【獣医師監修】犬のダイエットを成功させる食事と運動のコツ|無理なく痩せる方法

大切な愛犬が肥満気味かも…と心配になっていませんか?室内で飼われることの多い現代の犬は、肥満になりやすい傾向があります。犬の肥満はさまざまな病気のリスクを高めるため、早期の対策が重要です。生活習慣全体を見直すことで、健康的な体型を取り戻すことができます。

この記事では、獣医師監修のもと、犬の肥満の原因からチェック方法、食事や運動を中心とした具体的なダイエット方法までを詳しく解説します。愛犬に合った無理のないダイエット計画を立て、健康で長生きしてもらうために、ぜひ参考にしてください。

犬の肥満、原因とチェック方法

犬が肥満になる主な原因は、人間と同じく「消費カロリーよりも摂取カロリーが多い」ことです。具体的には、運動不足による消費カロリーの減少、おやつやフードの与えすぎといった不適切な食事が挙げられます。また、加齢による基礎代謝の低下や、甲状腺機能低下症などの病気が隠れている場合もあります。

さらに、去勢・避妊手術後はホルモンバランスの変化で太りやすくなるため、特に注意が必要です。愛犬の体を上から見て腰にくびれがなかったり、肋骨に触れにくかったりする場合は肥満のサインです。まずは肥満度をチェックし、必要であればダイエットを検討しましょう。

肥満と寿命の関係

犬の肥満は「万病のもと」であり、寿命にも大きく影響を及ぼす可能性があります。

体重が増えすぎると、4本の足で体を支えることが困難になり、関節炎椎間板ヘルニアといった運動器系の疾患を引き起こしやすくなります。

また、重い体を動かすために心臓に過剰な負担がかかる心臓病や、脂肪組織が気道を圧迫することによる呼吸器疾患のリスクも高まります。

そのほか、肥満が引き金となり、高血圧糖尿病皮膚病、さらにはがんの発症率も高まることが知られており、肥満は愛犬の健康寿命を縮める大きな要因となるのです。

肥満度をチェック

方法

ボディコンディションスコア(BCS)
マッスルコンディションスコア(MCS)
体型の定点写真撮影
定期的な体重測定

ダイエットを始める前に、まずは愛犬の現在の状態を正確に把握することが大切です。

犬の肥満度をチェックするには、主にボディコンディションスコア(BCS)とマッスルコンディションスコア(MCS)という2つの指標を用い、実際の体重と合わせて総合的に判断します。

ボディコンディションスコア(BCS)

ボディコンディションスコア(BCS)は、犬の体を「見て」「触って」評価する方法です。肋骨や腰のくびれ、お腹の肉付き具合から、やせすぎから太りすぎまでを5段階で評価し、客観的に肥満度を判断します。

飼い主さんご自身での判断が難しい場合は、動物病院で獣医師にチェックしてもらい、コツを掴むとよいでしょう。

vet監修獣医師先生

BCS(ボディコンディションスコア)は指標があります。インターネットで検索すると画像が出てきますので、それらを参考にして判断してみましょう。

理想体重(BCS3)

理想とされる体重の95~106%で、体脂肪率が15~24%です。

理想的な体型は「肋骨を覆う余分な脂肪がなく、触れば容易に肋骨がわかる状態。上から見たときに肋骨の後ろに腰のくびれがはっきりと見え、横から見ると腹部が引き締まっている」状態です。

体重過剰(BCS4)

理想体重の107~122%で、体脂肪率が25~34%です。

やや太り気味の体型は「皮下脂肪に覆われ、肋骨に触るのが少し難しい状態。腰のくびれがわかりにくく、上から見ると背中が横に広がっているように見える」状態です。

肥満(BCS5)

理想体重の123~146%、体脂肪率が35%以上です。

太りすぎの体型は「厚い脂肪に覆われ、肋骨に触れるのが困難な状態。腹部・背中・尾の付け根に大量の脂肪があり、腰のくびれや腹部の吊り上がりがなく、腹部の膨らみが明らか」な状態です。

マッスルコンディションスコア(MCS)

マッスルコンディションスコア(MCS)は、筋肉の付き具合を確認する指標です。ダイエット中は脂肪だけでなく筋肉も落ちてしまうことがあるため、BCSと合わせて筋肉量もチェックすることが重要です。

特に食事制限によるダイエットではタンパク質が不足し、筋肉が萎縮してしまうことがあります。日常的に体を触ってチェックし、長毛種で分かりにくい場合は、マッサージやブラッシングの際に確認する習慣をつけましょう。

普通の筋肉量

「頭部の側頭筋(そくとうきん)が緩やかな丸みを帯びている、肩甲骨や背骨、骨盤が適度な筋肉で覆われており、骨が浮き出ていない」のが正常な状態です。筋肉量が落ちると、これらの部位がへこみ、骨の輪郭がはっきりとわかるようになります。

体型を写真に撮る

客観的な変化を記録するために、定期的に写真を撮っておくことをおすすめします。

毎回同じ場所、同じ角度(正面、横、真上など)から撮影することで、ダイエットによる体型の変化が一目でわかり、モチベーション維持にも繋がります。

体重を測る

体重は、毎日同じ時間・同じ条件(例:朝の食事前、排泄後)で測るのが基本です。これにより日々の変動による誤差を減らせます。

簡単な測り方は「飼い主さんが犬を抱っこして体重計に乗り、その数値から飼い主さん自身の体重を引く」方法です。

犬の体重管理ではわずかな変化も重要になるため、10g単位で計測できる赤ちゃん用の体重計やペット用体重計を使用すると、より正確に把握できておすすめです。

犬のダイエットのコツ、人との違いは?

コツ

飼い主さんが食事を管理する自覚を持つ
体重の減少は「グラム」ではなく「パーセント」で考える

愛犬のダイエットを成功させるには、人間の場合とは違う、犬ならではのコツを理解しておくことが大切です。

飼い主が太らせているという自覚

愛犬のダイエットを成功させる上で最も重要なのは、飼い主さんの意識です。犬は自分で食事を用意できません。つまり、愛犬が太ってしまった原因は、飼い主さんの食事管理にある場合がほとんどです。

可愛い愛犬におねだりされるとついおやつをあげたくなりますが、その一口が肥満に繋がります。愛犬の健康と長生きのため、心を鬼にして食事管理を徹底する覚悟が必要です。

グラムではなくパーセンテージ

人間にとっての0.5kgと、体重3kgの小型犬にとっての0.5kgでは、その意味が全く異なります。犬のダイエットでは、減った重さ(g)ではなく、現在の体重に対する割合(%)で進捗を評価することが重要です。

例えば、1週間に体重の1〜2%程度の減量を目安にするなど、無理のないペースで進めるのが安全です。

無理のないダイエット計画

犬のダイエットは、無理のない計画を立てることが成功の鍵です。まずは獣医師と相談し、愛犬の犬種、年齢、健康状態に合わせた目標体重期間を設定しましょう。

人間と同じように、急激な減量は犬の体に大きな負担をかけ、体調不良やリバウンドの原因となります。

犬は不調を言葉で伝えられないため、飼い主さんがペースを管理し、ストレスを与えないよう配慮することが不可欠です。健康的に痩せるためには、焦らず長期的な視点で取り組むことが大切ですね。

目標設定や体重管理が難しい場合は、かかりつけの動物病院で定期的にチェックしてもらうと安心です。

犬のダイエット方法「食事編」

ポイント

摂取カロリーの正確な把握と見直し
食事回数を増やして空腹感を減らす
ダイエット用ドッグフードへの切り替え
人の食べ物は絶対に与えない

摂取カロリーの見直し

犬のダイエットの基本は、食事による摂取カロリーを正確に把握し、見直すことです。まずは現在1日に与えているフードやおやつの総カロリーを計算してみましょう。

フードのパッケージに記載されている給与量はあくまで目安です。愛犬の目標体重に必要なカロリー(RER:安静時エネルギー要求量)を獣医師に確認し、計量カップではなくキッチンスケールで正確に計量する習慣をつけましょう。

食事回数を細かく分ける

1日の総給与量は変えずに、食事の回数を増やすのも効果的な方法です。食事回数を1日2回から3〜4回に分けることで、空腹を感じる時間を短くし、食事への満足感を高めることができます。これにより、拾い食いや盗み食いなどの問題行動の予防にも繋がりますよ。

ドッグフードを替える

現在与えているフードの量を減らすだけでは、必要な栄養素まで不足してしまう可能性があります。そこでおすすめなのが、ダイエット用の療法食や総合栄養食です。これらのフードは、低カロリー・低脂肪でありながら、満腹感を得やすいように食物繊維が豊富に含まれていたり、筋肉を維持するために高タンパク質に設計されています。

フードを切り替える際は、1〜2週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やし、お腹の調子を見ながら慣らしていきましょう。

人の食べものを与えない

「少しだけ」のつもりが肥満の大きな原因となるのが、人の食べものです。人間にとっては少量でも、犬にとっては高カロリー・高塩分・高糖分であることが多く、肥満だけでなく様々な病気を引き起こすリスクがあります。犬に必要な栄養は、良質なドッグフードで十分に摂取できます。家族全員でルールを共有し、人の食べ物は絶対に与えないように徹底しましょう。

犬のダイエット方法「運動編」

ポイント

毎日の散歩を習慣にする
散歩の時間と質を見直す
散歩コースや方法を工夫する

毎日の散歩

食事管理と並行して重要なのが、運動による消費カロリーの増加です。最も手軽で効果的な運動は、毎日の散歩です。

散歩はエネルギーを消費するだけでなく、愛犬のストレス解消や社会性を育む上でも欠かせません。肥満気味の犬が散歩を嫌がる場合は、まずは家の周りを少し歩くことから始め、徐々に距離と時間を延ばしていきましょう。

散歩の時間を見直す

犬種や年齢によって適切な運動量は異なりますが、ダイエット中は散歩の時間や質を見直すことが大切です。1日に必要な運動時間の目安として、小型犬は1日2回・各15分以上、中型犬は1日2回・各30分以上、大型犬は1日2回・各30~60分が推奨されます。

ただし、急に運動量を増やすと足腰を痛める可能性があるため、愛犬の体調や年齢、疲れている様子を見ながら無理のない範囲で加減してあげてください。

vet監修獣医師先生

散歩は1日2回、20分以上歩き続けるといいそうです。肥満でなくても、1日2回で20分以上の散歩ができると理想的です。

散歩のコースや方法を変えてみる

いつも同じコースでは犬も飽きてしまい、運動効果も頭打ちになりがちです。散歩コースに変化をつけることで、運動量を自然に増やすことができます。アップダウンのある坂道や階段を取り入れたり、少し遠回りしたりするだけでも効果的ですよ。

また、安全な場所でボール投げやフリスビーなどの遊びを取り入れると、楽しみながら運動強度を高めることができ、ダイエットも長続きしやすくなります。犬の散歩についてしつけ法はこちらトラブルが起きたときの対処法はこちらで確認できます。

vet監修獣医師先生

ボールやフリスビーなどを行う際は、周りに人がいない広い公園などで行いましょう。

急な変化はやめて

犬のダイエットで最も大切なことは、急激な変化を避けることです。食事の急な減量や、過度な運動は、犬にとって大きな身体的・精神的ストレスとなり、かえって健康を損なう原因にもなりかねません。

食事内容の変更も運動量の増加も、必ず「少しずつ」「徐々に」行うのが鉄則です。愛犬の様子をよく観察しながら、無理のないペースで、長い目でダイエットに取り組むことが、成功への一番の近道です。飼い主さんだけで判断に迷う場合は、遠慮なくかかりつけの獣医師に相談しましょう。

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