【獣医師監修】犬に寄生するダニの種類と症状|マダニ等の駆除・予防薬と対策まとめ

愛犬が体を痒がっていたり、皮膚にフケやできものが見られたりすることはありませんか?もしかしたら、目には見えないほど小さなダニが原因かもしれません。

犬にダニが寄生すると、激しいかゆみや皮膚炎だけでなく、命に関わる病気を引き起こす可能性もあります。しかし、ダニの種類によって症状や対策はさまざまです。

この記事では、特に犬への寄生が多く見られる代表的なダニ5種類について、それぞれの症状、感染原因、そして動物病院での治療法や家庭でできる予防策を分かりやすく解説します。

まず知っておきたい!犬に寄生する代表的なダニ5種類

犬の健康を脅かす可能性のあるダニは数多く存在しますが、特に注意が必要なのは以下の5種類です。それぞれの特徴を簡単に見ていきましょう。

特に注意したい犬のダニ
  • マダニ:肉眼でも確認できる大型のダニ。重篤な感染症を媒介する危険性がある。
  • ニキビダニ(毛包虫):皮膚の毛穴に常在するが、異常繁殖すると皮膚炎を起こす。
  • ヒゼンダニ:皮膚にトンネルを掘って寄生し、激しいかゆみを引き起こす「疥癬」の原因。
  • ツメダニ:大量のフケが特徴で、「歩くフケ」とも呼ばれる。
  • 耳ダニ(ミミヒゼンダニ):耳の中に寄生し、黒い耳垢と激しいかゆみが特徴。

ここからは、それぞれのダニについて、症状や対策を詳しく解説していきます。

1. マダニ|命の危険も。感染症を媒介する最も危険なダニ

草むらなどに潜み、犬の散歩中に寄生することが多いマダニは、犬だけでなく人間にも被害を及ぼす危険な外部寄生虫です。

主な症状

マダニの寄生による症状は、吸血による直接的なものと、病原体を媒介することによる二次的なものがあります。

  • 皮膚の炎症・かゆみ:吸血された箇所に炎症が起き、かゆみやアレルギー性皮膚炎を引き起こします。
  • 貧血:多数のマダニに寄生されると、大量に吸血されて貧血を起こすことがあります。特に子犬や老犬では注意が必要です。
  • マダニ媒介性の感染症:発熱、貧血、黄疸などを示す「バベシア症」や、神経症状や関節炎を引き起こす「ライム病」など、命に関わる病気を媒介します。

マダニの取り方と対処法

絶対に自分で無理に取らないでください。マダニを無理に引き抜こうとすると、口器が皮膚に残り、そこから化膿したり、病原体を犬の体内に逆流させてしまったりする危険性があります。マダニを見つけたら、すぐに動物病院で安全に除去してもらいましょう。

予防と対策

  • 散歩コースの工夫:マダニが多く潜む草むらや茂みへの立ち入りは、できるだけ避けましょう。
  • 散歩後のチェック:帰宅後は、特に顔周り、耳、足の指の間、お腹などを念入りにチェックしてください。
  • 定期的な駆除薬の投与:動物病院で処方されるスポットタイプや経口タイプの駆除薬を定期的に使用することが、最も効果的な予防法です。

2. ニキビダニ(毛包虫)|免疫力低下で発症する皮膚の常在ダニ

ニキビダニ(別名:アカラス)は、ほとんどの犬の毛穴に常在しており、通常は無害です。しかし、免疫力が低下した際に異常増殖し、「毛包虫症(もうほうちゅうしょう)」と呼ばれる皮膚病を引き起こします。

主な症状

主に目や口の周り、前足の指先などから症状が出始めます。

  • 脱毛:局所的に毛が薄くなり、皮膚が赤く見えるようになります。
  • フケ・発疹:皮膚がカサカサしたり、ニキビのような膿疱(のうほう)ができたりします。
  • 重症化:細菌の二次感染が起こると、かゆみが激しくなり、皮膚がただれてベタベタします。放置すると敗血症などで命を落とす危険もあります。

原因

子犬や老犬、持病(甲状腺機能低下症など)によって免疫力が低下している犬で発症しやすいとされています。遺伝的素因も関与すると考えられています。

治療と対策

  • 治療法:殺ダニ剤の投与や薬用シャンプーでの薬浴、二次感染がある場合は抗生剤の投与などが行われます。治療は数ヶ月から1年以上かかることもあります。
  • 対策:根本的な原因が免疫力の低下にあるため、日頃から栄養バランスの取れた食事やストレスのない生活を心がけ、愛犬の健康維持に努めることが重要です。

※ニキビダニは犬種特有のダニであり、他の犬や人、猫にうつることはありません。

3. ヒゼンダニ|激しいかゆみを引き起こす「疥癬(かいせん)」

ヒゼンダニは、犬の皮膚の角質層にトンネルを掘って寄生する非常に小さなダニです。このダニが引き起こす皮膚病を「疥癬(かいせん)」と呼び、極めて強いかゆみが特徴です。

主な症状

  • 激しいかゆみ:昼夜を問わず体を掻きむしり、眠れなくなることもあります。
  • 皮膚の異常:耳のふち、肘、お腹など、毛の薄い部分に赤い発疹やフケ、厚いかさぶた(痂皮)ができます。

原因と感染経路

疥癬にかかっている他の動物との直接的な接触が主な感染経路です。感染力が非常に強いため、多頭飼育の場合は特に注意が必要です。

治療と対策

  • 治療法:駆除薬の投与(注射やスポット剤)が中心となります。かゆみや炎症を抑えるために、内服薬や薬浴を併用することもあります。
  • 対策:感染動物との接触を避けることが第一です。また、ヒゼンダニは動物の体から離れても数日間は生存できるため、犬が使っているベッドやブラシ、おもちゃなども熱湯消毒や洗浄を行い、環境を清潔に保つことが再発防止につながります。

※注意:犬の疥癬は人にもうつる「人獣共通感染症」です。感染した犬に触れた後、腕などに赤い発疹やかゆみが出ることがあります。愛犬の治療と共に、飼い主様も注意が必要です。

4. ツメダニ|「歩くフケ」と呼ばれるフケが特徴

その名の通り、体に大きな爪を持つダニです。皮膚の表面に寄生し、体液を吸います。大量のフケが発生し、そのフケが動いているように見えることから「歩くフケ(Walking Dandruff)」とも呼ばれます。

主な症状

  • 大量のフケ:特に背中からお尻にかけて、乾いた大きなフケが目立ちます。
  • かゆみ:軽度から中程度のかゆみを伴います。

子犬や免疫力の低い犬で症状が重くなりやすい傾向があります。

原因と感染経路

すでにツメダニに感染している動物や、その抜け毛、フケなどに接触することで感染します。

治療と対策

  • 治療法:ダニ駆除効果のあるスポット剤やシャンプー、内服薬などで治療します。
  • 対策:感染動物との接触を避け、散歩後のブラッシングを習慣にしましょう。ツメダニは犬の体から離れても10日ほど生きることがあるため、生活環境の清掃も重要です。

5. 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)|黒い耳垢と耳の強いかゆみ

正式名称を「ミミヒゼンダニ」といい、主に犬の耳の穴(外耳道)に寄生するダニです。非常に感染力が強く、特に子犬に多く見られます。

主な症状

以下のような行動が見られたら、耳ダニの感染を疑いましょう。

  • 耳を激しく痒がる:後ろ足でしきりに耳を掻いたり、頭を振ったり、家具に耳をこすりつけたりします。
  • 黒く乾燥した耳垢:コーヒーの出がらしや黒い土のような、カサカサした耳垢が大量に出ます。

放置すると外耳炎が悪化し、中耳炎や内耳炎に進行する恐れがあります。

原因と感染経路

耳ダニに感染している動物との接触によって感染します。母犬から子犬へ、あるいは子犬同士でうつることが多いです。

治療と対策

  • 治療法:まず動物病院で耳の中を丁寧に洗浄してもらい、耳垢やダニを取り除きます。その後、点耳薬やスポットタイプの駆除薬を獣医師の指示通りに投与します。
  • 対策:感染動物との接触を避けることが基本です。同居しているペットがいる場合は、症状がなくても一緒に検査・治療を行う必要があります。また、犬が使っている寝床やおもちゃも洗濯・消毒し、環境中に潜むダニの卵を一掃しましょう。

愛犬をダニから守るために大切なこと

犬に寄生するダニは、種類によって症状も対策も異なります。しかし、どのダニにも共通して言えるのは「早期発見・早期治療」「日頃の予防」が何よりも重要だということです。

  • 日頃のケアを習慣に:毎日のブラッシングや定期的なシャンプーで、皮膚や被毛の状態をチェックしましょう。
  • 予防薬を正しく使う:動物病院で処方される駆除薬は、マダニだけでなく、ヒゼンダニや耳ダニにも効果があるものが多いです。獣医師に相談し、愛犬に合った予防薬を定期的に投与しましょう。
  • おかしいと感じたらすぐに動物病院へ:体を痒がっている、フケが増えた、耳を気にしているなど、少しでも気になる様子が見られたら、自己判断せずに動物病院を受診してください。

正しい知識を持って対策を行うことで、厄介なダニから大切な愛犬の健康を守りましょう。

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