大切な愛猫が涙を流していたら、「どこか痛いのかな?」「病気だろうか?」と心配になりますよね。
猫が涙を流す原因は、ホコリなどの異物が入った一時的なものから、治療が必要な目の病気まで様々です。特に猫の目の病気には、失明に至る可能性のある「白内障」や「緑内障」といった深刻なものも隠れているため、注意深く観察することが重要です。涙の色や量、他に症状はないかなどをチェックしましょう。
この記事では、猫が涙を流す主な原因と、飼い主さんが知っておくべき目の病気、そして「緑内障」や「白内障」の具体的な症状や治療法について、分かりやすく解説します。
猫は目に入った毛やゴミ、煙が原因で涙を流すこともある
人間と同じように、猫も目に自分の毛やホコリ、ハウスダストなどの異物が入ったり、タバコの煙などが刺激になったりすると、生理的な反応として涙を流します。これは、異物を洗い流そうとする正常な防御反応です。
特に春や秋の換毛期や、ペルシャやメインクーンのような長毛種の猫は、自分の毛が目に入りやすいため注意が必要です。このような場合、涙で異物が自然に流れ出れば問題ありませんが、なかなか取れない場合は動物病院で処方された点眼薬で洗い流してあげると良いでしょう。
また、目の周りの毛が眼球を刺激しないよう、定期的にカットしてあげることも有効なケアです。涙が一過性のもので、すぐに収まるようであれば、過度な心配は必要ありません。
猫の涙が鼻水やくしゃみも伴ったら、感染病による「結膜炎」
猫の涙の原因として非常に多いのが、ウイルスや細菌の感染によって起こる「結膜炎」です。これは、いわゆる「猫風邪」の代表的な症状でもあります。
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどの病原体に感染することで、白目やまぶたの裏側を覆う「結膜」に炎症が起こります。その結果、涙が止まらなくなるのです。
涙だけでなく、くしゃみ、鼻水、ドロっとした黄色や緑色の目やに、目の充血といった症状を伴うのが特徴です。炎症がひどくなると、まぶたが腫れて目が開けられなくなったり、放置することで眼球とまぶたがくっついてしまう「癒着」を起こしたりすることもあります。これらの症状が見られたら、すぐに動物病院で適切な治療を受けさせてください。
猫が目を閉じて涙を流したら「眼瞼内反症」
目をしょぼしょぼさせて閉じがちで、涙を流し、目頭の下の毛が常に濡れている…そんな症状が見られたら「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」かもしれません。
眼瞼内反症とは、その名の通り、まぶたが内側に反ってしまう病気です。まぶたが内反することで、本来は外側を向いているはずのまつ毛が眼球の表面(角膜)を常に刺激するため、強い痛みや違和感から涙が止まらなくなります。角膜が傷つき、角膜炎や角膜潰瘍に発展するケースも少なくありません。
生まれつきの先天的な要因のほか、ケンカの傷や加齢による変化など、後天的な原因で発症することもあります。治療には、内反したまぶたを正常な位置に戻す外科手術が必要となることが多いため、症状が続く場合は獣医師に相談しましょう。
猫が常時涙を出したら「流涙症」
特に目に異常が見られないのに、猫が常に涙を流していて目の周りが濡れている場合、「流涙症(りゅうるいしょう)」が考えられます。涙の成分によって目の下の毛が茶色く変色する「涙やけ」を伴うことも多いです。
通常、涙は目頭にある「涙点」という穴から「鼻涙管(びるいかん)」という管を通って鼻の奥へと排出されます。しかし、この鼻涙管が先天的に狭かったり、後天的な感染症や炎症によって詰まったりすると、涙がうまく排出されず、目から溢れ出てしまうのです。
流涙症は、原因となっている病気の治療や、鼻涙管の詰まりを解消する処置が必要になる場合があります。猫の涙が常に止まらないと感じたら、まずは動物病院を受診し、原因を特定してもらうことが大切です。
涙に加えて柱や物に頻繁にぶつかるときは、猫の目の病気「白内障」
白内障は、目の中のレンズの役割を果たす「水晶体」が白く濁り、視力が低下していく病気です。加齢に伴う発症が多いですが、他の目の病気(ぶどう膜炎など)や糖尿病、外傷などが原因で起こることもあります。
「最近よく物にぶつかる」「暗い場所で動きたがらない」「目の奥が白っぽく見える」といった症状は、白内障によって視力が低下しているサインかもしれません。また、白内障が進行してぶどう膜炎などの炎症を併発すると、痛みから涙が増えることもあります。治療には、濁った水晶体を取り除く外科手術が必要になる場合が多いです。
手術は全身麻酔で行われ、入院も必要になるため、治療費は20万円以上かかることも珍しくありません。愛猫の目の変化に気づいたら、手遅れになる前に、経験豊富な獣医師に相談しましょう。
猫の目の病気は「緑内障」にも注意
猫の目の病気の中でも、特に緊急性が高く注意すべきなのが「緑内障」です。緑内障は、眼球の中の圧力(眼圧)が異常に高くなることで、視神経が圧迫されてダメージを受け、最終的には失明に至る非常に怖い病気です。
緑内障は激しい痛みを伴うため、猫は元気や食欲をなくしたり、頭を触られるのを嫌がったりすることがあります。主な症状としては、瞳孔が開きっぱなしになる「散瞳」や、目の充血、角膜が白く濁る(角膜浮腫)などが見られます。痛みから涙を流すことも少なくありません。
治療は、点眼薬や内服薬で眼圧を下げる内科療法と、レーザー治療などの外科療法を組み合わせて行いますが、一度ダメージを受けた視神経を元に戻すことは困難です。飼い主が気づかないうちに進行していることも多いため、定期的な健康診断で眼圧を測定してもらうことが、緑内障の早期発見に繋がります。
「涙が止まらない」などの猫の症状を見逃さないで!
いかがでしたか?猫が涙を流す背景には、様々な原因が隠れていることをお分かりいただけたかと思います。
単にゴミが入っただけなら安心ですが、それを放置することで猫自身が目をこすり、角膜を傷つけて二次的な病気に発展することもあります。愛猫の涙に気づいたら、以下の点もあわせてチェックしてみてください。
- 涙以外の症状(くしゃみ、鼻水、目やに)はないか?
- 目の色はいつもと同じか?(充血、白や緑の濁りなど)
- 瞳孔の大きさに左右差はないか?開きっぱなしではないか?
- 目をしょぼしょぼさせたり、こすったりしていないか?
- 物にぶつかるなど、行動に変化はないか?
これらのサインが見られた場合は、病気の可能性が高いと考え、自己判断せずに動物病院を受診しましょう。愛猫がこれからもずっと飼い主さんの顔をはっきりと見つめられるように、日頃から目の様子を観察し、病気の早期発見・早期治療に努めてあげたいですね。