愛猫との暮らしで多くの飼い主さんが検討するのが去勢・避妊手術です。手術は動物病院で安全に行われますが、費用や愛猫への負担など、不安はつきもの。しかし、事前に手術の方法や適切な時期、費用などを正しく理解しておけば、安心してその日を迎えられます。
この記事では、猫の去勢・避妊手術に関する飼い主さんの疑問や不安を解消するため、手術の方法、適切な時期、費用の相場、利用できる助成金制度まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。
猫の去勢手術、方法は?
猫の去勢・避妊手術は、性別によって方法が異なります。オスの猫の去勢手術では、精巣(睾丸)を摘出します。一方、メスの猫の避妊手術では、卵巣のみ、または卵巣と子宮の両方を摘出するのが一般的です。卵巣のみの摘出でも妊娠は防げますが、将来の子宮の病気(子宮蓄膿症など)を予防する目的で、子宮も同時に摘出するケースが多くなっています。
手術自体は、準備時間を除けばオスで5〜10分、メスで10〜20分程度と短時間で終わります。術後は麻酔からの覚醒や状態観察のため、日帰り、もしくは1〜2泊ほど入院します。どちらになるかは動物病院の方針や猫の状態によって異なります。退院後、約1週間から10日ほどで抜糸を行い、去勢・避妊手術の全行程が完了となります。
vet所属獣医師先生
猫の去勢手術に適した時期は?
猫の去勢・避妊手術に適した時期は、一般的に最初の発情期を迎える前の、生後6ヶ月前後とされています。若すぎるとホルモンバランスの乱れから成長に影響が出る可能性があり、逆に初回発情後だと問題行動(スプレー行為など)が癖として残ってしまうことがあるため、この時期が推奨されています。
特にメス猫の場合、最初の発情期を迎える前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率を大幅に下げられるという大きなメリットがあります。高齢の猫でも手術は可能ですが、体に負担がかかるため、手術に耐えられるか事前に詳細な健康チェック(血液検査やレントゲン検査など)を受けることが重要です。
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猫の去勢手術、費用は?
猫の去勢・避妊手術は病気の治療ではないため、ペット保険が適用されない自由診療となり、費用は全額自己負担です。費用は動物病院の設備や方針、地域、猫の体重、術前検査の内容などによって変動します。
費用相場として、オスの去勢手術で約10,000円〜20,000円、メスの避妊手術で約15,000円〜30,000円が一般的です。メスの方が開腹手術となるため、費用が高くなる傾向にあります。また、持病がある場合や高齢の猫は、より詳細な検査が必要になるため、追加で5,000円〜10,000円程度の費用がかかることもあります。手術代が安い動物病院は、入院をさせず日帰りとなることが多いなど、サービス内容に違いがあるため、事前に確認しましょう。
猫の去勢手術のための助成金
お住まいの自治体によっては、猫の去勢・避妊手術費用の一部を補助する助成金(補助金)制度が設けられています。これは、望まない繁殖を防ぎ、殺処分される不幸な猫を減らすことを目的としています。飼い猫だけでなく、保護猫や地域猫(TNR活動)を対象としている場合もあります。
例えば東京都港区の場合、生後6ヶ月以上の猫を飼っている区民などを対象に補助を行っています。事前の書類審査を通過し、術後に獣医師が発行した書類などを提出することで、手術費用の一部(オス5,000円、メス8,000円が上限)が助成されます。申請条件や補助金額、手続き方法は自治体によって大きく異なるため、必ずお住まいの市区町村の役所や保健所のウェブサイト、または動物愛護センターなどで最新の情報を確認しましょう。
猫の去勢は妊娠や病気対策のために必要
去勢・避妊手術に「かわいそう」と感じる飼い主さんもいるかもしれません。しかし、この手術は望まない妊娠を防ぐだけでなく、愛猫を様々な病気のリスクから守り、発情期のストレスや問題行動を軽減するなど、多くのメリットがあります。具体的には、オスは精巣腫瘍や前立腺疾患、メスは子宮蓄膿症や卵巣腫瘍、乳腺腫瘍といった命に関わる病気の予防につながります。
費用面での負担は、助成金制度を賢く利用することで軽減できます。愛猫の健康と、より穏やかな共同生活のために、かかりつけの獣医師とよく相談の上、去勢・避妊手術を前向きに検討してみてください。
vet所属獣医師先生