【獣医師監修】犬の前立腺肥大とは?症状・原因から治療法・手術費用まで解説

「最近、愛犬のおしっこの出が悪い…」「便が細くなった気がする…」など、特に去勢手術をしていないシニア犬(老犬)に気になる変化はありませんか?その症状、もしかしたら犬の『前立腺肥大』が原因かもしれません。

前立腺はオス犬だけにある臓器で、加齢に伴うホルモンバランスの変化によって肥大し、排尿や排便に影響を及ぼすことがあります。この記事では、犬の前立腺肥大について、その原因や具体的な症状、動物病院で行われる検査・治療法、そして最も効果的な予防・対処法を詳しく解説します。

老犬がなりやすい病気『前立腺肥大』の原因は?

犬の前立腺肥大の主な原因は、加齢による男性ホルモン(テストステロン)と女性ホルモン(エストロゲン)のバランスの乱れです。精巣から分泌されるホルモンの影響を直接受けるため、去勢手術をしていないオス犬に特有の病気といえます。

特にホルモンバランスが崩れやすくなる7歳から9歳の未去勢のオス犬で発症が多くみられます。

犬の前立腺肥大、症状は?

前立腺肥大は、初期段階ではほとんど症状がありません。しかし、前立腺が徐々に大きくなるにつれて、周囲の臓器を圧迫し、以下のような様々な症状を引き起こします。

  • 排便の異常:しきりにいきむ、便が出にくい、便がリボンのように細くなる・平たくなる、便秘など。犬の場合、排尿障害より先に排便の異常が多くみられます。
  • 排尿の異常:尿が出にくい、頻繁にトイレに行く、血尿、尿がポタポタ垂れるなど。
  • その他の症状:腹痛、歩き方の変化(後肢を突っ張るように歩く)、会陰ヘルニア(いきみすぎが原因で肛門横の筋肉が裂ける病気)など。

排便時にいきむことが増え、会陰部の筋肉が衰えている老犬では、二次的に「会陰ヘルニア」を引き起こすケースもあるため注意が必要です。

犬の前立腺肥大、検査方法は?

犬が前立腺肥大の疑われる症状を見せた場合、動物病院では以下のような検査を行い、診断します。

  • 直腸検査:肛門から指を入れ、直腸越しに前立腺の大きさや形、硬さなどを直接触って確認します。
  • 超音波(エコー)検査:前立腺の大きさや内部の状態を画像で詳しく観察します。最も診断に有効な検査の一つです。
  • レントゲン検査:前立腺の大きさや位置、骨盤への影響などを確認します。
  • 尿検査:血尿の有無や、似た症状を示す膀胱炎などの他の病気との鑑別のために行います。

必要に応じて、尿道への圧迫の程度を調べるための造影検査が行われることもあります。

犬の前立腺肥大、治療方法は?

犬の前立腺肥大の治療法には、外科治療と内科治療の2つがありますが、根本的な治療として去勢手術(外科治療)が第一に選択されます。

【外科治療:去勢手術】
原因である男性ホルモンの供給源である精巣を摘出する方法です。去勢手術を行うと、数週間で前立腺は自然に小さくなり、排尿や排便の困難といった症状も改善されます。再発の心配がない最も効果的な治療法です。

【内科治療:ホルモン剤の投与】
高齢や他の病気によって麻酔のリスクが高く、去勢手術が難しい場合に選択されます。男性ホルモンの働きを抑える薬を投与することで、前立腺を小さくします。ただし、投薬を中止すると再び肥大してしまうため、継続的な治療が必要になる場合があります。

犬の前立腺肥大、対処法は?

犬の前立腺肥大における最も確実な対処法は、病気になる前の「予防」です。この病気は去勢手術済みの犬では発症しないため、繁殖の予定がなければ、若いうちに去勢手術を受けることが最善の予防策となります。

去勢手術を行う適切なタイミングは、体が成熟する前の生後6ヶ月前後が一般的とされています。

vet所属獣医師先生

去勢手術では前立腺肥大をはじめとした、精巣腫瘍や会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫を予防することが可能です。

オス犬の去勢手術、費用は?

オス犬の去勢手術にかかる費用は、一般的に20,000円~30,000円程度が相場です。ただし、この費用は犬の体重や年齢、病院の設備、術前検査の内容などによって変動します。

体の構造がより複雑なメス犬の避妊手術と比較すると、オス犬の去勢手術の費用は安価な傾向にあります。

犬の去勢手術、生後6ヶ月前後で判断を

オス犬にとって去勢手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、今回解説した前立腺肥大や、命に関わることもある精巣腫瘍といった病気を予防できるという大きなメリットがあります。

手術は犬が若く健康なうちに行う方が、体への負担も少なく済みます。愛犬に子孫を残す予定がないのであれば、多くの獣医師が推奨する生後6ヶ月頃を目安に、去勢手術を検討してあげるのがおすすめです。

正しい知識を持って判断し、愛犬との暮らしがより健やかで幸せなものとなりますように願っています。

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