猫に元気がないのは病気?ストレス?食欲不振など危険なサインと対処法

大切なペットには、いつでも元気でいて欲しいものですよね。しかし、ペットも生き物ですから、時には体調を崩すことがあります。

その中でも、愛猫が突然ご飯を食べなくなると「どうしたんだろう?」と心配になる経験はありませんか?

「風邪を引いたのかな…?」
「何か重い病気にかかったの…?」
「お腹の調子が悪いのかな…?」

この記事では、猫がご飯を食べない、元気がないといった飼い主さんの悩みに対し、以下の点を詳しく解説します。

  • 猫がご飯を食べない、元気がない原因は?
  • 食欲がない猫に試せる対処法は?
  • すぐに病院へ行くべき危険な症状とは?

普段から愛猫の様子をよく観察し、気になる変化にすぐ対応できるよう、ぜひ本記事を参考にしてください。

猫に元気がない理由は?

猫は一日の大半を寝て過ごす動物ですが、起きているときは元気に動き回り、食欲も旺盛なのが健康の証です。しかし、「名前を呼んでも反応が鈍い」「ご飯の時間なのに食べに来ない」など、明らかに普段と違う様子で元気がなくなることがあります。猫に元気がない場合に考えられる主な理由は「病気」と「病気以外の要因」に分けられます。

病気による体調不良

元気がないと同時に「食欲不振」「下痢や嘔吐」といった症状が見られる場合、何らかの病気が原因で体調を崩している可能性があります。特に、普段は食欲旺盛な猫が急に食べなくなった場合は注意が必要です。判断に迷うときは、かかりつけの動物病院に電話で症状を伝え、受診すべきか相談しましょう。

病気以外の理由

ストレス

引越し、新しいペットや家族が増えた、模様替えなど、ささいな環境の変化が猫にとって大きなストレスになることがあります。人間には気にならないことでも、繊細な猫にとっては心身の不調につながるのです。愛猫が何にストレスを感じやすいか、日頃から理解しておくことが大切です。特に動物病院から帰宅した後、疲れて元気がなくなる猫は多いです。ワクチン接種や手術後の痛み、慣れない環境での緊張が原因と考えられます。

怪我

高い場所から動かない、じっとしているといった場合、体のどこかに痛みを感じているのかもしれません。ジャンプの着地に失敗したり、伸びすぎた爪が肉球に食い込んでいたりする可能性があります。特に肉球は敏感なため、歩くのを嫌がるほどの痛みを感じていることもあります。体を優しく触って、痛がる場所や腫れている部分がないか確認してみてください。

猫が病気のときに見られる症状は?

猫が病気になると、元気や食欲がなくなる以外にも様々なサインを見せます。以下のような症状は、病気の可能性を示すため特に注意が必要です。

  • 食欲がなくなる(食欲不振)
  • 何度も吐く(嘔吐)
  • 咳やくしゃみをする
  • 元気がなくなり、ぐったりしている
  • 体を触られるのを嫌がる
  • トイレの回数が多い、または尿が出ない(色の変化も含む)
  • 下痢や血便をする

これらの変化は、毎日お世話をしている飼い主さんだからこそ気づける重要なサインです。普段から食事や飲水量、排泄物の状態をチェックし、病気の早期発見に努めましょう。

食欲がない

食欲不振は多くの病気で見られる初期症状であり、これだけで病名を特定することは困難ですが、特に消化器系の疾患が疑われます。ただし、元気がない状態でも食欲が普段通りある場合は、深刻な病気の可能性は比較的低いと考えられます。

嘔吐

異物の誤飲も考えられますが、食道炎や胃炎、胃潰瘍、膵炎(特に高齢猫)などの病気の可能性もあります。一日に何度も吐く、吐いた後にぐったりしている場合は、すぐに動物病院で診てもらいましょう。

猫は頻繁に咳をする動物ではありません。「ケホケホ」という乾いた咳や、「ゼーゼー」という苦しそうな呼吸、吐きそうな素振りは咳のサインかもしれません。猫風邪や気管支炎、喘息、肺炎などが考えられるため、症状が見られたら重症化する前に病院へ連れて行くことが重要です。

便に血が混じる

便の硬さに関わらず、血が混じっている(血便)のは異常のサインです。スマートフォンで便の写真を撮り、すぐに動物病院を受診しましょう。

下痢

ストレスやフードの変更、食べ過ぎなど、下痢の原因は病気ではないこともあります。しかし、猫コロナウイルスや寄生虫、内臓疾患が原因の場合もあります。下痢が何日も続く、元気や食欲もないといった場合は、獣医師の診察を受けてください。

尿の変化

尿の色がピンクや赤っぽい場合、膀胱炎や尿道炎、尿路結石症の可能性が考えられます。何度もトイレに行くのに尿が出ていない場合は、尿道閉塞を起こしている危険性があり、命に関わります。緊急性が高いため、すぐに夜間救急病院などへ連れて行ってください。

注意:猫は不調を隠す習性がある

野生で単独行動をしていた猫は、外敵に弱みを見せないよう、体調が悪くても隠す習性があります。この習性は飼い猫にも残っており、飼い主が異変に気づいたときには病気が進行しているケースも少なくありません。いつもと違う場所でうずくまっている、お腹を守るように丸まっているなど、寝相や行動の変化も不調のサインかもしれません。特に食欲の低下は重要な指標です。「うちの子は偏食だから」と軽く考えず、食べない時間が長引く場合は危険と認識しましょう。

食欲がなく、ご飯を食べない原因とその対処法は?

そもそも猫の偏食は本能?

実は、好き嫌いをせず何でも食べる猫は少数派です。野生の猫はネズミや鳥など様々な獲物を食べることで、栄養の偏りを本能的に防いでいる(ネオフィリック)と考えられています。一方で、新しい食べ物を警戒する(ネオフォビア)という本能も持っています。そのため、同じフードに飽きることもあれば、急にフードを変えると警戒して食べなくなるという、飼い主にとっては悩ましい事態が起こるのです。

偏食になる原因を作っているかも

本能以外に、飼育環境が偏食の原因になることもあります。特に子猫の時期に、おやつばかり与えたり、不規則な時間に食事を与えたりすると、食の好みが偏りやすくなります。子猫のうちから栄養バランスの取れたフードを決められた時間に与え、正しい食生活のリズムを作ることが大切です。

どの位食べないと危ない?その目安は?

愛猫が「一食抜いた」だけでは、すぐに問題とは言えません。しかし、ご飯を食べない状態が一定時間続いた場合は注意が必要です。特に年齢によって危険な時間は異なります。

年齢 絶食が危険とされる時間
生後1ヶ月〜2ヶ月 8時間以上
生後2ヶ月〜3ヶ月 12時間以上
生後3ヶ月〜4ヶ月 16時間以上
成猫(1歳〜) 24時間以上

この表の時間を超えて何も口にしない場合は、病気の可能性も考えられるため、動物病院への相談を検討してください。

考えられる主な原因と対処法は?

猫がご飯を食べない場合、病気でなくても栄養不足による体力や免疫力の低下が心配です。ここでは、よくある原因とそれぞれの対処法をご紹介します。

猫がご飯を食べない主な理由
  • 同じフードに飽きた
  • 新しいフードが気に入らない
  • 発情期(繁殖期)
  • 夏バテなど季節的な要因
  • 家の外で何かを食べてきた
  • 食器の形状や汚れが不満

同じメニューに飽きた

体調は良さそうなのにご飯を食べない場合、フード自体への不満が考えられます。フードを温めて香りを立たせたり、ウェットフードを少しトッピングしたりして変化をつけると、再び食べるようになることがあります。「食べなければもっと美味しいものが出てくる」と学習させないよう、工夫が必要です。

新しい食事が気に入らない

猫は味や匂い、食感に強いこだわりを持つグルメな動物です。新しいフードに切り替える際は、まずサンプルで試食させ、好むようであれば今までのフードに少しずつ混ぜて慣らしていく方法がおすすめです。一度に全て変えると、警戒して全く食べなくなることがあります。

繁殖期

去勢・避妊手術をしていない猫は、繁殖期(春・秋・冬)になると食欲よりも異性への関心が勝り、ご飯を食べなくなることがあります。これは本能的な行動なので、一時的なものであれば心配しすぎる必要はありません。

夏バテなど季節要因

人間と同じように、猫も夏バテで食欲が落ちることがあります。特に夏場は、水分補給も兼ねてドライフードだけでなく、ウェットフードを取り入れるのがおすすめです。いつでも新鮮な水が飲めるようにし、部屋を涼しく保つなど、快適な環境を整えてあげましょう。

外で何かを食べた

自由に外出する猫の場合、縄張りパトロールの途中で他の家からご飯をもらったり、小動物を捕食したりしてお腹がいっぱいになっている可能性があります。

食器が深すぎる、汚い

猫はヒゲが食器の縁に当たることを嫌います。そのため、お皿は浅くて広いものが理想的です。また、食器が汚れていたり、洗剤の匂いが残っていたりすると食事を嫌がることがあります。簡単に洗えて匂いが残りにくい、陶器やステンレス製の清潔な食器を用意してあげましょう。

食事を小分けにすると食べることも

一度にたくさん食べられない猫もいます。猫は本来、少量の獲物を一日に何度も狩って食べる動物です。その習性に合わせ、一日の給与量を守りつつ、食事の回数を成猫なら2〜4回に分けて与えると、食べてくれることがあります。

vet所属獣医師先生

野生の猫は、自分より小さい小動物を捕食しているので、1日何回か食べる必要があります。そのため何回かに分けて食べるのですが、猫は狩猟本能があるので、ドライフードを置きっぱなしにして、いつでもそこに食べ物があると狩猟本能が低下してしまい、ちょこちょこ食べて肥満になることがあります。狩猟本能をかきたてるには食事がなくなることも必要なのでドライフードを置きっぱなしにしないようにしてみましょう。

おやつの与えすぎに注意!

猫がご飯を食べない原因として、意外と多いのが「おやつの与えすぎ」です。総合栄養食であるキャットフードと違い、おやつは嗜好性を高めるために作られているため、栄養バランスが偏りがちです。

栄養バランスが崩れて肥満に

おやつでお腹がいっぱいになると、主食であるフードを食べなくなり、栄養バランスが崩れます。特に脂肪分や糖分が多いおやつは肥満の原因となり、猫の肥満は関節炎や糖尿病など、様々な病気のリスクを高めます。

病気の悪化や偏食につながる

「ご飯を食べないから」とおやつを与え続けると、猫は「待っていればおやつがもらえる」と学習し、ますます偏食がひどくなります。愛猫の健康を守るためにも、おやつはコミュニケーションの一環として、一日の摂取カロリーの10%以内を目安に与えましょう。

vet所属獣医師先生

猫ちゃんのおやつと言えばと言うぐらい大ヒットしたおやつがありますね。猫のおやつとしてはよく食べるのでほとんどの飼主さんが使っていらっしゃいます。おやつといえども食べ過ぎればご飯を食べなくなる原因にもなりますし、肥満の原因にもなるので、与えすぎには注意しましょう。

水も飲まない?適切な水分摂取量は?

猫が1日に必要な飲水量の目安は、体重1kgあたり約40mlです。ウェットフードを食べている猫は食事から水分を多く摂取できるため、あまり水を飲まないこともあります。もし水を飲まない場合は、「器が気に入らない」「水が新鮮でない」といった可能性も考えられます。複数の場所に水飲み場を設置し、常に清潔な水を用意してあげましょう。

猫がご飯を食べない、病気の可能性は?

子猫で半日、成猫で24時間以上、ご飯も水も口にしない状態が続く場合は、病気が強く疑われます。特に、発熱や下痢、嘔吐などを伴う場合は、重篤な病気の可能性もあるため、すぐに動物病院を受診してください。食欲不振の原因として、特に口の中のトラブルが考えられます。

食欲低下を引き起こす口内の病気
  • 口内炎
  • 口腔内の腫瘍
  • 歯周病

口内の病気の可能性

元気はあるのに食べたそうにしない、口をくちゃくちゃする、よだれが多いといった場合、口の中に痛みがあるのかもしれません。「口内炎くらい」と軽視するのは危険です。痛みが原因で食事がとれないと体力が低下し、他の病気を引き起こす可能性もあります。

口内炎

猫の口内炎は、ウイルス感染や免疫力の低下、歯周病などが原因で起こります。強い痛みを伴うため、食欲が著しく低下し、よだれが増えたり、毛づくろいをしなくなったりします。口の中が赤く腫れていないかチェックし、異常があれば病院で診てもらいましょう。

治療方法は?

口内炎の治療は、抗生剤や消炎剤、鎮痛剤などの投薬が中心です。痛みを和らげ、猫が再び自力で食事や水分を摂れるようにすることが重要です。栄養状態が悪化している場合は、点滴による水分・栄養補給が必要になることもあります。

口内の腫瘍

猫の口の中にできる腫瘍は、悪性(がん)の可能性が高いと言われています。進行も速いため、早期発見・早期治療が鍵となります。「食べにくそうにする」「口から血の混じったよだれが出る」「口臭が急にきつくなった」などのサインに気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

歯周病の悪化

3歳以上の猫の多くが歯周病を持っていると言われています。歯垢や歯石が原因で歯茎が炎症を起こし、悪化すると歯が抜けたり、顎の骨を溶かしたりすることもあります。口臭の悪化やよだれの増加は、歯周病のサインかもしれません。歯周病菌が血流に乗って全身に広がり、心臓や腎臓の病気を引き起こすこともあるため、日頃からの歯磨きケアが非常に重要です。

vet所属獣医師先生

猫は吸収病巣と言って歯が吸収されて骨に置きかわる病気があります。3歳以上の猫の50%に認められると言われ、多くの猫にみられます。歯の根元が吸収されるため気が付かないことも多いです。痛みを伴うため食事を食べにくくなったり、口を痛がったりするようになります。歯石はついていないのに口の痛みがあるときは注意が必要です。

そのほか猫に元気がないときに考えられる病気は?

口内のトラブル以外にも、骨折などの外傷、腎臓病や肝臓病といった内臓疾患、感染症、糖尿病など、猫の元気を奪う病気は数多く存在します。複数の要因が絡み合っていることも多いため、飼い主さんによる自己判断は困難です。いつもと違う様子が見られたら、まずは動物病院を受診することが最善の策です。

猫に元気がないときは一度様子を見てみる

猫が少しおとなしいと感じたとき、すぐに病院へ行くべきか迷うこともあるでしょう。他に症状がなく、一時的なものであれば、丸1日ほどは慎重に様子を見守るという選択肢もあります。ただし、成猫で24時間、子猫や高齢猫では12時間を超える絶食は危険なサインです。特に、ぐったりして動かない、呼吸が荒いなどの症状があれば、時間を待たずに受診してください。

気になる初期症状は獣医師に相談してみる

「なんとなく元気がない」「いつもと食べ方が違う」といった、飼い主さんだからこそ気がつく些細な変化が、病気の重要な初期症状である場合があります。不安なときは、その様子をスマートフォンで動画に撮っておくと、診察の際に獣医師に状況が伝わりやすくなります。些細なことでも遠慮せず、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

猫の食欲不振は経過観察が大切!

愛猫の「様子がおかしいな」と感じたら、いつから、どのような症状があるのかをカレンダーや手帳にメモしておきましょう。「いつから食べていないか」「嘔吐や下痢はあるか」「トイレの回数はどうか」など、具体的な記録は、動物病院を受診する際に非常に役立ちます。日々の注意深い観察と記録が、愛猫の健康を守る第一歩となるのです。

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