【獣医師監修】犬の妊娠、知っておきたい期間・兆候・症状|食事や交配の注意点

犬の妊娠期間は、交配日から数えて約63日(およそ9週間)です。この期間は、チワワのような小型犬からゴールデンレトリバーのような大型犬まで、犬の体のサイズに関わらずほとんど変わりません。しかし、人間の妊娠とは異なる点も多いため、飼い主さんが正しい知識を持って愛犬の妊娠・出産をサポートすることが非常に大切です。

この記事では、犬の妊娠期間を「交配」「初期」「中期」「後期」の4つのフェーズに分け、それぞれの時期における愛犬の変化、注意点、そして飼い主さんがすべきことを具体的に解説します。

犬の交配、タイミング、年齢、パートナーは?

愛犬の妊娠を考える上で、最初のステップとなるのが交配です。成功させるためには、適切なタイミング、年齢、そしてパートナー選びが重要になります。

交配の最適なタイミング

犬の交配に最も適したタイミングは、排卵後の4〜5日間です。一般的に、メス犬は生理(ヒート)による出血が始まってから9日目頃に排卵期を迎えます。この時期を見極めることが、妊娠の確率を高める鍵となります。

交配に適した年齢

メス犬の交配は、心身ともに成熟した1歳半〜6歳頃までが理想的とされています。

  • 若すぎる場合:母犬自身の成長に必要な栄養が胎児に奪われてしまい、母子ともに健康リスクが高まります。
  • 高齢の場合(6歳以上):筋力の低下などから母体への負担が大きくなり、難産になりやすい傾向があります。

パートナー選びの注意点

交配相手となるオス犬は、メス犬よりも体が小さい、または同等の体格の犬を選ぶことが推奨されます。体の大きなオス犬との交配では、お腹の赤ちゃんも大きくなる可能性が高く、出産時に母犬の負担が増え、難産のリスクを高めるためです。

犬の妊娠初期期間、兆候や注意点は?

交配後から約21日間(3週間)が「妊娠初期」にあたります。この時期は、受精卵が子宮内膜に着床するための非常にデリケートな期間です。交配が成功したかどうかに関わらず、妊娠の可能性を考えて慎重に過ごしましょう。

妊娠初期に見られる兆候

妊娠初期には、人間でいう「つわり」に似た症状が見られることがあります。これらの兆候は個体差が大きく、全く見られない子もいます。

  • 食欲がなくなる、またはムラが出る
  • 嘔吐する
  • 普段より眠そうにしている

これらの症状は1週間ほどで自然に落ち着くことがほとんどですが、続く場合は動物病院に相談してください。

妊娠初期の注意点

着床を妨げないよう、母体にストレスを与えない生活を心がけましょう。

  • 過度な運動は避ける:ドッグランでの激しい運動やジャンプなどは控え、散歩もゆったりと行いましょう。
  • シャンプーは控える:体力の消耗やストレスを避けるため、この時期のシャンプーは避けるのが賢明です。

犬の妊娠中期、食事の内容がポイント!

妊娠初期を終えた次の約21日間(妊娠4週目〜6週目)は「妊娠中期」です。胎盤が完成し、いわゆる「安定期」に入るため、愛犬の体調も落ち着いてきます。

食事内容の切り替えが重要

妊娠中期は、お腹の胎児が急速に成長を始める時期です。そのため、普段のフードから、より高カロリーで栄養価の高い「妊娠・授乳期用」のフードに切り替える必要があります。胃腸への負担を避けるため、一度に全てを切り替えるのではなく、今までのフードに少しずつ混ぜながら、1週間ほどかけて徐々に慣らしていきましょう。

適度な運動とシャンプー

安定期に入るため、適度な運動は気分転換や体力維持に繋がります。ただし、激しい運動は避けましょう。また、汚れている場合は、この時期に一度シャンプーをして体を清潔に保ってあげるのがおすすめです。

なお、妊娠の確定診断は、交配後約3週間後から動物病院のエコー検査で可能です。胎嚢(たいのう)や胎児の心拍が確認でき、妊娠していることがわかります。

犬の妊娠後期、食事の量がポイント!

妊娠中期を終えた次の約21日間(妊娠7週目〜出産まで)は「妊娠後期」にあたり、出産に向けた最終準備期間です。お腹が目立って大きくなり、母犬の体に様々な変化が現れます。

食事の与え方の工夫

食欲は旺盛になりますが、大きくなった子宮が胃を圧迫するため、一度にたくさんの量を食べられなくなることがあります。そのため、1日の食事量を4〜5回に分けるなど、少量頻回の食事スタイルに切り替えてあげましょう。

生活環境と出産前の検査

お腹が大きくなることで動きが不自由になるため、階段の上り下りや段差のある場所は転落の危険があります。スロープを設置するか、危険な場所には近づけないように工夫してください。

出産予定日の4〜5日前になったら、動物病院でレントゲン検査を受けましょう。レントゲンでは、胎児の正確な数や体の大きさ、骨盤を通れるかなどを確認でき、安全な出産計画を立てる上で非常に重要です。生まれてくる子犬の数は、小型犬で1〜3匹、大型犬では5匹以上になることもあります。

犬が妊娠したらすぐに動物病院へ

妊娠後期を無事に終えれば、いよいよ出産です。愛犬の妊娠がわかった時点から、出産、そして産後のケアまで、かかりつけの動物病院と密に連携を取ることが、母子ともに健康な出産を迎えるための最も大切なことです。

出産間近のサインと準備

出産が近づくと、母犬の体に変化が現れます。特に重要なサインが「体温の低下」です。普段の平熱から1度ほど体温が下がる現象が見られるため、出産予定日の数日前からは朝晩2回、体温を測る習慣をつけましょう。

自宅出産でも専門家のアドバイスは必須

帝王切開などを除き、犬の出産は自宅で行うのが一般的です。しかし、自己判断で進めるのは非常に危険です。必ず事前に動物病院へ相談し、緊急時の対応や準備すべきものについて詳しく指示を仰ぎ、万全の体制でその日を迎えてくださいね。

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