【獣医師監修】犬の熱中症と夏バテの違いとは?症状の見分け方と正しい対策法

犬は人間よりも体温調節が苦手で、特に高温多湿な日本の夏は熱中症のリスクが非常に高まります。愛犬を命の危険から守るためには、飼い主が熱中症について正しい知識を持つことが不可欠です。

この記事では、犬の熱中症について、夏バテとの明確な違い、見逃してはいけない初期症状、緊急時の応急処置、そして日頃からできる効果的な予防策を詳しく解説します。本格的な夏が始まる前に、大切な家族である愛犬のためにしっかりと対策を確認しておきましょう。

犬の熱中症、夏バテとの違いは?

犬は足の裏など一部を除いて皮膚に汗腺がなく、汗をかいて体温を下げることができません。そのため、口を開けて舌を出し、ハッハッと浅く速い呼吸(パンティング)をすることで、唾液を蒸発させる気化熱を利用して体温を下げようとします。

しかし、湿度が高い日本の夏では唾液が蒸発しにくく、パンティングだけでは効率良く体温を下げられないことがあります。これが食欲不振や元気消失といった「夏バテ」の主な原因です。また、エアコンが効いた涼しい室内と暑い屋外との激しい温度差も、自律神経の乱れを招き、体に負担をかける一因とされています。

一方で「犬の熱中症」は夏バテとは全く異なり、急激に症状が進行し、命に関わる緊急性の高い状態です。暑い日の散歩や車内での留守番、エアコンのない室内など、高温多湿な環境にいると、わずか10~15分という短時間でも発症してしまう危険性があります。

犬の熱中症、症状は?

犬の熱中症は、時間経過とともに症状が深刻化します。初期のサインを見逃さず、早期に対処することが非常に重要です。

▼初期症状のサイン

  • 激しいパンティング(あえぐような、よだれを伴う呼吸)
  • 大量のよだれ
  • 口の中の粘膜や舌が普段より赤くなる
  • 落ち着きがなくなる
  • 脈が速くなる

▼症状が進行した場合(危険な状態)

  • ぐったりして動かない
  • 嘔吐や下痢(血便を伴うこともある)
  • 体の一部または全身のけいれん
  • 呼びかけに反応しないなど、意識が混濁する
  • 失神

初期症状が出てから対処が遅れると、多臓器不全や脳へのダメージなど、重篤な後遺症が残る可能性があります。少しでも「おかしい」と感じたら、すぐにかかりつけの動物病院へ連れていきましょう。

犬の熱中症、対策は?

万が一、愛犬に熱中症が疑われる症状が見られた場合、動物病院へ向かう間にも応急処置を行うことが重要です。落ち着いて以下の対処をしてください。

  1. 涼しい場所へ移動させる
    まずは日陰やエアコンの効いた室内など、直射日光の当たらない涼しい場所へすぐに犬を移動させます。
  2. 体を冷やす
    水道の水をかける、濡らしたタオルで体を包むなどして、体温を下げる処置をします。特に、首の周り、脇の下、足の付け根といった太い血管が通っている場所を冷やすと効果的です。保冷剤を使う場合はタオルで包み、直接皮膚に当てないように注意してください。
  3. 水分補給をさせる
    犬に意識があり、水を飲みたがるようであれば飲ませてあげましょう。ただし、意識がない場合や、ぐったりしている場合は、誤嚥(ごえん)の危険があるため絶対に無理やり飲ませてはいけません。
  4. 呼吸をしやすくする
    口の周りのよだれを拭き取り、気道を確保してあげましょう。

これらの応急処置を行いながら、一刻も早く動物病院へ連絡し、指示を仰ぎながら向かってください。

犬の熱中症、対策法は?

熱中症は、日頃の予防が何よりも大切です。愛犬が快適に過ごせるよう、生活環境を見直しましょう。

エアコンやクールマットを使用する

犬が口を開けてハァハァと激しく呼吸しているのは「暑い」というサインです。犬が留守番する際もエアコンをつけたままにし、室温を25~26℃前後に保ちましょう。クールマットや凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものを置いてあげるのも、犬が自分で体を冷やす助けになります。

散歩させるとき

夏の昼間、アスファルトは60℃以上に達することもあり、肉球をやけどする非常に危険な状態です。散歩は、地面の熱が冷めた早朝や日が完全に沈んだ夜間に行いましょう。散歩中もこまめな水分補給ができるよう、飲み水を持参するのがおすすめです。

プールや川遊び

水遊びは良い暑さ対策になりますが、注意も必要です。水から出た後は、濡れた体に直射日光が当たることで急激に体温が上昇することがあります。遊んだ後は必ず日陰で体を乾かし、ゆっくり休ませる時間を作りましょう。

黒い被毛の犬種や長毛の犬種

黒い被毛は太陽の熱を吸収しやすく、体温が上がりやすいため特に注意が必要です。また、シベリアン・ハスキーのようなダブルコートの犬種や長毛種は体に熱がこもりやすいため、サマーカットで風通しを良くしてあげるのも有効な対策です。

愛犬の様子を常に気にかけてあげて

夏の暑さは、犬にとって私たちが想像する以上に過酷な環境です。熱中症は、飼い主の日頃の心がけで防ぐことができる病気です。愛犬が安全で快適に夏を過ごせるよう、涼しい環境を整え、日々の様子を注意深く観察してあげてください。

熱中症は発症からわずか数時間で命を落とすこともある、非常に恐ろしい状態です。「いつもと様子が違うな?」と感じたら、決して自己判断せず、ためらわずに動物病院に相談しましょう。

vet監修獣医師先生

短頭種(フレンチ・ブルドッグなど)に加え、短足胴長犬種にも注意が必要です。ダックスフンドやバセット・ハウンド、ウェルシュコーギーなどは足が短く、地面からお腹までの距離が近いため、アスファルトの放射熱の影響を強く受けてしまいます。真夏の散歩は高温になったアスファルトでやけどをする危険性もあるため、できるだけ朝や夕方など涼しい時間帯を選んであげましょう。

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