【獣医師監修】犬の胃拡張・胃捻転は命に関わる!症状・原因・予防法を解説

犬の胃捻転(いねんてん)は、胃がガスや食べ物で膨れ上がり、ねじれてしまう非常に危険な急性の病気です。「胃拡張・捻転症候群(GDV)」とも呼ばれ、発症すると血流が止まり、短時間でショック状態に陥り、命を落とす危険性が極めて高い緊急疾患です。

この記事では、大切な愛犬を胃捻転から守るために、その原因や初期症状、緊急時の対処法から治療、そして日頃からできる予防・対策法までを詳しく解説します。

犬の胃捻転、原因は?

犬の胃捻転が起こる正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複雑に絡み合って発症リスクを高めると考えられています。

  • 食後の激しい運動:胃に食べ物が入った状態で動くことで、胃が振られてねじれやすくなります。
  • 早食いや一気食い、一気飲み:大量の空気も一緒に飲み込んでしまい、胃が急激に拡張する原因となります。
  • 食事内容:ガスが発生しやすいフードや、一度に大量の食事を摂ること。
  • 体型・犬種などの遺伝的要因:グレートデンやジャーマンシェパードなど、胸が深い大型犬は構造的に胃捻転を起こしやすい傾向があります。
  • 加齢:高齢になると胃を支えている靭帯(じんたい)が伸びて緩み、胃が動きやすくなるためリスクが上がります。
  • ストレスや胃の運動機能の低下

特に胸の深い大型犬や老犬はリスクが高いとされていますが、中型犬や小型犬でも発症する可能性は十分にあります。

vet監修獣医師先生

胃拡張・胃捻転症候群は、統計的に雄犬に多い傾向があることも報告されています。

犬の胃捻転、症状は?

犬の胃捻転は、食後1〜4時間ほどで突然症状が現れることが多いです。以下のような初期症状が見られたら、様子を見ずにすぐに動物病院へ連絡してください。

  • 落ち着きがなくなり、ウロウロする
  • 吐こうとするが何も出ない(空嘔吐)
  • 大量のよだれを垂らす
  • お腹がパンパンに膨らんでくる
  • 苦しそうにハアハアと呼吸が速くなる
  • お腹を痛がり、頻繁に体を伸ばす

症状が進行すると、歯茎が白くなり、ぐったりして立てなくなるなどショック状態に陥ります。多臓器不全を引き起こし、発症から数時間で死に至ることもあるため、一刻も早い対処が必要です。

犬の胃捻転、治療法は?手術は必要?

犬の胃捻転は緊急性の最も高い病気の一つであり、治療は時間との勝負です。疑わしい症状があれば、ためらわずに夜間救急を含めて動物病院へ向かう必要があります。

治療は、まずショック状態を改善するための点滴や、胃にチューブや針を刺してガスを抜き、胃の圧力を下げる緊急処置を行います。

その後、犬の状態が安定したら、根本的な治療として全身麻酔下での外科手術が行われます。手術では、ねじれた胃を元の位置に戻し、壊死した組織があれば切除します。さらに、再発を予防するために、胃を腹壁に固定する手術(胃腹壁固定術)を同時に行うことが一般的です。

胃捻転は深夜に発生することも多く、緊急手術となるケースがほとんどです。手術費用は病院や犬の状態によって異なりますが、20〜30万円前後、あるいはそれ以上かかることもあります。胃捻転のリスクが高い大型犬と暮らす場合は、万が一に備えてペット保険への加入を検討しておくと安心です。

犬の胃捻転、術後は?

胃捻転の手術後は、愛犬の回復と再発防止のために安静な生活が不可欠です。術後のケアで特に重要なのは以下の点です。

  • 安静の徹底:術後1〜2週間は散歩も最低限にし、ジャンプや激しい運動は最低1ヶ月以上は厳禁です。
  • 食事管理:獣医師の指示に従い、消化の良い食事を少量ずつ、複数回に分けて与える必要があります。
  • 傷口のケア:傷口を舐めないように、エリザベスカラーを適切に装着します。

退院後も、獣医師の指示をしっかりと守り、愛犬の様子を注意深く観察してあげてください。

犬の胃捻転、対策は?

胃捻転の発症を100%防ぐことは困難ですが、日々の生活で工夫をすることで、そのリスクを大幅に下げることが可能です。愛犬のために、以下の胃捻転対策を心がけましょう。

  • 食後の安静を徹底する:食後2〜3時間は、散歩や運動を避け、落ち着いて過ごさせましょう。散歩は食前が理想です。
  • 食事の与え方を見直す:1回の食事量を減らし、1日の量を2〜3回以上に分けて与えることで、一度に胃が大きくなるのを防ぎます。
  • 早食いをさせない工夫:早食い防止用の凹凸のある食器を使ったり、フードをふやかしたりして、ゆっくり食べさせましょう。
  • 消化の良いフードを選ぶ:愛犬の年齢や体質に合った、消化性の高いフードを選びましょう。
  • 新鮮な水を常に用意する:一気飲みを防ぐためにも、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えます。

これらの対策を行っていても、胃捻転を発症してしまう可能性はゼロではありません。万が一、胃捻転が疑われる症状が見られた場合は、迷わず、すぐに動物病院に連絡してください。日頃から愛犬の様子をよく観察し、変化に早く気づいてあげることが、愛犬の命を救うことに繋がります。

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