【獣医師が選ぶ】猫がかかりやすい病気4選|知っておきたい症状と予防法

愛猫とのかけがえのない時間を一日でも長く、健やかに過ごしたいと願うのは、すべての飼い主さんの共通の想いでしょう。

しかし、猫は体調不良を隠す習性があるため、飼い主が気づいたときには病気が進行しているケースも少なくありません。突然の別れという悲しい事態を避けるためにも、日頃から愛猫の健康状態を注意深く観察し、病気のサインを早期に発見することが極めて重要です。

この記事では、猫の飼い主さんが知っておくべき、特にかかりやすい4つの病気について、その症状、効果的な治療法、そして今日からできる予防・対策を詳しく解説します。

猫がかかりやすい病気とは

猫がかかりやすい代表的な病気

腎臓病
ガン(悪性腫瘍)
てんかん
猫風邪(上部気道感染症)

猫が一生のうちでかかりやすい病気には、「腎臓病」「ガン」「てんかん」「猫風邪」などがあげられます。

これらの中には命に直接関わる深刻な病気もありますが、多くは飼い主さんの日々のケアや定期的な健康診断によって、予防や早期発見が可能です。愛猫の健康を守るために、正しい知識を身につけましょう。

猫がかかりやすい病気①腎臓病

腎臓病の治療法

食事療法(療法食)
輸液療法
薬物療法

腎臓病の対策

リンやタンパク質を調整した食事
飲水量を増やす工夫
定期的な健康診断(血液・尿検査)

猫の腎臓病は、特に高齢の猫に多く見られる病気で、その多くは腎臓の機能が徐々に低下していく「慢性腎臓病」です。

初期段階では症状がほとんど現れませんが、進行すると「多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこを大量にする)」「食欲不振」「体重減少」「嘔吐」「脱水」「口臭(アンモニア臭)」「痙攣発作」といった多様な症状が見られるようになります。

治療法

一度失われた腎臓の機能を元に戻すことは難しく、完治は望めません。そのため、腎臓病の治療は、病気の進行を穏やかにし、症状を和らげることで愛猫のQOL(生活の質)を維持することを目的とします。

主な治療法は、腎臓への負担が少ない「食事療法(リンやタンパク質が調整された療法食)」や、脱水を改善する「輸液療法」、症状を緩和する「薬物療法」を組み合わせて行います。

腎臓病の治療法に光明!

近年、猫の慢性腎臓病治療薬の開発は進んでいます。2017年に登場した「ラプロス」は、腎機能の低下を抑制する効果が国内で初めて承認された薬剤です。

この薬は、腎臓の血流を改善し、炎症を抑える作用によって腎機能の低下を抑制し、臨床症状を和らげる効果が期待されています。現在では、このような進行を抑制する薬のほか、様々な治療選択肢が獣医療で用いられています。

対策

腎臓病の最も重要な対策は、腎臓に負担をかけない生活を心がけることです。

特に食事管理は重要で、塩分やリンが多く含まれる人間の食べ物などを与えるのは絶対に避けましょう。いつでも新鮮な水が飲めるように、水飲み場を複数設置したり、ウェットフードを活用したりして飲水量を確保することも大切です。また、腎臓病は静かに進行するため、特に7歳以上のシニア期に入ったら、症状がなくても定期的に動物病院で腎機能の検査(血液検査や尿検査)を受けることが早期発見の鍵となります。

猫がかかりやすい病気②てんかん

てんかんの治療法

原因疾患の治療
抗てんかん薬による内科的治療

てんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮することで、けいれんなどの発作が繰り返し起こる脳の病気です。猫では0.3~1%の確率で発症するといわれています。

発作中は、「全身または四肢が硬直する」「けいれんする」「口から泡を吹く」「よだれを垂らす」「失禁する」などの症状が見られます。

治療法

てんかんは、脳腫瘍や感染症など他の病気が原因で起こる「症候性てんかん」と、原因が特定できない「特発性てんかん」に分けられます。症候性てんかんの場合は、原因となっている病気の治療を行うことで発作が治まることがあります。

原因が不明な特発性てんかんや、原因の治療が難しい場合は、発作の頻度や重症度をコントロールするために「抗てんかん薬」を投与します。この治療は発作を抑えるためのものなので、長期的な服用が必要になることがほとんどです。

発作が起きたときの対処法

愛猫にてんかん発作が起きた際は、飼い主さんは慌てず冷静に対処することが大切です。まずは発作が自然に収まるのを見守りましょう。

嘔吐している場合は、吐瀉物が気道に詰まらないよう顔を横向きにしてあげてください。また、発作中に体をぶつけて怪我をしないよう、周囲の家具や危険な物を遠ざけて安全なスペースを確保しましょう。発作の様子をスマートフォンなどで動画撮影しておくと、獣医師が診断する際の貴重な情報になります。

対策

原因が多岐にわたるため、てんかんを完全に予防することは困難です。しかし、リスクを減らすための対策はあります。

感染症が原因となるてんかんは、「子猫の頃のワクチン接種」や「完全室内飼いの徹底」で予防できます。また、定期的な健康診断は、てんかんを引き起こす可能性のある病気(脳腫瘍や内臓疾患など)の早期発見につながります。愛猫が元気に見えても、年に1〜2回は健康診断を受け、病気の芽を早期に摘むことをおすすめします。

猫がかかりやすい病気③風邪

猫風邪の治療法

抗ウイルス薬・抗生物質の投与
対症療法(点眼・点鼻薬など)

猫風邪の対策

混合ワクチンの定期接種
完全室内飼いの徹底

一般的に「猫風邪」と呼ばれる病気は、主に「猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウイルス)」「猫カリシウイルス感染症」「猫クラミジア感染症」の3つが原因となる上部気道感染症の総称です。

これらのウイルスや細菌に感染することで発症し、「くしゃみ」「鼻水」「目やに」「流涙」「発熱」「食欲不振」「口内炎」などの症状が見られます。特に免疫力の低い子猫や高齢の猫は重症化しやすく、肺炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。

治療法

猫風邪の治療は、原因となっている病原体に合わせて行います。

ウイルスが原因の場合はインターフェロンや抗ウイルス薬、細菌(クラミジア)が原因の場合は抗生物質を投与します。同時に、目やにや鼻水といった症状を和らげるための点眼薬・点鼻薬などの「対症療法」も行われます。食欲がなく脱水症状が見られる場合は、輸液による栄養補給も重要です。放置すると悪化する一方なので、風邪の症状が見られたら早めに動物病院を受診しましょう。自宅では、体を冷やさないように保温し、湿度を保って安静にさせることが回復を助けます。

対策

猫風邪の最も効果的な対策は「混合ワクチン」の接種です。ワクチンで完全に感染を防げるわけではありませんが、感染しても症状を軽く抑えることができます。獣医師と相談し、適切な時期にワクチン接種を行いましょう。

また、これらの病原体は感染猫のくしゃみや鼻水などを介してうつるため、「完全室内飼い」を徹底することも重要な予防策です。多頭飼いの場合は、1匹が感染すると他の猫にも広がりやすいため、特に定期的なワクチン接種と健康管理が大切になります。

猫がかかりやすい病気④ガン

ガンの治療法

外科療法(手術)
放射線療法
化学療法(抗がん剤)
免疫療法

ガンの対策

若齢での避妊・去勢手術
肥満の防止と適切な食事管理
日頃のボディチェック

ガン(悪性腫瘍)は、体内の細胞が異常なスピードで無秩序に増殖し、周囲の組織を破壊したり、他の臓器に転移したりする病気です。猫ではリンパ腫、乳腺腫瘍、扁平上皮癌などが多く見られます。

症状は発生部位によって様々ですが、「体にしこりや腫れができる」「食欲や元気がなくなる」「体重が急に減る」「原因不明の出血や嘔吐」などがサインとなることがあります。

治療法

猫のガンの治療法は、ガンの種類、進行度、猫の年齢や全体的な健康状態を考慮して、主に以下の4つを単独または組み合わせて行います。

外科療法

手術によってガン細胞を物理的に取り除く方法で、転移がない固形ガンに対して最も効果的な治療法とされています。ガンの種類や場所によっては、完全な切除が難しい場合もあります。

放射線療法

高エネルギーの放射線を照射してガン細胞を破壊する治療法です。手術が困難な場所にあるガンや、手術後の再発防止に用いられます。全身麻酔が必要となることが多く、実施できる施設は限られます。

化学療法

抗がん剤を用いて、全身に広がったガン細胞や転移したガンを攻撃する治療法です。近年では、ガン細胞だけを狙い撃ちし、正常な細胞へのダメージを抑える「分子標的薬」も登場しています。

免疫療法

猫自身が本来持っている免疫の力を高めてガン細胞と戦う力を助ける治療法です。副作用が比較的少なく、他の治療法と併用することでQOL(生活の質)の維持に貢献すると期待されています。

対策

ガンの発生を完全に防ぐ方法はありませんが、リスクを低減させるための対策は存在します。特に、メス猫は若いうちに「避妊手術」を受けることで、乳腺腫瘍の発生率を大幅に下げることができます。また、日頃から「肥満を防ぎ、バランスの取れた食事を与える」ことも、健康な体を維持し、病気への抵抗力を高める上で重要です。何よりも、体を撫でるついでにしこりがないかなどをチェックする「日頃のボディチェック」が、ガンの早期発見に繋がります。

早期発見の重要性

愛猫を病気から守るためには、飼い主による日々の健康管理と適切な飼育環境が不可欠です。毎日の食事量、飲水量、おしっこやうんちの状態をチェックする習慣をつけましょう。そして、体を撫でたりブラッシングしたりするスキンシップの時間は、しこりや痛み、脱毛など体の異常を早期に発見する絶好の機会です。

普段と違う行動や症状に気づけるのは、一番近くにいる飼い主さんだけです。少しでも「おかしいな」と感じることがあれば、決して自己判断せず、速やかに獣医師に相談してください。愛猫のかけがえのない命を守るために、病気の早期発見・早期治療を常に心がけましょう。

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