【獣医師監修】子犬がかかりやすい病気3選|ケンネルコフ等の症状・原因・治療法

「子犬」と呼ばれるのは、一般的に生後1年未満の犬を指します。人間の年齢に換算すると約17歳にあたり、心身ともに大きく成長する大切な時期です。

しかし、子犬は成犬に比べて免疫力が低く、ささいなことで体調を崩しがちです。この時期の適切なケアが、その後の健康を大きく左右します。

この記事では、特に子犬がかかりやすい代表的な3つの病気「ケンネルコフ」「低血糖症」「寄生虫症」に焦点を当て、それぞれの症状、原因、そして治療法を獣医師監修のもと詳しく解説します。

子犬の病気『ケンネルコフ』症状と原因、治療法は?

原因と感染経路

ケンネルコフは、複数のウイルスや細菌が原因で起こる伝染性の呼吸器疾患の総称で、「犬の風邪」とも呼ばれます。主な原因は、パラインフルエンザウイルスやアデノウイルス、気管支敗血症菌などの病原体への感染です。これらの病原体に単独または複数で感染することで発症します。

感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染が主です。感染力が非常に強いため、ペットショップやブリーダー、ドッグランなど、他の犬と接触する機会が多い環境で感染しやすくなります。また、免疫力が未熟な子犬は、新しい家に来た際の環境変化によるストレスが引き金となり、ケンネルコフを発症することも少なくありません。

症状

ケンネルコフの最も特徴的な症状は、「ケン、ケン」という乾いた咳や、喉に何かが詰まったかのように吐き出すような仕草(咳)です。興奮した時や運動後に咳が出やすくなります。症状が進行すると、以下のような症状が見られることもあります。

  • 鼻水や目やに
  • 発熱
  • 元気・食欲の低下

重症化すると肺炎を引き起こし、命に関わる危険性もあるため、咳の症状が見られたら早期に動物病院を受診することが重要です。

治療法

ケンネルコフの治療は、症状の重さや原因となっている病原体によって異なります。軽症の場合は、子犬自身の免疫力で自然に回復することもありますが、細菌による二次感染を防ぐために抗生物質が処方されるのが一般的です。

その他、咳を和らげるための咳止め薬や、気管支の炎症を抑える消炎剤、免疫力をサポートする薬などが用いられます。また、霧状にした薬剤を直接吸入させるネブライザー治療は、気道に直接薬を届けることができるため効果的です。

vet監修獣医師先生

自然に治ることもありますが、その時の免疫によって悪化する場合もありますので、咳をしている場合は獣医さんに診察してもらうことをおすすめします。

子犬の病気『低血糖症』症状と原因、治療法は?

原因と感染経路

低血糖症は、その名の通り血液中の糖分(ブドウ糖)濃度が著しく低下してしまう病気です。特に生後3ヶ月齢までの小型犬の子犬に多く見られます。子犬はまだ体内にエネルギーを蓄える肝臓の機能が未熟なため、低血糖症に陥りやすいのです。

主な原因は食事の間隔が空きすぎることによるエネルギー不足です。その他、以下のような要因も低血糖症を引き起こす原因となります。

  • 消化器系の病気(下痢や嘔吐)による栄養吸収不良
  • 体が冷えることによるエネルギーの過剰消費
  • 先天的な病気

症状

脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源としているため、低血糖症になると神経症状が現れるのが特徴です。初期症状としては元気消失やぐったりする様子が見られますが、進行すると以下のような重篤な症状を引き起こします。

  • 体の震え、けいれん発作
  • 歩行時のふらつき
  • 呼びかけへの反応が鈍くなる
  • 意識を失う(昏睡)

子犬の低血糖症は進行が早く、命に危険が及ぶ緊急性の高い状態です。異変に気づいたら、すぐに応急処置を行い、動物病院へ連絡してください。

治療法

低血糖症の治療は、迅速に血糖値を上げることが最優先です。意識がある場合は、応急処置としてブドウ糖液や砂糖水、犬用の栄養補助食品などを歯茎に塗ることで吸収させます。意識がない、またはけいれんしている場合は、誤嚥の危険があるため無理に口から与えず、すぐに動物病院へ向かいましょう。

動物病院では、ブドウ糖の静脈注射などを行い、迅速かつ安全に血糖値を正常に戻します。また、低血糖症の背景に何らかの病気が隠れている場合は、その原因となっている病気の特定と治療も並行して行います。

vet監修獣医師先生

ご飯を食べない原因としてペットフードが合っていないということもあります。もし何を用意しても食べてくれない場合には早めに獣医さんに相談することをおすすめします。

子犬の病気『寄生虫症』症状と原因、治療法は?

原因と感染経路

子犬のお腹の中に寄生する虫(内部寄生虫)には様々な種類がいますが、代表的なものに犬回虫、犬鉤虫(こうちゅう)、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)などがあります。感染経路は寄生虫の種類によって異なりますが、主に以下のようなルートが考えられます。

  • 母子感染:寄生虫に感染している母犬から、胎盤や母乳を通じて感染する。
  • 経口感染:寄生虫の卵が含まれた他の犬の糞便や、汚染された土などを口にすることで感染する。
  • 経皮感染:皮膚から幼虫が侵入して感染する(犬鉤虫など)。
  • ノミからの感染:寄生虫の幼虫を持ったノミを、犬がグルーミングなどで口にすることで感染する(瓜実条虫)。

症状

寄生虫症の主な症状は、消化器系に現れます。多数の寄生虫に感染している場合、子犬の成長に必要な栄養が奪われてしまうため、注意が必要です。

  • 下痢(血が混じることもある)
  • 嘔吐
  • 食欲不振または異常な食欲
  • お腹がぽっこりと膨れる
  • 体重が増えない、痩せてくる(成長不良)
  • 毛ヅヤが悪くなる

症状が進行すると、嘔吐物や便の中にそうめんのような虫(回虫など)が排出されることもあります。

治療法

寄生虫症の治療は、まず糞便検査(検便)を行い、どの種類の寄生虫に感染しているのかを特定することから始まります。寄生虫の種類によって効果のある薬が異なるため、この検査は非常に重要です。

原因となる寄生虫が特定できたら、適切な駆虫薬を投与して治療します。寄生虫のライフサイクルに合わせて、通常は複数回にわたって投薬が必要になります。症状が改善しても、体内に卵などが残っている可能性があるため、治療後は再度検便を行い、完全に駆虫できたことを確認することが大切です。

vet監修獣医師先生

他の動物にも感染する恐れがあるため、同居動物がいる場合には排泄物や嘔吐物に気を付けましょう。

犬の病気は子犬の時ほどしっかりとしたケアが必要

ご紹介した病気のほかにも、子犬の時期は注意すべき病気がたくさんあります。子犬は環境の変化に敏感で、体力や免疫力も十分ではありません。そのため、成犬なら問題にならないようなことでも重症化しやすい傾向にあります。

子犬を病気から守るためには、以下の点が重要です。

  • 定期的なワクチン接種と駆虫を必ず行う
  • 栄養バランスの取れた食事と十分な休息を与える
  • 日頃から様子をよく観察し、少しでも異変があればすぐに動物病院へ相談する

大切な愛犬が健やかに成長できるよう、子犬の時期は特に丁寧なケアを心がけましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です