犬の咳・くしゃみが止まらない!これって病気?獣医師が解説する考えられる原因と対処法

愛犬が咳やくしゃみをしていると「もしかして風邪?」「苦しそうで心配…」と不安になりますよね。犬の咳やくしゃみは、一過性の生理現象であることもありますが、放置すると重症化する病気のサインかもしれません。特に症状が長引く、または他の症状もみられる場合は注意が必要です。

この記事では、犬の咳やくしゃみが止まらない時に考えられる原因と、それぞれの病気の特徴、対処法について獣医師監修のもと詳しく解説します。

子犬のコホコホ咳!『ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)』

病名 ケンネルコフ
症状 微熱、食欲不振、膿を含んだ鼻汁
治療 自然治癒
対策 ワクチンの定期接種

「コホコホ」「ケッケッ」という乾いた咳が特徴的なケンネルコフは、一般的に「犬の風邪」とも呼ばれる伝染性の強い呼吸器疾患です。特に、ペットショップやブリーダー施設から迎えたばかりの子犬や、免疫力がまだ低い子犬(生後6週~6ヶ月頃)に多く見られます。

ウイルスや細菌が原因で、犬が多く集まる場所(ドッグラン、ペットホテルなど)で感染しやすい病気です。咳のほか、「微熱」「食欲不振」「鼻水」といった症状が見られることもあります。

健康な成犬であれば1~2週間ほどで自然に回復することも多いですが、子犬や老犬は肺炎などを併発し重症化する危険性もあります。咳が続く場合は、自己判断せずに動物病院を受診しましょう。混合ワクチンの接種で予防できる病気のため、定期的なワクチン接種が最も有効な対策です。

犬の乾いたガーガー咳!『気管虚脱』

病名 気管虚脱
症状 呼吸困難、よだれ
治療 投薬、注射、外科手術
対策 肥満防止、室温湿度調節

「ガーガー」「グァーグァー」と、まるでアヒルの鳴き声のような乾いた咳をしている場合、気管虚脱の可能性があります。本来はC字型の軟骨である気管が、何らかの原因で扁平に潰れてしまい、空気の通り道が狭くなる病気です。

特に、トイプードル、ヨークシャーテリア、チワワ、ポメラニアンといった小型犬や、パグなどの短頭種に多く見られます。興奮時や運動後、水を飲んだ後、リードで首が強く引っ張られた時などに咳が出やすいのが特徴です。症状が進行すると、呼吸困難を起こし、舌や歯茎が青紫色になるチアノーゼが見られることもあります。

肥満は気管への圧迫を強めるため、体重管理が非常に重要です。また、首への負担を減らすために、首輪から胴輪(ハーネス)へ変更することをおすすめします。興奮や高温多湿も症状を悪化させるため、室温・湿度を適切に保ち、愛犬が落ち着いて過ごせる環境を整えてあげましょう。

犬が下を向いた咳をしたら!『フィラリア症』

病名 フィラリア症
症状 咳、息切れ、腹水、足のむくみ
治療 駆虫薬の投与、外科手術、うっ血性心不全に対する内科治療(投薬など)
対策 投薬、蚊取り線香

フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊が媒介する寄生虫(フィラリア)が心臓や肺動脈に寄生することで、深刻な循環器障害を引き起こす病気です。初期は無症状ですが、進行すると乾いた咳が出始め、重症化すると何かを吐き出すように下を向いて苦しそうに咳き込むようになります。

咳のほかにも、「運動を嫌がる」「疲れやすい」「呼吸が速い」「お腹に水が溜まる(腹水)」といった症状が見られます。フィラリア症は、命に関わる恐ろしい病気ですが、月に一度の予防薬の投与でほぼ100%防ぐことができます。

蚊の発生するシーズンはもちろん、近年は温暖化により年間を通した予防が推奨されています。必ず動物病院で処方された予防薬を定期的に投与し、愛犬をフィラリアの脅威から守りましょう。

犬の咳とともに疲れやすいなら!『心臓病』

病名 心臓病(慢性変性性房室弁疾患)
症状 散歩を嫌がる、食欲不振
治療方法 投薬、外科手術
対策 不明

高齢の小型犬に多く見られる咳の原因として、心臓病、特に「僧帽弁閉鎖不全症」が挙げられます。心臓にある僧帽弁という弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまうことで心臓に負担がかかる病気です。

初期症状はほとんどありませんが、進行すると肥大した心臓が気管を圧迫したり、肺に水が溜まる「肺水腫」を起こしたりして咳が出ます。「カハッ!」「ケッ!」と喉に何かが詰まったような、痰を吐き出すような湿った咳が特徴で、特に夜間から明け方、興奮時に出やすくなります。

咳以外にも「疲れやすくなった」「散歩に行きたがらない」といった変化は、加齢のせいではなく心臓病のサインかもしれません。明確な予防法はありませんが、定期的な健康診断(特に聴診や心臓の超音波検査)で早期発見することが非常に重要です。早期に治療を開始できれば、投薬によって病気の進行を緩やかにし、快適な生活を長く維持することが可能です。

犬のくしゃみが止まらないなら!『鼻炎』

病名 鼻炎
症状 鼻水、呼吸が荒くなる
治療 ウイルスや真菌を除去
対策 ワクチン接種(鼻炎の種類による)

犬のくしゃみが頻繁に出る、止まらないといった場合、鼻の粘膜に炎症が起きる「鼻炎」が考えられます。原因は、ウイルスや細菌の感染、ハウスダストや花粉などによるアレルギー、歯周病菌の波及、鼻腔内の異物や腫瘍など多岐にわたります。

くしゃみと同時に、水っぽい、あるいは黄色や緑色のネバネバした鼻水が出るのが特徴です。鼻詰まりでフガフガと苦しそうな呼吸をすることもあります。放置して慢性化すると「副鼻腔炎(蓄膿症)」に進行することもあるため、早めの対処が大切です。

また、発作的に「ブーブー!ズーズー!」と音を立てて鼻から息を吸い込む「逆くしゃみ」という症状もあります。これは病気ではなく、生理現象であることがほとんどですが、頻繁に起こる場合は他の病気が隠れている可能性もあるため、獣医師に相談しましょう。

犬のくしゃみ、咳、目やに、発熱を伴ったら!『犬ジステンパーウイルス感染症』

病名 犬ジステンパーウイルス感染症
症状 目やに、40℃前後の高熱、下痢や嘔吐
治療 点滴、抗生剤、抗けいれん剤投与
対策 数回のワクチン接種

くしゃみや咳に加えて、「大量の目やに」「40℃前後の高熱」「食欲不振」「嘔吐や下痢」といった複数の症状が見られる場合、命に関わる非常に危険な「犬ジステンパーウイルス感染症」を疑う必要があります。

このウイルスに対する特効薬はなく、治療は症状を和らげるための対症療法が中心となります。感染力が非常に強く、特に子犬やワクチン未接種の犬では致死率が極めて高い恐ろしい病気です。回復しても、けいれん発作などの重い神経症状が後遺症として残ることがあります。

この病気から愛犬を守る唯一にして最も確実な方法は、ワクチン接種です。子犬の頃に適切な回数の混合ワクチンを接種し、その後も定期的な追加接種を欠かさないようにしましょう。

犬のくしゃみや咳に異変を感じたら、動物病院で診察を

犬の咳やくしゃみは、様々な病気のサインです。飼い主さんが原因を特定するのは困難なため、「いつもと違うな」と感じたら、様子見をせずに動物病院を受診することが重要です。

受診の際には、スマートフォンなどで咳やくしゃみの様子を動画で撮影しておくと、獣医師が診断する上で非常に役立ちます。「いつから症状があるか」「どんな時に咳(くしゃみ)をするか」「どんな音か」「他に変わったことはないか」などをメモしておくと、診察がよりスムーズに進みます。

たかが咳、たかがくしゃみと軽視せず、愛犬の小さなサインを見逃さないであげてください。人間と同じく、どんな病気も早期発見・早期治療が愛犬の健康を守る鍵となります。

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