猫に生理はない!陰部からの出血は子宮の病気かも?危険なサインと原因

メス猫の陰部から出血が見られたら、飼い主さんは「もしかして生理?」と驚くかもしれません。しかし、犬とは異なり、猫には人間のような定期的な生理はありません。では、なぜ出血するのでしょうか。この記事では、メス猫の出血で考えられる原因と、飼い主さんが取るべき対策について詳しく解説します。

猫に定期的な生理はこない

結論から言うと、猫には人間や犬のように定期的に起こる生理(月経)はありません。これは、猫の排卵の仕組みが関係しています。

猫は、発情期にオスと交尾した刺激によって排卵する「交尾排卵動物」です。定期的に排卵して受精に備える人間や犬とは異なり、交尾のタイミングで効率よく排卵するため、生理による出血が起こらないのです。この仕組みは、不要な出血で体力を消耗せず、妊娠の可能性が高い時だけ排卵するという、子孫を残すための合理的なシステムと言えます。

したがって、もしメス猫の陰部から出血が見られた場合、それは生理ではなく、何らかの病気やケガのサインである可能性が非常に高いです。特に、泌尿器系や子宮系の病気が疑われるため、決して自己判断で様子を見ず、速やかに動物病院を受診してください。

猫の出血、泌尿器の病気の場合

猫の出血が泌尿器の病気による場合、血尿として現れることが多く、次のような病気が考えられます。

  • 猫下部尿路疾患(FLUTD):膀胱炎や尿石症など、膀胱から尿道にかけての病気の総称です。特に「尿石症」は、尿中のミネラルが結晶化して結石となり、膀胱や尿道を傷つけて出血させます。尿道が細いオス猫に多い病気ですが、食生活の乱れなどからメス猫でも発症します。
  • 腎臓の病気:腎盂腎炎や腎結石など、腎臓自体のトラブルで血尿が出ることがあります。
  • 外傷・腫瘍:交通事故や落下などで内臓を損傷したり、泌尿器に腫瘍ができていたりする場合も出血の原因となります。
  • 中毒:玉ねぎやネギ類などを誤食すると、赤血球が破壊される「溶血」が起こり、血尿が出ることがあります。

血尿とあわせて、「何度もトイレに行くが少ししか出ない」「排尿時に痛そうに鳴く」「食欲がなく、ぐったりしている」といった症状が見られる場合は、緊急性が高いサインです。特に尿が全く出ない「尿道閉塞」は、急性腎不全を引き起こし、数日で命を落とす危険があります。真っ赤な尿が出ている場合も同様に危険な状態です。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

vet所属獣医師先生

尿石症では、結石による尿路閉塞も注意しなければなりません。尿路閉塞になると急性腎不全につながることがあります。普段からミネラルバランスを考慮したペットフードを与えるように心がけましょう。

猫の出血、子宮の病気の場合

避妊手術をしていないメス猫の陰部から、血液の混じったおりものが出ている場合、子宮の病気が強く疑われます。特に注意が必要なのが「子宮蓄膿症」です。

子宮蓄膿症は、子宮内に細菌が感染して膿が溜まる病気で、避妊手術をしていない中高齢(5歳以上)の猫に多く見られます。発情後などにホルモンバランスが変化して免疫力が低下することが、主な原因とされています。避妊手術で子宮を摘出していれば、発症することはありません。

子宮蓄膿症の主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 陰部から血や膿の混じったおりものが出る(陰部を気にして舐める)
  • 元気、食欲がなくなる
  • 水をたくさん飲み、尿の量が増える(多飲多尿)
  • お腹が張って膨らんでくる
  • 発熱や嘔吐

放置すると、溜まった膿で子宮が破裂して腹膜炎を起こしたり、細菌の毒素が全身に回る敗血症になったりして、命を落とす非常に危険な病気です。治療は、外科手術で膿が溜まった子宮と卵巣を摘出するのが一般的です。早期に発見し治療すれば助かる可能性が高い病気ですので、疑わしい症状があれば一刻も早く動物病院を受診してください。

vet所属獣医師先生

子宮蓄膿症は開放性と閉鎖性の二種類があります。開放性の子宮蓄膿症であれば、陰部から膿が出てくるため異常に気付きやすいですが、閉鎖性の場合陰部からの排膿は見られないため注意が必要です。普段からコミュニケーションを取ってお腹が少し膨れ上がっているなと感じたら動物病院で診てもらうことをおすすめします。

猫の陰部から出血はすぐに動物病院へ

これまで見てきたように、猫の陰部からの出血は、生理ではなく命に関わる病気のサインです。自然に治ることは期待せず、見つけたらすぐに動物病院へ連れて行くことが最も重要です。

受診の際は、いつから出血しているか、血の色や量、尿や便の状態、食欲や元気の有無など、猫の様子をできるだけ詳しく獣医師に伝えられるようにメモしておきましょう。可能であれば、出血の付いたペットシーツや、尿そのものを持参すると診断の助けになります。

愛猫の健康を守るためには、日頃からの観察が欠かせません。スキンシップをとりながら体を触ったり、トイレの様子をチェックしたりして、普段との違いにいち早く気づいてあげることが、病気の早期発見・早期治療につながります。大切な家族である愛猫の小さなサインを見逃さないようにしましょう。

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