犬は人間のように汗をかいて体温調節をすることが苦手なため、暑さに非常に弱い動物です。そのため、夏になると元気がなくなったり食欲が落ちたりといった「夏バテ」の症状が見られることがあります。「うちの子、もしかして夏バテかも?」と心配な飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、犬の夏バテの具体的な症状や原因、すぐに実践できる対策法、そして特に夏バテしやすい犬種について、獣医師監修のもと詳しく解説します。愛犬の夏バテサインに早く気づき、適切に対処するためにぜひお役立てください。
犬の夏バテの症状は?
・歩くスピードが遅くなる
・元気がなくなる、ぐったりする
・食欲がなくなる、ご飯を食べない
・睡眠時間が増える
・下痢や嘔吐、軟便をする
犬が見せる夏バテのサインは、人間の症状と似ている点も多くあります。ここでは、代表的な5つの症状について、それぞれ詳しく解説していきます。
散歩中に見られる症状:歩くスピードが遅くなる
夏の散歩中に見られやすい症状の一つが、歩くスピードの低下です。気温の高さに加え、アスファルトからの照り返しで体力を消耗し、普段は散歩好きな犬でも足取りが重くなったり、途中で座り込んでしまったりします。
特に真夏の昼間の散歩は、命に関わる「熱中症」になるリスクも非常に高いため危険です。
vet所属獣医師先生
室内でも見られる症状:元気がなくなる・ぐったりする
犬の夏バテの症状は屋外だけでなく、室内でも現れます。いつもは元気いっぱいなのに、ぐったりして動かない、お気に入りのおもちゃで遊ばない、飼い主さんが帰宅しても出迎えに来ないなど、活動量の低下が見られたら夏バテのサインかもしれません。
vet所属獣医師先生
食事面での症状:食欲不振・ご飯を食べない
夏バテによる体力の消耗は、犬の食欲不振を引き起こします。いつもは喜んで食べるドッグフードやおやつを残したり、においを嗅ぐだけで食べようとしなかったりといった行動が見られます。特に夏場に限って食欲の低下が見られる場合は、夏バテを疑いましょう。
「いつも食べているドッグフードを急に残す」「大好物のおやつも食べない」といった食欲不振が続く場合は、夏バテが進行している可能性があります。
行動の変化:睡眠時間が増える
活動量が減り、食欲も落ちることで、犬は自然と寝て過ごす時間が長くなります。ぐったりして一日中寝ているような状態は、夏バテの典型的な症状です。ただし、この状態が続くと体力や筋力が低下してしまうため、注意深く見守る必要があります。
体調不良のサイン:下痢・嘔吐・軟便
夏バテが進行すると、胃腸の働きも弱まり、消化不良を起こしやすくなります。その結果、下痢や嘔吐、普段より柔らかい便などの症状が現れることがあります。これらの消化器症状は脱水を引き起こす可能性もあるため、特に注意が必要です。
愛犬の夏バテに気づくポイントは?
春先の元気な時期と比べてどうか
これまで挙げた症状は犬の夏バテでよく見られるものですが、他の病気や加齢が原因である可能性も考えられます。
例えばシニア犬(老犬)の場合、夏バテでなくても加齢によって睡眠時間は増え、食欲にもムラが出てきます。また、子犬の下痢や嘔吐は環境の変化など様々な要因で起こりうるため、一概に夏バテのせいとは断言できません。
そこで重要になるのが「春先の元気な時期と比べてどうか」という視点です。4月~6月頃には見られなかった症状が、夏になって急に現れたのであれば「夏バテ」の可能性が高いと判断できます。
普段から愛犬の様子をよく観察し、些細な変化に気づいてあげることが、夏バテはもちろん、他の病気の早期発見にも繋がります。
犬の夏バテ、対策は?
・こまめな水分補給を徹底する
・食欲を刺激する食事の工夫
・エアコンやグッズで快適な室温を保つ
・散歩の時間帯やコースを見直す
夏バテ対策①:こまめな水分補給を徹底する
犬の夏バテ対策で最も重要なのが、十分な水分補給です。脱水症状を防ぐため、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えましょう。水の置き場所を複数用意するのも効果的です。なかなか水を飲まない場合は、フードに混ぜたり、犬用の経口補水液やヤギミルクなどを活用したりするのもおすすめです。
夏バテ対策②:食欲を刺激する食事の工夫
夏バテで食欲が落ちている犬には、食事の工夫が必要です。ドライフードをぬるま湯でふやかして香りを立たせたり、嗜好性の高いウェットフードをトッピングしたりすると、食欲を刺激できます。ウェットフードは水分補給にも繋がるため一石二鳥です。
また、茹でたささみや、水分豊富なきゅうり、スイカ(種と皮は除く)などを少量おやつとして与えるのも良いでしょう。食事からも水分を摂取できるよう工夫することが大切です。
夏バテ対策③:エアコンやグッズで快適な室温を保つ
犬が多くの時間を過ごす室内環境を快適に保つことは、夏バテ対策の基本です。エアコンを適切に使い、室温を25〜28℃程度に設定しましょう。ただし、冷風が直接犬に当たらないように風向きを調整してください。扇風機やサーキュレーターで空気を循環させたり、ひんやりとしたクールマットを用意したりするのも効果的です。
夏バテ対策④:散歩の時間帯やコースを見直す
夏の散歩は、時間帯と場所選びが重要です。日中のアスファルトは非常に高温になり、肉球のやけどや熱中症のリスクを高めます。散歩は、比較的涼しい早朝や、日が落ちて地面の熱が冷めた夜間に行いましょう。コースも、アスファルトを避けて土や草の上を歩ける公園などを選ぶのがおすすめです。日陰を選んで歩くなどの配慮も忘れないようにしましょう。
vet所属獣医師先生
夏バテしやすい犬種は?
・ダブルコートの犬種
・短頭種の犬種
夏バテしやすい犬種①:ダブルコートの犬
被毛が「オーバーコート」と「アンダーコート」の二層構造になっているダブルコートの犬種は、もともと寒い地域に適応しているため、日本の蒸し暑い夏が苦手です。密集した被毛に熱がこもりやすいため、特に夏バテや熱中症に注意が必要です。
代表的な犬種には、シベリアン・ハスキー、ゴールデン・レトリーバー、ポメラニアン、柴犬、コーギーなどがあります。
夏バテしやすい犬種②:短頭種
パグやフレンチ・ブルドッグ、シーズーなどの鼻が短い短頭種は、気道が狭く呼吸による体温調節(パンティング)が苦手です。そのため、体に熱がこもりやすく、他の犬種に比べて夏バテや熱中症のリスクが非常に高いとされています。
代表的な犬種には、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリア、シーズー、狆(チン)などがあります。
犬の夏バテ、対策は?
犬の夏バテ対策は、いくつかの注意点を守ることが大切です。例えば、エアコンで室内を涼しくすることは重要ですが、冷やしすぎはかえって体調を崩す原因になります。また、「留守番中はエアコンを切り、帰宅後に急に冷やす」といった急激な温度変化は、犬の自律神経に負担をかけ、夏バテを悪化させる可能性があります。
留守番中もエアコンを適切に利用し、一定の室温を保つように心がけましょう。クールマットや凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものを活用するなど、犬自身が涼める場所を選べるようにしてあげるのも良い方法です。本格的な夏が来る前の、初夏から対策を始めることが重要です。
犬の夏バテ。世話は普段以上に気をつけて!
犬は自分で暑さ対策をすることができません。愛犬を夏の厳しい暑さから守り、夏バテを防ぐためには、飼い主さんのきめ細やかな配慮が不可欠です。今回ご紹介した症状や対策を参考に、普段以上に愛犬の様子に気を配り、快適な夏を過ごせるようにサポートしてあげましょう。
もし症状が改善しない、または悪化するような場合は、熱中症など他の病気の可能性も考えられるため、早めに動物病院を受診してください。