性膀胱炎の主な誘因とされるストレス、肥満、飲水不足、寒さなどを取り除き、猫にとって快適な生活環境を整えることが最大の対策です。
- 食事管理と運動:肥満気味なら低カロリーのフードに切り替え、おもちゃで一緒に遊ぶ時間を増やして運動量を確保しましょう。
- 水分補給:ドライフードだけでなくウェットフードを取り入れるなど、食事からも水分を摂取できるよう工夫しましょう。
- 温度管理:猫が快適に過ごせる室温を保ち、特に冬場はペット用ヒーターなどで寒さ対策をしましょう。
- ストレス軽減:キャットタワーを設置して上下運動ができるようにしたり、安心して隠れられる場所を用意したりして、猫がストレスを発散できる環境を作りましょう。
結石が原因の膀胱炎対策ですべきこと
尿中のミネラルバランスの乱れや、尿のpHがアルカリ性または酸性に傾きすぎることが結石の原因となります。日々の食事管理が結石のリスクを低減する鍵です。
獣医師の指導のもと、尿のpHを適切にコントロールしたり、結石の原因となるミネラル成分を調整したりした療法食を与えるのが効果的です。市販でも様々なケアフードが販売されています。
猫の膀胱炎は、飼い主様の日々の観察によって早期発見が可能な病気です。「なんだか様子がおかしいな」と感じたら、決して放置せず、できるだけ早く動物病院で診察を受けさせてあげましょう。