【獣医師監修】犬の皮膚病、原因と対策|お腹や背中の湿疹など症状別のケア方法

犬の皮膚トラブルは、多くの飼い主さんが直面する悩みのひとつです。愛犬が体を痒がったり、痛がったりする姿は見ていて辛いもの。特に、フケや脱毛、目・口周りの湿疹といった目に見える症状は、周りから心配されることも少なくありません。

犬の皮膚病には遺伝的な要因もありますが、その多くは日頃のケアや環境整備で予防・対策が可能です。

この記事では、犬の皮膚病の主な原因と、今日から始められる具体的な対策について詳しく解説します。

ノミ・ダニ・寄生虫が原因の皮膚病、対策は?

犬の皮膚病で非常に多い原因が、ノミ・ダニ・マダニといった外部寄生虫です。これらの寄生虫が体に付着することで、激しいかゆみやアレルギー反応(ノミアレルギー性皮膚炎など)を引き起こします。

特にノミやダニが付きやすい背中、腰、お尻周りに湿疹や脱毛が見られるのが特徴です。強いかゆみから、犬は患部を舐めたり噛んだりして皮膚を傷つけ、そこから細菌が侵入して二次感染を起こす危険性もあります。

ノミ・ダニ・寄生虫への対策は、予防と環境整備が基本です。

  • 定期的な予防薬の投与:動物病院で処方されるスポットタイプや経口薬(飲み薬)を定期的に使用し、寄生を未然に防ぎましょう。
  • 飼育環境の清潔維持:ノミやダニは、犬の抜け毛やホコリの中で繁殖します。ベッドやカーペットなどをこまめに掃除し、清潔な環境を保つことが重要です。
  • 散歩コースの注意:草むらや藪の中は、ノミ・ダニ・マダニが多く潜んでいます。散歩の際は、なるべくそうした場所を避けるように心がけましょう。

細菌感染が原因の皮膚病、対策は?

犬の皮膚にもともと存在する常在菌が、免疫力の低下などをきっかけに異常繁殖することで皮膚病を引き起こすことがあります。代表的なものが「膿皮症(のうひしょう)」です。

加齢やストレス、アレルギー、他の病気などで皮膚のバリア機能や免疫力が低下すると発症しやすくなります。症状としては、皮膚の赤み、発疹、フケ、脱毛などが挙げられ、目や口の周り、指の間、股など皮膚が擦れやすい部分によく見られます。

細菌感染による皮膚病の対策は、動物病院での治療とスキンケアが中心となります。

  • 動物病院での早期治療:症状に気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。抗生物質の内服薬や外用薬で、細菌の増殖を抑える治療が一般的です。
  • 薬用シャンプーでのケア:獣医師の指示のもと、殺菌作用のある薬用シャンプーを使って皮膚を清潔に保ちます。洗い方や頻度を守ることが大切です。

発見が遅れると症状が皮膚の奥深くまで進行し、治療が長引くことがあります。愛犬の体をこまめにチェックし、早期発見・早期治療を心がけましょう。

vet監修獣医師先生

細菌感染が原因の皮膚病には膿皮症があります。膿皮症は免疫力が低下して起こりますが、アトピー性皮膚炎やクッシング症候群などから続発することも多くあります。

アレルギー反応による皮膚炎、対策は?

特定の物質(アレルゲン)に対して免疫が過剰に反応し、皮膚に炎症やかゆみを引き起こすのがアレルギー性皮膚炎です。アレルゲンには、食べ物、花粉、ハウスダスト、ノミの唾液など様々なものがあります。

体を痒がる、皮膚が赤くなる、舐め続けて毛が変色するなどの症状が見られます。原因によって「食物アレルギー」や「ノミアレルギー性皮膚炎」などに分類されます。

アレルギー対策の基本は、原因となるアレルゲンを特定し、生活環境から取り除くことです。

  • アレルゲンの特定:動物病院でアレルギー検査を受け、何が原因かを突き止めることが対策の第一歩です。
  • 環境からのアレルゲン除去:ハウスダストが原因ならこまめな掃除、花粉が原因なら散歩後のケアなど、アレルゲンに接触する機会を減らします。
  • 食事管理:食物アレルギーの場合は、原因となる食材を含まないフード(アレルギー対応食)に切り替える食事療法を行います。必ず獣医師と相談しながら進めましょう。

vet監修獣医師先生

最近のペットフードではアミノ酸レベルまで低分子化しているペットフードもあり、アレルギーに対するものが増えています。それらをうまく活用してペットに与えてもいいかもしれませんね。

アトピー性皮膚炎、対策は?

アトピー性皮膚炎は、遺伝的な素因が関与するアレルギー性皮膚炎の一種です。ハウスダストや花粉などの環境中のアレルゲンが原因となり、強いかゆみを伴う皮膚炎を慢性的に繰り返します。

特に柴犬やシーズー、フレンチ・ブルドッグなどの犬種で若齢から発症しやすい傾向があります。皮膚が薄い耳、顔、足先、脇の下、内股などに症状が出やすいのが特徴です。

アトピー性皮膚炎の対策は、複数の治療法を組み合わせ、症状をコントロールしていくことが目標となります。

  • スキンケア:定期的なシャンプーで皮膚表面のアレルゲンを洗い流し、保湿剤で皮膚のバリア機能を維持することが非常に重要です。
  • 環境整備:こまめな掃除や空気清浄機の使用で、室内のアレルゲン(ハウスダストなど)を減らします。
  • 食事療法:皮膚の健康をサポートする成分(オメガ脂肪酸など)を含むフードや、アレルギーに配慮した療法食が有効な場合があります。
  • 内科的治療:かゆみや炎症を抑えるために、ステロイド、免疫抑制剤、分子標的薬、抗ヒスタミン剤などを獣医師の管理のもとで使用します。

完治が難しい病気ですが、適切なケアで症状をコントロールし、犬のQOL(生活の質)を維持することは可能です。根気強く病気と付き合っていくことが大切になります。

皮膚病になってしまったら

愛犬の皮膚に赤み、湿疹、かゆみ、脱毛などの異常を見つけたら、自己判断せずにまずは動物病院で獣医師に診てもらいましょう。正確な診断を受けることが、適切な治療への近道です。

動物病院では、原因に応じて「薬による治療(内服・外用)」「食事療法」「薬用シャンプーによるスキンケア」などを組み合わせて治療計画を立てます。獣医師の指示をしっかり守り、愛犬の治療にあたりましょう。

症状の発見が早いほど、治療も短期間で済み、愛犬の負担も軽くなります。日頃からブラッシングやスキンシップの時間を利用して、愛犬の皮膚や被毛の状態をこまめにチェックする習慣をつけましょう。

犬の皮膚病との向き合い方

犬の皮膚病は、原因の特定が難しかったり、治療が長期間にわたったりと、飼い主さんの根気が必要になることも少なくありません。

治療中は飼い主さんも大変ですが、愛犬はそれ以上に辛い思いをしています。「この子のために絶対に治す」という強い気持ちで、愛犬と二人三脚で病気と向き合っていくことが何よりも大切です。困ったことがあれば、一人で抱え込まずに、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

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