猫は一度に複数の子猫を産む多胎動物です。基本的には母猫が自力で出産しますが、難産などのトラブルが起こる可能性もゼロではありません。万が一に備え、猫の出産を控えている飼い主さんは、妊娠の兆候から出産後のケアまで一通りの知識を持っておきましょう。この記事では、猫の出産に関する飼い主さんの疑問や不安を解消します。
猫の妊娠はどうやって見分ける?
猫の初めての発情期は、一般的に生後6〜9ヶ月ごろに訪れます。交配し妊娠した場合、いくつかの変化が見られるようになります。猫の妊娠を見分けるには、行動と身体、両方のサインに注目することが大切です。
【行動の変化】
妊娠すると、普段より甘えん坊になったり、床でゴロゴロ転がったりするなど、愛情深い行動を見せることがあります。食欲が増し、穏やかになる猫もいます。
【身体の変化】
妊娠3週目頃から、乳首が普段より大きく、ピンク色になる「ピンクアップ」という現象が見られます。徐々にお腹も大きくなり始め、体重も増加します。これらの変化に気づけるよう、普段から愛猫の様子をよく観察することが、妊娠をいち早く察知する鍵となります。
猫の出産、時期と兆候は?
猫の妊娠期間は約63日〜65日です。妊娠60日を過ぎた頃から、母猫は出産に向けての準備を始めます。出産の時期が近づくと、以下のような兆候が見られるようになります。
- 食欲の低下:出産が近づくと食欲がなくなります。24時間前には絶食することが多いです。
- 体温の低下:平熱より1度ほど体温が下がります(37度台になることが多い)。
- 巣作り行動:クローゼットの中や押し入れなど、暗くて静かで安心できる場所を探し始めます。
- 落ち着きがなくなる:そわそわと歩き回ったり、頻繁に鳴いたりします。
- 体を舐める:陰部をしきりに舐めるようになります。
これらの出産の兆候が見られたら、飼い主は落ち着いて見守れるように準備をしましょう。タオルなどを敷いた清潔な産箱を用意してあげると、猫はそこで安心して出産できます。
猫の出産にかかる時間は?
3時間~12時間程度(個体差あり)
猫の出産にかかる時間は、産む子猫の数や個体差によって大きく異なりますが、一般的に3時間から半日ほどです。
およそ20〜60分程度の陣痛を経て第1子の出産が始まります。1時間以上強い陣痛が続いても出産が始まらない場合は、逆子や微弱陣痛などのトラブルが考えられます。1匹目が生まれると、その後は15〜30分間隔で次々と子猫を産んでいきます。もし、以下のような状況が見られた場合は、すぐに獣医師に連絡し、指示を仰いでください。
- 強い陣痛が1時間以上続いても子猫が生まれない
- 子猫の体の一部が見えたまま5分以上経過している
- 大量の出血(特に鮮血)がある
- 母猫がぐったりして明らかに苦しそうにしている
猫の出産、何を準備すればいい?出産後はどうする?
産箱の準備
緊急時の備品
子猫のケア用品
愛猫の出産に備えて、飼い主として事前に準備しておくべきものがあります。また、出産後の処置についても確認しておきましょう。
出産前に準備するものリスト
- 産箱:猫が安心できる大きさの段ボールやペット用サークル。
- 敷物:ペットシーツや、汚れてもいい清潔なタオル・毛布。
- 清潔なハサミ:へその緒を切るため。使用前に必ず煮沸消毒します。
- 木綿糸:へその緒を縛って止血するために使います。
- 清潔な布やガーゼ:子猫の体を拭くために使います。
- 体温計・体重計:母猫の体調管理と、子猫の成長記録に使います。
- かかりつけの動物病院の連絡先:緊急時にすぐ連絡できるよう、目立つ場所に貼っておきましょう。
出産後の処置とケア
基本的に、生まれた子猫の世話(羊膜の除去やへその緒の処理)は母猫が行います。しかし、母猫が初産であったり、疲労していたりすると、子猫の世話をしない場合があります。その際は飼い主さんの手助けが必要です。
生まれた子猫の羊膜を母猫が除去しない
清潔な布やタオルで子猫を包み、顔周りの羊膜を優しく破って呼吸ができるようにします。その後、体を拭いて刺激を与え、母猫のそばに連れて行きます。それでも母猫が舐めない場合は、飼い主さんが体を拭いてあげましょう。
へその緒の処理
母猫がへその緒を噛み切らない場合は、子猫のお腹から2〜3cmほどの場所を木綿糸でしっかりと縛ります。そこからさらに胎盤側を1cmほど離した部分を、消毒したハサミで切ります。このとき、縛った糸より子猫側を切らないように十分注意してください。
初めてのことで慌ててしまうかもしれませんが、事前に手順をシミュレーションしておくと落ち着いて対応できます。処置に少しでも不安がある場合は、ためらわずに動物病院へ相談してくださいね。
猫の出産、一度に産む数は何匹くらい?
平均3~5匹
猫が一度の出産で産む子猫の数は、平均すると3〜5匹です。ただし、これはあくまで平均的な数であり、母猫の年齢や健康状態、品種によっても異なります。
一般的に、初産の若い猫は少なく、出産経験を重ねた母猫ほど多く産む傾向があります。体の小さな猫種(例:シンガプーラで2匹前後)は少なく、大きな猫種ではそれ以上になることもあり、1〜8匹の間で生まれてくると考えておくと良いでしょう。
飼い主も猫の出産準備
猫の出産は、多くの場合母猫の本能に任せて自然に進行します。飼い主の役割は、あくまでも母猫が安心して出産に集中できる環境を整え、万が一のトラブルに備えることです。過度な干渉は母猫にストレスを与え、育児放棄の原因になることもあるため、基本的には静かに見守る姿勢が大切です。
愛猫の妊娠がわかったら、出産の流れや子猫のケアについて最低限の知識を身につけ、かかりつけの獣医師とも連携を取りながら、万全の態勢でその日を迎えられるように準備を進めましょう。