愛犬とのおでかけや旅行、動物病院への通院など、車での移動は多くの飼い主さんにとって必要不可欠です。しかし、「うちの子、もしかして車酔い?」と心配になった経験はありませんか。犬も人間と同じように車に酔うことがあり、ドライブが苦手な子も少なくありません。
この記事では、愛犬の車酔いで悩む飼い主さんに向けて、犬の車酔いの具体的な症状から原因、今日からできる対策、そして動物病院で処方される酔い止め薬について、詳しく解説します。
犬の車酔い、症状は?
- 落ち着きがなくなり、そわそわと動き回る
- 不安そうに吠えたり鳴いたりする
- 頻繁にあくびを繰り返す
- 小刻みに震える
- 大量のよだれを垂らす
- 口の周りを何度も舐める(パンティング)
- 嘔吐してしまう
犬が車に酔い始めると、まずは「落ち着きがなくなる」「そわそわする」「吠える」といった行動の変化が見られます。これは車という慣れない環境や揺れに対するストレスのサインです。
症状が進行すると、「あくび」「震え」「大量のよだれ」「パンティング(ハッハッと浅く速い呼吸)」などが現れます。特に、大量のよだれや口の周りをしきりに舐める行動は、吐き気のサインであることが多く、注意深く観察してあげましょう。
車酔いがひどい場合は、嘔吐につながります。車に乗ってすぐに吐いてしまう子もいるため、万が一に備えて、ペットシーツやビニール袋、タオル、ウェットティッシュなどを準備しておくと、いざという時に冷静に対処できますよ。
犬の車酔い、原因は?
- 身体的な原因:三半規管への刺激
- 精神的な原因:過去の嫌な記憶や不安感
- 環境的な原因:車内の匂いや揺れ
犬の車酔いの原因は、一つだけではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。主な原因は「身体的なもの」と「精神的なもの」に分けられます。
最も一般的な原因は、人間と同じく平衡感覚を司る「三半規管」への刺激です。車の揺れによって、目から入る情報と体の感覚にズレが生じ、脳が混乱して車酔いを引き起こします。特に子犬は三半規管が未発達なため、車酔いしやすい傾向にあります。
また、「車に乗ると嫌な場所(動物病院など)に連れて行かれる」といった過去の嫌な記憶や、エンジン音や振動、狭い空間に対する「ストレス」や「不安感」といった精神的な要因も大きく影響します。特に、繊細で臆病な性格の犬は、環境の変化に敏感なため車酔いしやすいと言えるでしょう。
犬の車酔い、対策は?
もしドライブ中に愛犬が車酔いの症状を見せたら、まずは安全な場所に車を停めて休憩し、外の空気を吸わせてあげましょう。嘔吐してしまった場合も、叱ったり騒いだりせず、冷静に片付けて優しく声をかけてあげることが大切です。
ここでは、車酔いの原因に合わせた対処法をご紹介します。
「三半規管への影響」を減らすには
急発進、急ブレーキ、急ハンドルといった運転は、三半規管への刺激を強くします。愛犬を乗せている時は、できるだけ揺れの少ない、穏やかな運転を心がけましょう。一定の速度を保ち、カーブもゆっくり曲がることで、犬の負担を軽減できます。
「過去の嫌な記憶」を上書きするには
「車=嫌なこと」というイメージを払拭するために、車でドッグランや公園など、愛犬が喜ぶ「楽しい場所」へ行く経験を増やしてあげましょう。「車に乗ると良いことがある!」と学習することで、車に対するプラスのイメージが生まれ、精神的なストレスが和らぎます。
「不安感」を取り除くには
慣れない車内での不安を少しでも和らげるために、飼い主さんが優しく声をかけたり、お気に入りのおもちゃやタオルをそばに置いてあげたりするのが効果的です。飼い主さんの存在が、愛犬にとって何よりの安心材料になります。
犬の車酔い、対策は?
犬の車酔いは、事前の準備や工夫で予防・軽減することができます。ドライブ前にできる効果的な予防策を見ていきましょう。
いきなり長時間のドライブに連れて行かない
まずは車に慣れさせることが最も重要です。エンジンをかけるだけ、次は5分程度の短いドライブ、と少しずつ乗車時間を延ばしていく「車に慣れるトレーニング」を行いましょう。目的地に着いたら、たくさん褒めておやつをあげるなど、良い経験として記憶させることがポイントです。
振動や犬のストレスを軽減するクレートやキャリーを用意する
犬を膝の上で抱っこしたり、自由にさせたりするよりも、体にフィットするサイズのクレートやドライブボックスに入れる方が、揺れが軽減され犬は安心できます。クレートは車の進行方向に向けて置き、シートベルトでしっかりと固定しましょう。中に飼い主さんの匂いがついたタオルを入れてあげると、さらにリラックス効果が高まります。
小まめに休憩をとる
長距離移動の場合は、1〜2時間に1回は休憩を取りましょう。サービスエリアのドッグランなどを利用して、外で気分転換させてあげるのがおすすめです。新鮮な空気を吸ったり、軽く歩いたりするだけでも、車酔いのリスクを下げることができます。
食事の量と時間に注意する
満腹や空腹は車酔いを誘発します。ドライブに出かける際は、食事を出発の2〜3時間前までに済ませ、量は普段の半分程度にしておきましょう。空腹すぎても胃酸で気持ち悪くなることがあるため、注意が必要です。
車内の空調を快適にしておく
犬は嗅覚が非常に優れているため、車内の芳香剤やタバコの臭いはストレスの原因になります。ドライブ中は窓を少し開けてこまめに換気し、空気を清潔に保ちましょう。また、犬が暑さでストレスを感じないよう、エアコンで快適な温度(20℃前後が目安)を維持することも大切です。特に夏場は熱中症にも注意が必要です。
車酔いの薬は飲ませても良い?
どうしても長時間の移動が避けられない場合や、車酔いがひどい場合には、動物病院で酔い止め薬を処方してもらうという選択肢があります。
犬用の酔い止め薬(制吐剤)は、車酔いの原因となる吐き気そのものを効果的に抑えてくれます。ただし、薬の投与量や種類は犬の体重や健康状態によって異なるため、必ず獣医師の診察を受けた上で処方された薬を使用してください。飼い主さんの判断で人間用の酔い止め薬を与えることは絶対にやめましょう。
もし薬の副作用が心配な場合や、まずは手軽に試したいという場合は、犬の車酔い対策用のサプリメントもあります。不安を和らげる成分などが含まれたものが市販されているので、かかりつけの獣医師に相談してみるのも良いでしょう。
犬の車酔いは慣れてくることで緩和される
犬の車酔いは、子犬の頃からのトレーニングや環境の工夫によって、少しずつ克服できるケースがほとんどです。焦らず愛犬のペースに合わせて車に慣れさせていくことで、辛い車酔いはきっと減っていきます。
事前の対策をしっかりと行い、愛犬の負担を最小限に抑えながら、一緒にドライブや旅行を楽しめるようになりましょう。車でお出かけできる場所が増えれば、愛犬との生活はもっと豊かで楽しいものになりますよ。
vet監修獣医師先生
症状が治まらない、ぐったりしているなど、様子がおかしい場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。