【獣医師監修】犬の妊娠から出産まで|期間・初期症状・準備・費用を徹底解説

初めてメス犬を家族に迎えた方にとって、愛犬の妊娠や出産は未知の世界で、不安に感じることも多いでしょう。しかし、事前に正しい知識を身につけておけば、飼い主さんの不安が解消されるだけでなく、愛犬も安心して出産に臨むことができます。

この記事では、犬の妊娠から出産までの期間、妊娠・出産の兆候、必要な費用や準備、注意点までを網羅的に解説します。これから愛犬の出産を考えている方も、万が一に備えたい方も、ぜひ参考にしてください。

※もし妊娠・出産を希望しない場合は、避妊手術も大切な選択肢です。かかりつけの獣医師と相談しましょう。

個体差はありますが、犬の妊娠期間は交配日から平均して約63日(約9週間)です。人間の妊娠期間が約10ヶ月(約40週)なのに比べると非常に短く、あっという間に出産の日を迎えます。そのため、妊娠がわかったら慌ただしくなりますが、落ち着いて準備を進めていきましょう。

【時期別】犬の妊娠の症状と兆候

犬は人間のように市販の妊娠検査薬で確認することはできません。愛犬の様子の変化から妊娠の可能性に気づくことが大切です。ここでは、時期ごとの主な兆候をご紹介します。

妊娠初期(~3週頃)の兆候

交配後1週間から3週間頃に、つわりのような症状が見られることがあります。

  • 食欲不振、嘔吐:今まで好んで食べていたフードを食べなくなることがあります。
  • 味覚の変化:フードの好みが変わることがあります。
  • 乳首の変化:乳首が少しピンク色になり、張ってくることがあります。

これらの症状が見られたら、妊娠の可能性があると考え、動物病院の受診を検討しましょう。

妊娠中期(4~6週頃)の兆候

妊娠が安定してくると、より分かりやすい変化が現れます。

  • 食欲の回復・増加:つわりが落ち着き、食欲が戻ってきます。お腹の赤ちゃんを育てるために、栄養をたくさん必要とする時期です。
  • お腹の膨らみ:見た目にもお腹が膨らんできます。
  • 乳腺の張り:乳腺が大きく張り、乳首周辺の毛が薄くなることがあります。
  • おりもの:外陰部から透明または乳白色の粘液状のおりものが出ることがあります。

妊娠の確定診断

「妊娠かな?」と思ったら、動物病院で正確な診断を受けましょう。

  • 超音波(エコー)検査:妊娠約3週目以降から可能です。胎児の心拍を確認し、妊娠を確定診断します。
  • レントゲン検査:妊娠約6週目(45日)以降で可能になります。胎児の骨格が写るようになり、産まれてくる子犬の頭数や大きさを正確に確認できます。頭数を確認することは、安全な出産のために非常に重要です。

犬の出産が近いサイン・兆候は?

出産予定日が近づくと、母犬は出産に向けた行動を始めます。これらのサインを見逃さないようにしましょう。

  • 巣作り行動:前足で床や毛布を引っかく、落ち着きなくウロウロするなど、安心して出産できる場所を探す行動が見られます。この時期は神経質になりやすいため、静かな環境を整えてあげましょう。
  • 食欲の低下:出産当日は食欲がなくなることがほとんどです。
  • 頻繁なトイレ:お腹の中を空っぽにしようとするため、何度もトイレに行きます。軟便や下痢になることも多いです。
  • 体温の低下:出産直前の最も分かりやすい兆候です。犬の平熱は38℃~39℃ですが、出産前24時間以内に1℃~2℃ほど体温が下がります。最も体温が下がってから10時間~24時間以内に陣痛が始まるといわれています。

犬の妊娠・出産にかかる費用は?

愛犬の妊娠・出産には、各種検査費用や、万が一の場合の医療費がかかります。合計で数万円~20万円以上と状況によって差があるため、あらかじめ準備しておきましょう。
※ペット保険は、妊娠・出産に関する費用は補償対象外となるケースがほとんどです。

検査費用

  • 超音波(エコー)検査:診察代と合わせて4,000円~8,000円程度が目安です。
  • レントゲン検査:診察代と合わせて4,000円~8,000円程度が目安です。

出産費用

  • 自宅出産:正常な分娩であれば、基本的に医療費はかかりません。
  • 動物病院での出産:獣医師に立ち会ってもらう場合、5万円~10万円程度かかることがあります。
  • 緊急時の処置:難産で帝王切開が必要な場合は10万円~20万円以上、陣痛促進剤などの処置でも数万円の費用がかかる可能性があります。

自宅出産のために準備するものリスト

安心して出産を迎えられるよう、以下のものを事前に準備しておきましょう。

体温計
出産時期を予測するために必須です。妊娠6週目あたりから、毎日朝晩2回検温する習慣をつけましょう。
産箱
母犬が落ち着いて出産・子育てできるスペースです。段ボールなどで手作りも可能。母犬が横になっても余裕があり、子犬が自力で出られない高さにしましょう。中に清潔なタオルや細かく裂いた新聞紙を敷き、汚れたらすぐに交換できるようにします。冬場はペットヒーターなどで保温も忘れずに。
はかり(スケール)
生まれた子犬の体重測定に使います。順調に成長しているかを確認する大切な指標になります。1g単位で2kg程度まで測れるキッチン用で十分です。
清潔で乾いたタオル
生まれたばかりの子犬を拭いたり、体を温めたりと様々な用途で使います。体温低下を防ぐため、必ず乾いたものを使いましょう。多めに(5枚以上)用意すると安心です。
消毒済みのハサミと木綿糸
母犬がへその緒を噛み切らない場合に、飼い主が切るために使います。子犬のお腹から1cmほどのところを糸で縛り、その少し先をハサミで切ります。
洗面器とぬるま湯
子犬の体を拭く(産湯)際に使います。お湯の温度は、手を入れて少しぬるいと感じる程度(38℃前後)が適温です。
緊急連絡先
かかりつけの動物病院の電話番号と、夜間や休日に対応してくれる救急病院の連絡先を必ず控えておきましょう。

【時期別】犬の妊娠から出産までの注意点

元気な赤ちゃんを産んでもらうために、妊娠期間中は以下の点に注意してあげましょう。

妊娠初期(~3週頃):流産に注意

交配から着床するまでの約3週間は、流産のリスクが最も高い時期です。激しい運動(ドッグランなど)、お腹をこするような行動、過度な階段の上り下りは避けましょう。散歩は気分転換に必要ですが、短時間で済ませるなど、母犬に負担をかけないように配慮してください。他の犬からの感染症にも注意が必要です。

妊娠中期(4~6週頃):食事管理と異常のチェック

お腹の胎児が急成長するこの時期は、栄養価の高い食事が不可欠です。妊娠・授乳期の母犬用フードや、高カロリーな子犬用フードを、今までのフードに少しずつ混ぜて切り替えていきましょう。
また、この時期に出るおりものが茶色や緑色をしていたり、悪臭がしたりする場合は、感染症や流産・死産の可能性があります。すぐに動物病院を受診してください。

妊娠後期(7週~出産):レントゲン検査と食事の工夫

出産に備え、レントゲン検査で胎児の頭数を確認しておきましょう。お腹が大きくなることで胃が圧迫され、一度にたくさんの量を食べられなくなります。食事の回数を1日3~4回に増やすなど、工夫してあげましょう。

シャンプーは母犬のストレスや負担になるため、妊娠中は控えるのが無難です。また、ワクチンやノミ・ダニの駆除薬なども、投与する前に必ず獣医師に相談してください。

まとめ:正しい知識と準備で、安心して愛犬の出産を迎えよう

愛犬の妊娠から出産までは、喜びと共に多くの不安が伴います。しかし、飼い主が正しい知識を持ち、しっかりと準備をしておくことで、その不安は大きく軽減されます。

何よりも大切なのは、飼い主だけで抱え込まず、かかりつけの獣医師と密に連携を取ることです。定期的な検診を受け、少しでも気になることや愛犬の様子に変化があれば、すぐに相談しましょう。万全の準備を整えて、新しい命の誕生を温かく見守ってあげてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です