犬は虫歯になりにくいが油断禁物!【獣医師監修】原因・症状・治療法と予防策

犬は人間と比べて虫歯になりにくいといわれますが、決してならないわけではありません。ある調査では、全体の約5%の犬が虫歯を患っているというデータもあります。愛犬の口の健康を守るためには、飼い主が犬の虫歯について正しい知識を持ち、日頃から口内をチェックしてあげることが大切です。

この記事では、犬の虫歯について、飼い主が知っておきたい症状や原因、動物病院での治療法、そして最も重要な家庭での予防対策まで、詳しく解説します。

犬の虫歯はどんな状態?種類は?

犬の虫歯とは、人間と同じように、細菌が作り出す酸によって歯のエナメル質が溶かされ、穴が開いてしまう病気です。

犬の口内はアルカリ性で、虫歯菌が繁殖しにくい環境のため、もともと虫歯にはなりにくいとされています。しかし、食生活の変化などにより、虫歯になる犬も増えています。

犬の虫歯には、主に以下の3つの種類があります。

  • 小窩裂溝う蝕(しょうかれっこうしょく):奥歯の溝など、歯の表面にある小さなくぼみにできる虫歯
  • 平滑面う蝕(へいかつめんうしょく):歯の側面など、平らな部分にできる虫歯
  • 根面う蝕(こんめんうしょく):歯周病などで歯茎が下がり、露出した歯の根元にできる虫歯

虫歯の直接的な原因は、歯垢(プラーク)に潜む「ミュータンス菌」です。歯に残った食べかす(特に糖分)をミュータンス菌が分解して酸を作り出し、その酸が歯の表面を溶かしていきます。進行すると歯の内部にある神経や血管にまで達し、強い痛みを引き起こすのです。

虫歯かも?と気付く症状は?

愛犬に以下のような症状が見られたら、虫歯のサインかもしれません。早めに動物病院で診てもらいましょう。

  • 歯に黒や茶色の点や穴がある
  • 歯の色が全体的に黄色や茶色に変色している
  • 特定の歯を気にして、顔をこする仕草をする
  • 口臭が強くなった
  • よだれの量が増えた
  • 歯茎が赤く腫れていたり、出血していたりする

また、犬によっては虫歯の痛みからごはんを食べるペースが急に遅くなったり、硬いものを避ける、あるいは全く食べなくなったりする場合もあります。犬の口臭や口腔ケアについては、こちらの記事も参考にしてくださいね。

虫歯ができる原因は?

糖分の多い食事

ドッグフードに比べて人間の食べ物(特にパンやお菓子)は糖分が多く、虫歯菌に栄養を与えているようなものです。犬の虫歯の大きな原因となるため、与えるのは控えましょう。

また、犬用のおやつであっても、甘い味付けがされているものは同様に注意が必要です。愛犬に与える食べ物は、健康はもちろん、歯のことも考えて選んであげてください。

歯並びや体質

犬の虫歯の発症原因は、まだ完全には解明されていません。

しかし、大型犬も小型犬も歯の本数は同じ42本であるため、顎が小さく歯が密集して生えている小型犬は、歯と歯の間に食べカスが詰まりやすく、虫歯のリスクが高いと考えられています。また、生まれつき歯の質が弱い、歯並びが悪いといった個体差も、虫歯のできやすさに関係するでしょう。

人から犬に虫歯はうつるの?

はい、人間の口内にいる虫歯菌は、愛犬への食べ物の口移しや、キスなどの過度なスキンシップによってうつる可能性があります。

愛情表現として行っている飼い主さんも多いかもしれませんが、こうした行為が愛犬を虫歯のリスクに晒してしまうことを知っておきましょう。愛犬の健康を守るためには、口移しなどを避けるのが賢明です。

もしスキンシップを大切にしたい場合は、飼い主さん自身の口腔ケアを徹底するとともに、愛犬の歯磨きの頻度を高めるなど、より一層のデンタルケアを心がけてください。

犬の虫歯、治療はどうするの?

犬の虫歯治療は、安全のため全身麻酔をかけて行われるのが一般的です。症状の進行度に応じて、主に3つの治療法が選択されます。

虫歯を削って詰める(修復治療)

初期の虫歯に対して行われる治療です。虫歯になった部分を専用の器具で削り取り、歯科用の詰め物(レジンなど)で修復します。

歯の神経を抜く(歯内治療)

歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経まで虫歯が進行している場合に行います。感染した神経や血管を取り除き、根管内を洗浄・消毒することで、歯を抜かずに温存できる可能性があります。

歯を抜く(抜歯)

抜歯は、文字通り歯を抜くことです。虫歯が重度に進行し、歯の大部分が破壊されていたり、歯の根元に膿が溜まったりして、歯を残すことが困難な場合の最終的な治療法となります。

犬の虫歯、治療費用は?

犬の虫歯治療にかかる費用は、動物病院や症状の重さによって大きく異なりますが、一般的に30,000円程度からが目安となることが多いようです。

処置別の費用相場としては、抜歯は1本あたり5,000円〜10,000円程、神経を抜く歯内治療や、銀歯などの修復物製作には50,000円以上かかることもあります。これらに加え、全身麻酔や術前検査の費用が別途必要です。

歯科治療は高額になりがちなので、万が一に備えてペット保険への加入を検討しておくと安心です。ただし、保険商品によっては歯科治療が補償対象外の場合もあるため、契約内容をしっかり確認しましょう。

犬の虫歯、対策は?

犬の虫歯は、一度なってしまうと治療が大変です。最も大切なのは、虫歯にならないように日頃から対策を行うことです。

毎日の歯磨きを習慣にする

家庭でできる最も効果的な虫歯対策は、歯ブラシを使った歯磨きです。理想は毎日1回ですが、難しい場合でも最低週に2、3回は口内の状態を確認しつつ歯磨きを行いましょう。

いきなり歯ブラシを口に入れると嫌がることが多いので、まずは口周りを触ることから始め、指にガーゼを巻いて歯を優しくこする、歯磨きペーストを舐めさせるなど、段階的に慣らしていくのが成功のコツです。飼い主が楽しんで行うことで、愛犬も歯磨きをポジティブな時間と捉えてくれるようになります。

デンタルケアグッズを活用する

歯磨きをどうしても嫌がる場合や、歯磨きができない日には、デンタルガムや歯磨き効果のあるおもちゃなどを活用するのも良いでしょう。遊びながら楽しくデンタルケアができます。

ただし、これらのグッズはあくまで歯磨きの補助的な役割です。歯と歯茎の境目(歯周ポケット)の歯垢をしっかり除去するには、歯ブラシによる物理的な清掃が最も効果的であることを忘れないでください。

定期的な歯科検診を受ける

家庭でのセルフケアと並行して、年に1〜2回は動物病院で歯科検診を受けることをおすすめします。獣医師に口内をチェックしてもらうことで、飼い主では気づきにくい初期の虫歯や歯石、歯周病を発見し、早期治療につなげることができます。

歯磨きの習慣で口内環境をキレイに

犬はもともと虫歯になりにくい口内環境ですが、現代の食生活では決して無関係な病気ではありません。そして、虫歯以上に多くの犬が罹患するのが「歯周病」です。

愛犬を虫歯や歯周病から守るために、毎日の歯磨きを習慣にし、口内環境を清潔に保ってあげましょう。健康な歯は、愛犬が毎日を楽しく、美味しく過ごすために不可欠なものです。

vet監修獣医師先生

口の中の病気は気づきにくいことが多いです。犬は虫歯以外に、歯周炎になる可能性がとても高いです。定期的に口の中のチェックと歯磨きを行うように心がけましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です