大切な家族である猫も、人間と同じように年を重ねると「認知症(認知機能不全症候群)」を発症することがあります。認知症のサインは日常の些細な変化に現れるため、症状を見過ごしてしまう飼い主さんも少なくありません。
シニア期に入った猫と暮らす飼い主さんは、猫の認知症について正しく理解し、もし愛猫に疑わしい症状が見られた場合でも、落ち着いて対応することが大切です。
この記事では、猫の認知症の具体的な原因や症状、ご家庭でできる対策や動物病院での治療法について、体験談を交えながら詳しく解説します。
猫の認知症、原因と症状は?
猫の認知症は、主に加齢に伴う脳の萎縮や神経の変化が原因で起こります。強いストレスが引き金になることもあり、一般的に8歳以上のシニア猫から症状が現れやすくなります。
猫の認知症の症状は、日々の行動の変化として現れます。以下のようなサインが見られたら、認知症のサインかもしれません。
- 飼い主の声かけや呼びかけへの反応が鈍くなる
- 目的もなくウロウロと歩き回る、同じ場所をぐるぐる回る(旋回運動)
- 夜中に突然、大きな声で鳴き続ける(夜鳴き)
- トイレの場所を間違える、粗相が増える
- 食欲の異常な増減や、食べ物の好みが変わる
- グルーミング(毛づくろい)をしなくなる
- 狭い場所に入りたがり、後ずさりができず出られなくなる
これらの症状が1つでも当てはまる場合は、認知症の可能性があります。ただし、甲状腺機能亢進症や腎臓病など、他の病気でも似た症状が出ることがあるため、自己判断は禁物です。気になる変化があれば、まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。
猫の認知症、対策と治療法は?
猫の認知症の進行を緩やかにするためには、脳への適度な刺激が重要です。ご家庭での対策としては「運動」「食事」「コミュニケーション」の3つのアプローチが効果的です。
【家庭でできる認知症対策】
- 運動:おもちゃで一緒に遊ぶ時間を設け、上下運動ができるキャットタワーを設置するなど、安全な環境で体を動かす機会を増やしましょう。
- 食事:脳の健康維持をサポートする「オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)」や「抗酸化物質(ビタミンE、Cなど)」を含むキャットフードやサプリメントを与えるのがおすすめです。
- コミュニケーション:積極的に名前を呼んで話しかけたり、優しく撫でたりするスキンシップは、猫に安心感を与え、脳の良い刺激になります。
認知症が進行し、治療が必要になった場合は、動物病院で「薬物療法」や「食事療法」が行われます。薬物療法では、脳内のドーパミンの働きを助ける薬や、不安を和らげるサプリメントなどが処方されることがあります。食事療法では、獣医師の指導のもと、認知機能の維持を目的とした特別な療法食を与えます。治療法は症状や猫の状態によって異なるため、獣医師とよく相談して進めていきましょう。
猫の認知症の体験談。鳴くってホント?
我が家の猫の認知症で最初に気付いた症状は、急に始まった「夜鳴き」でした。まるで何かを訴えるような大きな声で鳴くため、家族全員が心配になりました。同時期に、これまで食べなかった油分の多い食べ物を執拗に求めるようにもなりました。
その後、トイレの失敗や徘徊といった症状も増え、本格的な介護生活が始まりました。私たちが一番心掛けたのは、認知症になった愛猫のペースを尊重し、穏やかな余生を過ごさせてあげることです。
粗相をしても叱らず、大好きになったオリーブオイルを獣医師に相談の上で少量与えるなど、愛猫の「好き」を大切にしました。毎日のオムツ交換は大変でしたが、体調が良い日には呼びかけにゴロゴロと応えてくれることもあり、その度に愛情が深まりました。大変なことも多かったですが、最期までかけがえのない時間を過ごすことができたと感じています。
猫の認知症、心のケアをしてあげてください
猫が認知症になった場合、治療と並行して、飼い主さんによる生活面での「心のケア」が非常に重要になります。夜鳴きや粗相といった問題行動が増えると、つい叱りたくなってしまうかもしれませんが、猫自身も不安で混乱しています。厳しく叱ることはせず、大きな心で受け止めてあげてください。
大切なのは、猫が少しでも快適に、そして安心して過ごせる環境を整えることです。家具の配置をむやみに変えない、滑りやすい床にはマットを敷く、トイレの数を増やして分かりやすい場所に置くなど、症状に合わせた工夫を取り入れましょう。猫の心のケアは、飼い主さんの愛情が一番の薬です。一人で抱え込まず、家族や獣医師と協力しながら、愛猫との時間を大切に過ごしてくださいね。