猫風邪は自然治癒する?症状・原因・治療法と人にうつるのか解説

「普段は元気な愛猫が、最近なんだか食欲がなくて元気がない。もしかして猫風邪かも?」と悩んでいる飼い主さんはいませんか。猫風邪は、人間の風邪のように放っておいて自然に治るものではありません。

特に、免疫力の低い子猫や高齢の猫の場合、放置することで症状が悪化し、命に関わる危険性もあります。

この記事では、以下のような猫風邪に関する疑問や不安を解消します。

  • 愛猫の症状は猫風邪なの?
  • 猫風邪の原因やウイルスの種類は?
  • 猫風邪になったら何をしてあげればいい?

まずは愛猫の症状をよく観察し、猫風邪かどうかを判断するために、この記事がお役に立てば幸いです。

もし気になる症状が一つでもあり、続くようであれば、自己判断せずに必ず動物病院を受診してくださいね。

猫風邪の原因は?ウイルスの種類は?

猫風邪の主な原因はウイルスや細菌への感染です。これらの病原体は感染力が非常に強く、特に多頭飼育の環境や野良猫の集団では、多くの猫が感染している可能性があります。

猫風邪を引き起こす代表的な原因(病原体)として、主に以下の3種類が挙げられます。それぞれのウイルスの種類によって症状や治療法が異なるため、原因を特定することが重要です。

  • 猫ヘルペスウイルス
  • 猫カリシウイルス
  • 猫クラミジア

これらのウイルスは、まだ免疫が十分に発達していない子猫が特に発症しやすいと言われています。

猫風邪の症状は?種類別の特徴

猫風邪の症状は、原因となるウイルスの種類によって特徴が異なります。ここでは、代表的な3つのウイルス別に、具体的な症状や特徴を見ていきましょう。

ヘルペスウイルスによる猫風邪の症状と特徴

ヘルペスウイルスが原因で発症する猫風邪は、「猫ウイルス性鼻気管炎」とも呼ばれ、くしゃみ、鼻水、結膜炎といった呼吸器系の症状が主に現れます。初期症状として、くしゃみや目の充血、涙目が見られ、進行すると発熱や元気消失、食欲不振につながります。特に子猫が重度の結膜炎になると、まぶたと眼球がくっついてしまう「眼球癒着」を起こす危険性もあります。

感染経路

感染した猫の涙や目ヤニ、鼻水などの分泌物にウイルスが含まれています。そのため、分泌物への直接的な接触や、くしゃみなどの飛沫によって感染が広がります。

検査方法

主に眼科検査や血液検査、X線検査などが行われます。免疫力が低下していると重症化しやすいため、猫エイズウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)の検査を併せて行うこともあります。

予防方法

猫ヘルペスウイルスにはワクチンがあり、感染を100%防ぐことはできませんが、発症予防や症状の軽減、回復期間の短縮に効果があります。感染機会を減らすために、完全室内飼いを徹底することが最も重要です。多頭飼いの場合は、ワクチン接種はもちろん、感染した猫を速やかに隔離し、蔓延を防ぐ対策をしましょう。


参考
ネコカリキウイルス及びネコヘルペスウイルス感染診断のための微量中和試験の評価

カリシウイルスによる猫風邪の症状と特徴

カリシウイルスは、舌や口の中、気道、結膜などの粘膜で増殖します。ヘルペスウイルスと同様に発熱、涙、くしゃみといった症状が出ますが、カリシウイルスによる猫風邪の最大の特徴は、舌や口の中に水疱や潰瘍(口内炎)ができることです。これにより強い痛みが生じ、食欲が著しく低下することがあります。

感染経路

ウイルスを排出している猫の分泌物(唾液、鼻水など)に直接触れることで感染します。また、飼い主の手や衣服、食器などを介した間接的な接触でも感染するリスクがあります。

検査方法

症状や経過に応じて、血液検査やX線検査などが行われます。

予防方法

病原体との接触を避けることが基本です。ワクチン接種は、感染を完全に防ぐものではありませんが、発症した際の症状を軽くし、重症化を防ぐ効果が期待できます。屋外にはワクチンとは異なる型のウイルスも存在するため、室内飼育を徹底し、感染リスクを減らしましょう。


参考
ネコヘルペスウイルスとネコカリシウイルス感染の血清学的およびウイルス学的調査

クラミジアによる猫風邪の症状と特徴

クラミジアが原因の場合、しつこい結膜炎が主な症状として現れます。最初は片方の目から症状が出始め、次第に両目に広がることが多いのが特徴です。結膜が赤く腫れ、ドロッとした目ヤニが出ます。免疫力が低下している子猫などでは、肺炎を引き起こすこともあり注意が必要です。

感染経路

感染猫の鼻水や糞便に含まれるクラミジア菌に接触することで感染します。

検査方法

主に血液検査や眼科検査が行われます。呼吸器症状が重い場合は、X線検査などが必要になることもあります。

予防方法

ワクチン接種が有効な予防策です。また、感染猫との接触を避けるためにも、室内飼いを徹底しましょう。屋外はクラミジアだけでなく、猫エイズなどの致死的な感染症にかかるリスクも非常に高くなります。


参考
愛玩動物由来感染症のリスク評価及び対策に資する

猫風邪の治し方

猫風邪の治し方は、原因となるウイルスの種類によって異なります。まずは動物病院で原因を特定してもらうことが、適切な治療への第一歩です。

【原因別】猫風邪の主な治し方
  • ヘルペスウイルス:抗ウイルス薬、インターフェロン
  • カリシウイルス:インターフェロン注射、対症療法
  • クラミジア:抗生物質(内服薬・点眼薬)

上記のように、原因に応じて抗ウイルス薬や抗生物質などを用いた投薬治療が基本となります。インターフェロンは、ウイルスの増殖を抑える働きを持つタンパク質です。また、結膜炎や鼻炎の症状がひどい場合には、点眼薬や点鼻薬、ネブライザー(霧状の薬を吸入させる治療)などが併用されることもあります。

体力が著しく低下した子猫などには、脱水を防ぐための「輸液」や「栄養補給」などの点滴治療が行われる場合もあります。

自然治癒できる?

成猫で体力があり症状が軽い場合、自然治癒することもあります。しかし、症状が一旦落ち着いても、ウイルスが体内に残り、季節の変わり目やストレスなどで免疫力が低下した際に再発することが少なくありません。

特に子猫や高齢の猫は重症化しやすいため、猫風邪の自然治癒は期待せず、放置しないことが鉄則です。症状が軽くても、早めに動物病院を受診し、適切な治療を受けさせましょう。通常、治療を開始すれば2〜3週間ほどで回復に向かいます。

猫風邪、治療費は?

猫風邪の治療費は、症状の重さや治療内容、動物病院によって大きく異なります。ここでは、あくまで一般的な目安としてご紹介します。

猫風邪の治療費の目安

全身の状態によって変動しますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • 診察料:数千円程度
  • 投薬料(1週間分):5,000円~10,000円程度
  • 血液検査:10,000円前後
  • 入院費(1日あたり):約5,000円~(感染症の場合は追加料金がかかることも)

※上記はあくまで一例です。詳しくはかかりつけの動物病院にご確認ください。

このように、猫風邪の治療費は通院だけでも1万円以上かかることが多く、入院や追加の検査が必要になるとさらに高額になる可能性があります。万が一の出費に備え、ペット保険への加入を検討する飼い主さんも増えています。

猫風邪、市販薬は?あげても大丈夫?

愛猫が苦しんでいると、「何か薬はないか」と考えるかもしれませんが、猫風邪に効く市販薬はありません。人間用の風邪薬を自己判断で与えることは、中毒などを引き起こす可能性があり非常に危険ですので絶対にやめてください。

猫風邪の治療には、動物病院で処方される抗生物質や抗ウイルス薬が必要です。これらの薬は、猫の体重や年齢、症状に合わせて獣医師が適切に種類や量を判断します。素人判断で薬を与えると、かえって症状を悪化させたり、薬が効きにくい耐性菌を生み出してしまったりするリスクがあります。

仕事などで忙しくても、愛猫の症状に気づいたら、なるべく早く動物病院へ連れて行き、獣医師の診察を受けるようにしてください。

猫風邪は人間に感染するの?

「猫の風邪は人間にも感染するの?」と心配になる方もいるでしょう。結論から言うと、ほとんどの猫風邪は人間には感染しません。

ただし、例外として「猫クラミジア感染症」の原因であるクラミジア菌は、ごく稀に人間に感染し結膜炎などを引き起こす「人獣共通感染症(ズーノーシス)」として知られています。感染した猫の目ヤニや鼻水に触れた手で、ご自身の目や口を触らないよう注意しましょう。

【注意】コリネバクテリウム・ウルセランス菌

近年、猫から人への感染が報告されている細菌に「コリネバクテリウム・ウルセランス」があります。2016年には、この菌に感染したことによる死亡例も国内で報告されました。

この菌に感染した猫は、くしゃみや鼻水といった風邪のような症状や皮膚病を起こすことがあります。人間が感染すると、喉の痛みや咳など風邪に似た症状から始まり、重症化すると呼吸困難に陥る危険性があります。

飼い猫に風邪のような症状や皮膚の異常が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。また、症状のある猫、特に野良猫と接触する際はマスクや手袋を着用し、触った後は必ず手洗いを徹底することが重要です。この菌は抗菌薬による治療が可能です。


参考
コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&A|厚生労働省

猫風邪の対策方法は?

猫風邪は、日頃の心がけで感染リスクを減らすことができる病気です。愛猫を猫風邪から守るために、飼い主さんができる対策方法をしっかりと実践しましょう。

対策① 生活環境を整える

猫風邪の主な感染原因は、感染猫との接触(飛沫感染・接触感染)です。以下の点を徹底し、ウイルスとの接触機会を減らしましょう。

  • 完全室内飼いの徹底:屋外には多くの感染猫がいます。外に出さないことが最大の予防策です。
  • 多頭飼育での注意:新しい猫を迎える際は、一定期間隔離して健康状態を確認しましょう。もし風邪の症状が出た猫がいたら、速やかに隔離して他の猫への感染を防ぎます。
  • 清潔な環境の維持:食器やトイレをこまめに清掃・消毒し、ウイルスが繁殖しにくい環境を保ちましょう。

対策② 動物病院でのケア

家庭での対策と合わせて、獣医師による専門的なケアも非常に重要です。

  • ワクチン接種:混合ワクチンを定期的に接種することが最も効果的な対策です。感染を完全に防ぐことはできなくても、発症時の症状を大幅に軽減できます。
  • 定期的な健康診断:かかりつけの動物病院で定期的に健康診断を受けることで、目ヤニや鼻水といった初期症状を早期に発見し、重症化する前に対処できます。

これらの対策を日頃から意識して、大切な愛猫の健康を守ってあげてください。

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