【獣医師監修】犬の歯磨き、完全ガイド|嫌がらないやり方・頻度・おすすめグッズ

愛犬が歯磨きを嫌がってしまい、毎日のケアに苦労していませんか?実は、犬の歯磨きについて悩む飼い主さんは非常に多く、3歳以上の犬の約8割は歯周病、またはその予備軍であるといわれています。

大切な家族である愛犬の歯の健康は、飼い主さんが守ってあげたいですよね。この記事では、犬の正しい歯磨きの方法や適切な頻度、歯磨きを嫌がる場合の具体的な対処法、さらにはおすすめの歯磨きグッズまで、網羅的に解説します。正しいオーラルケアで、愛犬の口内環境を清潔に保ち、健康な毎日をサポートしてあげましょう。

犬の歯磨き、方法は?

犬の歯磨きは、正しい手順と優しさで行うことが重要です。以下のステップを参考に、愛犬に負担をかけない方法をマスターしましょう。

STEP.1
リラックスさせる
まずは飼い主さんの膝の上など、愛犬が安心できる場所でリラックスさせます。
STEP.2
口元に触れる
優しく声をかけながら口元を触り、唇を指でそっとめくります。
STEP.3
歯ブラシをあてる
歯ブラシを歯と歯茎の境目に斜め45度の角度で優しくあてます。まずは嫌がりにくい前歯の外側から始めましょう。
STEP.4
優しくブラッシング
力を入れすぎず、円を描くように小刻みに歯ブラシを動かします。前歯に慣れたら、少しずつ奥歯へと移動していきます。
STEP.5
全体を磨く
すべての歯を磨き終えるまでの時間は、2~3分が目安です。無理せず、できる範囲から始めましょう。
STEP.6
たくさん褒める
歯磨きが終わったら、「よくできたね!」とたくさん褒めて、ご褒美のおやつをあげましょう。「歯磨き=良いことがある」と学習し、協力してくれるようになります。

いきなり全ての歯を完璧に磨こうとせず、まずは歯ブラシを口に入れることに慣れさせることから始めるのが、犬の歯磨きを成功させる秘訣です。

犬の歯磨き、頻度は?

犬の歯磨きを行う頻度

理想は毎日1回
最低でも週2〜3回

犬の歯周病を効果的に予防するためには、毎日の歯磨きが理想です。もし毎日の実施が難しい場合でも、愛犬の健康のために、最低でも週に2〜3回は歯磨きの時間を確保しましょう。

犬の口内に付着した歯垢は、わずか3〜5日で硬い「歯石」へと変化してしまいます。歯垢の段階であれば歯磨きで除去できますが、一度歯石になってしまうと、家庭でのケアで取り除くことはできません。

歯石を放置すると歯周病が進行し、動物病院で全身麻酔をかけて歯石除去の処置や、場合によっては抜歯が必要になることもあります。日々のこまめな歯磨きが、将来的な大きな負担を防ぐことに繋がるのです。

また、与えているドッグフードの種類によっても歯垢のつきやすさは変わります。一般的に、水分量の多い「ウェットタイプ」は「ドライタイプ」に比べて歯に付着しやすく、歯垢がつきやすい傾向にあります。

犬の歯磨き、嫌がる原因は?対処法は?

犬が歯磨きを嫌がる原因

口を触られることへのストレスや恐怖
口の中に痛みや違和感がある(虫歯・歯周病など)

愛犬が歯磨きを嫌がるのには、必ず原因があります。主に「歯磨き行為そのものへのストレス」と「口内の痛み」の2つが考えられます。

ストレスを感じている

犬にとって口周りはデリケートな部分であり、見慣れない歯ブラシを口に入れられることに強いストレスや恐怖を感じることがあります。無理やり押さえつけて歯磨きをしようとすると、かえって「歯磨きは嫌なこと」という認識を強めてしまうため逆効果です。

対処法:ステップを踏んで慣れさせる

焦らず、以下のステップで少しずつ歯磨きに慣れさせていくことが、嫌がる愛犬への最も効果的な対処法です。

STEP.1
口周りに触れる練習
まずは顔や口元を優しく撫でることから始め、触られることに慣れさせます。できたら褒めてあげましょう。
STEP.2
歯や歯茎に触れる練習
指で優しく唇をめくり、歯や歯茎にそっと触れてみます。指に美味しい味のする犬用歯磨きジェルなどをつけて行うと、より受け入れやすくなります。
STEP.3
歯磨きグッズに慣らす
歯磨きシートや歯ブラシの匂いを嗅がせたり、遊ばせたりして、グッズ自体への警戒心を解きます。慣れてきたら、シートを巻いた指や歯ブラシをそっと口に入れてみましょう。

どのステップも短時間で終え、終わったら必ず褒めてご褒美をあげるのがポイントです。

口の中に虫歯や傷がある

歯ブラシが当たると痛むため、歯磨きを嫌がっている可能性も考えられます。歯周病が進行して歯肉が腫れていたり(歯肉炎)、口内炎ができていたりすると、強い痛みを感じます。この状態で無理に歯磨きを続けることは、愛犬にとって拷問と同じです。

対処法:すぐに動物病院で診察を受ける

口臭が強くなった、よだれが増えた、歯茎が赤い、出血しているなどのサインが見られたら、すぐに動物病院へ連れて行き、獣医師に口の中を詳しく診てもらいましょう。痛みの原因を特定し、適切な治療を受けることが最優先です。自己判断で放置せず、専門家のアドバイスを仰いでください。

犬の歯磨き、おすすめグッズは?

犬の歯磨きにおすすめなグッズ

犬用歯ブラシ
歯磨きシート・指サック
歯磨きガム・おもちゃ
スケーラー(※使用は要注意)

犬の歯磨きをサポートする、おすすめの便利グッズを紹介します。愛犬の性格や慣れ具合に合わせて最適なものを選んであげましょう。

犬用歯ブラシ

犬の歯磨きの基本となるグッズです。犬の口は小さく、歯茎もデリケートなため、「ヘッドが小さく」「毛が柔らかい」ものを選びましょう。人間の歯ブラシに比べてエナメル質が薄い犬の歯を傷つけません。毛が360度についているタイプは、角度を気にせず磨きやすいため初心者におすすめです。人間用を使う場合は、乳幼児用のヘッドが小さく柔らかいもので代用できます。

歯磨きシート

歯ブラシをどうしても嫌がる犬の入門編としておすすめなのが歯磨きシートです。飼い主の指にシートを巻き付けて使うため、愛犬も受け入れやすい傾向にあります。指の感覚で歯の表面を優しくこするように磨いてあげましょう。歯と歯の隙間の歯垢は取りにくいため、慣れてきたら歯ブラシへの移行を目指すのが理想です。

歯磨き玩具

噛んで遊んでいるうちに、表面の凹凸が歯垢を除去してくれるおもちゃです。飽きずに遊んでくれるよう、愛犬の好きなフレーバーが付いているものや、安全な素材でできたものを選びましょう。ただし、歯磨き玩具だけで完璧に歯垢を落とすことは難しいため、あくまで歯ブラシでのケアの補助として活用するのがおすすめです。

スケーラー

歯に付着した歯石を取るための器具ですが、専門知識のない飼い主さんが安易に使うのは非常に危険です。先端が鋭利なため、犬が動いた際に口内や目を傷つけるリスクがあります。また、力の入れ具合を間違えると歯のエナメル質を削ってしまい、逆に歯垢がつきやすい状態にしてしまいます。使用する場合は、必ずかかりつけの獣医師やブリーダーから正しい使い方を指導してもらってください。

犬の歯磨き、ガムは使っていい?歯磨き粉は?

犬の歯磨きガムと歯磨き粉

必ず「犬用」を使用する
人間用のものは絶対に使用しない

歯磨きのご褒美や補助として、歯磨きガムや歯磨き粉(ジェル)は非常に有効です。ただし、使用する際は必ず「犬用」のものを選んでください。

歯磨きガムは、噛むことで歯垢を除去する効果が期待でき、美味しい味が付いているため多くの犬が喜んでくれます。歯磨き後のご褒美として与えるのも良いでしょう。

一方で、人間用のガムや食品に含まれる「キシリトール」は、犬にとって非常に有毒です。少量でも摂取すると急性の中毒症状を引き起こし、命に関わる危険があるため、絶対に与えないでください。

また、犬用の歯磨き粉(歯磨きジェル)は、犬が好むフレーバーで歯磨きを受け入れやすくしたり、口臭予防や歯垢をつきにくくする成分が含まれていたりします。人間用の歯磨き粉は、泡立つ成分(発泡剤)や犬が消化できない成分が含まれているため、使用は絶対に避けてください。

犬の歯磨きを楽しい時間に

犬の歯磨きの方法から頻度、嫌がる場合の対処法や便利なグッズまで解説しました。毎日の歯磨きを習慣化することは、飼い主さんにとっても愛犬にとっても根気のいることかもしれません。しかし、日々のオーラルケアの積み重ねが、歯周病を防ぎ、愛犬の健康寿命を延ばすことに直結します。

無理強いはせず、たくさん褒めてあげることを忘れずに、愛犬に合ったグッズを活用しながら、歯磨きを「飼い主さんとの楽しいコミュニケーションの時間」に変えていきましょう。

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