注意

本記事(article)はCenter SA. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2007.からの引用が非常に多いため、引用元がこれの場合は引用を省略する。

はじめに

肝酵素とは肝臓の細胞に多く含まれる酵素であり、獣医療においては以下の4つが主に用いられている。

  • ALT;alanine aminotransferase = GOT ;glutamate-oxaloacetate aminotransferase
  • AST:aspartate aminotransferase = GPT; glutamate-pyruvate amino-transferase
  • ALP:alkaline phosphatase = ALKP, AP
  • GGT;gamma-glutamyl transferase = γ-GPT

ALTとASTは肝細胞系酵素と呼ばれ、細胞質に存在し、組織学的には主に類洞側に存在する。

ALPとGGTは胆道系酵素と呼ばれ、細胞膜に存在し、組織学的には毛細胆管側に存在する。

GGTは胆管上皮にも存在する。

通常は細胞のターンオーバーに伴い血中に放出され、肝臓に戻ってきて分解されるため比較的一定量(≒参照値)が血中に維持されている。

肝酵素上昇が起こる病態生理学的メカニズムは以下の4つである。

  • 可逆的または非可逆的な細胞膜の傷害
  • 細胞内での合成量の増加
  • クリアランスの減少;血中からの排泄不全
  • マクロエンザイム形成による半減期の延長(獣医療における報告はない)

参照値上限の5倍以上の肝酵素上昇では肝胆疾患が存在する可能性が高い。

肝酵素は肝疾患の同定、分類、モニタリングに有用であるが、肝機能を推定することはできない。

肝機能を推定するためには肝機能の指標となる血液検査項目を参照ください。

また、肝酵素の血中濃度は正常でもpH、温度、電解質濃度、蛋白質濃度、イオン強度、補酵素濃度、酵素阻害物質に影響され酵素活性が低下することがある。

肝酵素上昇の鑑別

血液検査で肝酵素を読むための第一歩として、肝酵素上昇≠肝胆疾患と言うことを常に意識しておくべきである。

肝臓外の原因による肝酵素上昇の鑑別(Comazzi S. J Small Anim Pract. 2004.等から改変)

  • 消化器疾患:下痢、便秘、胃拡張捻転、膵炎、腸炎
  • 心臓血管系:低血圧、肝臓のうっ血または虚血、大静脈症候群(フィラリア症)
  • 内分泌疾患:副腎疾患(コルチゾール、性ステロイド)、糖尿病、甲状腺機能亢進症/低下症、上皮小体機能亢進症
  • 筋損傷:激しい運動、外傷、ミオパシー、悪性高熱症、てんかん重積、全身性炎症反応症候群
  • 骨疾患:成長期、代謝性骨疾患(上皮小体機能亢進症など)、骨髄炎、骨肉腫
  • 感染症:膿瘍、リケッチア症、腎盂腎炎、子宮蓄膿症、前立腺炎、敗血症、ウイルス疾患(パルボウイルス、コロナウイルス、猫風邪)
  • その他:重度の貧血、犬の乳腺腫瘍、その他の腫瘍
  • 薬剤性:グルココルチコイド、フェノバルビタール
  • 測定異常:溶血、高脂血症

肝細胞系酵素

栄養生化学的にはALTとASTはアミノ酸と解糖系の間でアミノ基転移反応を行ための細胞内酵素である。

ビタミンB6の活性代謝物であるピリドキサール-5′-リン酸を補酵素として必要とする。

ビタミンB6欠乏症、セファロスポリン、シクロスポリン、イソニアジドによりALTとASTの酵素活性は落ちるため、血液検査で低値を示す(Pincus MR. Henry’s clinical diagnosis and management by laboratory methods. ed 22. 2011.)。

ALTとASTは類洞で肝細胞のエンドサイトーシスによって血中から除去される。

そのため、肝機能低下や、類洞の血液潅流量の低下(虚血や門脈血管異常)の際にも血中濃度が上昇する。

肝細胞に障害が起こると24-48時間以内にALTとASTの上昇が起こる。2-3日で減少へ転じ、2-3週間でベースラインへと戻る。

半減期が長いためALTの方がASTよりも数値の変動率が大きい。また、肝臓への特異性はALTの方が優れている。

傷害された細胞数とALTとASTには相関関係が認められるが、予後とは相関しない。

増減を繰り返す場合、慢性炎症性肝疾患が疑われる(Meerten NM. Vet Pathol. 2005.、Shih JL. J Vet Intern Med. 2007.)。

慢性的な肝臓病や重度の肝毒性でALTとASTが減少傾向にある場合、病態が改善傾向である場合と、病態の進行により残りの肝細胞数が減少してきている場合がある。

急性壊死性肝炎の鑑別(Cooper J. Comp Cont Ed Small Anim Pract. 2006.、Center SA. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2007.

  • 薬剤性肝障害:アセトアミノフェン、アミオダロン、アナボリックステロイド、カリプロフェン、シクロスポリン、ジアゼパム、ジエチルカルバマジン/オキシベンダゾール、フルオロキノロン系、グリセオフルビン、ハロタン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、メベンダゾール、メチマゾール、メトキシフルラン、ミボレロン、ペニローヤルオイル、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、スルホンアミド系、テトラサイクリン系(Bunch SE. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1993.)
  • 中毒物質:重金属中毒、テングダケ中毒、ソテツ中毒、キシリトール中毒
  • 感染症:レプトスピラ症(Rissi DR. J Vet Diagn Invest. 2014.)、トキソプラズマ症
  • その他:銅蓄積性肝炎(Noaker LJ. J Am Vet Med Assoc. 1999.)、自己免疫性肝炎
  • ミクロシスチンやアフラトキシンB1は急性壊死性肝炎の原因となるが、ALTとASTの生合成を阻害するため低値を示す(Dereszynski DM. J Am Vet Med Assoc. 2008.)。

ALTとAST低値の鑑別

  • ビタミンB6欠乏症
  • 薬剤性:セファロスポリン、シクロスポリン、イソニアジド
  • その他:pH、温度、電解質濃度、蛋白質濃度、イオン強度の異常

ALT

栄養生化学的には特にグルコース-アラニン回路で働く酵素である。

ALTは心臓、腎臓、骨格筋にも存在する。

半減期は犬で48-60時間、猫で推定6時間である(Zinkl JG. Res Vet Sci. 1971.、Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. 2014.)。

傷害を受けて24-48時間までに明らかな上昇が認められ、最初の5日間が最高値となる。

上昇したALTが半減期に合わせて数日で低下した場合は予後良好である。

参照範囲上限の10倍までの上昇であれば薬剤性(犬:抗てんかん薬、グルココルチコイド)、空胞性肝障害、門脈血管異常、うっ血性肝障害などが考えられる。

犬では肝臓壊死や肝不全に対する感度は80-100%であるが、肝硬変、空胞性肝障害、門脈血管異常、うっ血性肝障害に対する感度は50-80%にとどまる。

猫では、肝外胆管閉塞、胆管炎、胆管肝炎に対する感度は80-100%である。

一方、肝障害に対する特異度は犬でも猫でも25%未満である。

壊死性肝炎の症例では参照範囲上限の10倍を超える値を示す傾向にある。

ALTはグルココルチコイドにより10倍を超える誘導はされない(Hadley SP. Enzyme. 1990.)。

肝臓の修復過程ではALTは減少傾向となるがその際はALPの上昇が認められる可能性がある。

余談だが馬と牛では肝障害によるALTの有用性は低いため、ASTを用いる。

AST

栄養生化学的には特にリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルで働く酵素である。

高濃度で存在するのは骨格筋、心筋、腎臓であるが、脳、小腸、脾臓、肝臓、赤血球にも存在する。

骨格筋損傷を起源とする場合、CKの上昇を伴う場合が多い。しかし、CKの半減期は短いため、慢性的なミオパシーではCKの上昇を伴わないASTの上昇が認められる場合もある。

ASTはALTよりも数値の変動率が低いため、AST優位の肝酵素上昇に気が付くことは難しい。

ALTとCKの上昇を伴わないASTの上昇では赤血球を起源としている可能性が高い。

犬では80%が細胞質のAST、20%がミトコンドリア内のASTであるが、重要なのは細胞質のASTである(Rej R. Clin Lab Med. 1989.)。

半減期は犬で22時間、猫で77分である(Dossin O. J Vet Intern Med. 2005.、Nilkumhang P. J Small Anim Pract. 1979.)。

ALTよりも半減期が短いため、活動的な肝傷害の検出には優れる。

傷害を受けて最初の3日間が最高値となる。

肝細胞由来のASTが上昇している場合ALTも同様に上昇するが、ASTは分子量が小さいため血中への移行が早く、また半減期が短いため血中からの消失も早い(Rej R. Clin Lab Med. 1989.)。

肝細胞障害によるAST上昇は犬よりも猫で顕著である。

ALP

ALPは細胞膜などに存在する糖タンパクの一種であり、至適pHがアルカリ性であるリン酸モノエステルの加水分解酵素である。基質特異性は低く、生体内での主要な役割もはっきりと解明されてはいない。

犬と猫では、腎臓皮質、胎盤、腸粘膜、骨、肝臓に存在する。

ALPには複数のアイソフォームが知られており、臨床的に血液検査に影響するALPは犬では肝臓型(L-ALP)、グルココルチコイド誘導型(C-ALP)、骨型(B-ALP)の3種類、猫ではL-ALP、B-ALPの2種類である。

イヌ科の動物では消化管型(I-ALP)の特徴的なアイソフォームとしてC-ALPが存在するが、その他の動物には薬剤や内因性グルココルチコイドによる誘導型ALPは存在しない。

健常犬におけるC-ALPの割合はALP全体の1-30%である(Syakalima M. J Vet Med Sci. 1997.)。

犬のL-ALPとC-ALPの半減期は約70時間であるが、腎臓皮質、胎盤、腸粘膜のALPは6分以下である。

猫のL-ALPの半減期は6時間、I-ALPは2分以下である。

腸、腎、胎盤のアイソザイム(I-ALP)は半減期が短いため臨床的には無視できる。

ALPが上昇する場合は肝臓での合成量が亢進している場合と、細胞膜の破壊による流出が考えられる。

ALPを低下させる原因としては線虫駆虫薬であるレバミゾールがある。

レバミゾールはL-ALPとB-ALPの活性を抑制するが、C-ALPの活性は抑制しない(Syakalima M. Jpn J Vet Res. 1998.)。

骨型ALP(B-ALP)

B-ALPは成長期の骨や骨疾患、上皮小体機能亢進症の際に上昇する。

仔犬仔猫では骨の成長に伴い4-5倍の上昇が7ヶ月齢頃まで認められる可能性がある(Fernandez NJ. Vet Clin Pathol. 2007.)。

猫の甲状腺機能亢進症で上昇しているALPもB-ALP(L-ALPも上昇)である(Archer FJ. Can Vet J. 1996.)。

グルココルチコイド誘導型ALP(C-ALP)

犬には肝臓にL-ALPとC-ALPの2種類が存在する。

外因性グルココルチコイド

プレドニゾロンの投薬により最初に血清濃度が上昇するのはL-ALPであるが、その誘導は10日後にはプラトーに達する(Wiedmeyer CE. Am J Vet Res. 2002.)。

C-ALPが誘導されるまでには10日間かかり、投薬を止めるまで誘導は持続する(Wiedmeyer CE. Am J Vet Res. 2002.)。

C-ALPが通常の値に戻るには2-4週間かかる(Meyer DJ. 1981. J Am Anim Hosp Assoc.、 Solter PF. Am J Vet Res. 1994.)。

C-ALPの産生量は用量依存性かつ持続期間依存性であり、参照値上限の20倍以上となることもある(Solter PF. Am J Vet Res. 1994.)。

また、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドンなどの抗てんかん薬によってもC-ALPは上昇するが(Gaskill CL. Vet Pathol. 2004.)、肝細胞内での合成量は亢進していない(Gaskill CL. Vet Pathol. 2005.)。

プレドニゾロンによって上昇するL-ALPは肝細胞内での産生が亢進している(Wiedmeyer CE. 2002. Am J Vet Res.)。

内因性グルココルチコイド

C-ALPは炎症や慢性疾患、ストレスなどによる内因性グルココルチコイドによっても上昇する。

原発性肝疾患においてもC-ALPは上昇するため、ALPをL-ALPとC-ALPに分けて測定してもあまり鑑別には役立たない。

犬ではクッシング症候群に対するALP上昇の感度は83-100%と高いが、特異度は低い(Solter PF. J Am Vet Med Assoc. 1993.)。すなわち、ALPは犬のクッシング症候群のスクリーニング検査として非常に有効である。

犬の肝臓型ALP(L-ALP)

犬の肝胆疾患に対する感度は80%、特異度は51%である(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. Saunders)。

GGTの上昇を伴う場合は特異度が高くなる(Center SA. J Am Vet Med Assoc. 1992.)。

犬で参照値の100倍を上回る上昇が見られた場合は、胆汁うっ滞、大きな肝細胞癌や胆管癌、グルココルチコイド(副腎皮質機能亢進症など)が原因である。

副腎疾患(グルココルチコイドや性ステロイドの過剰)や特発性(スコッチテリア等)の中程度から重度のALP上昇を伴う空胞性肝傷害はグリコーゲンの蓄積による生理的変化と長い間考えられてきたが、現在は過剰なグリコーゲン蓄積は病的変化となりうると考えられている(Sepesy LM. J Am Vet Med Assoc. 2006.)。

猫の肝臓型ALP(L-ALP)

猫では半減期が短いこと、グルココルチコイド誘導型が存在しないこと、肝細胞のALPが元々少ないことより、肝胆疾患に対する感度は50%、特異度は93%である(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. Saunders)。

猫では胆汁うっ滞に対するALP上昇の感度はビリルビンよりも低い。

猫の肝リピドーシスではALP/GGT比が有意に上昇するが、その他の肝胆道疾患ではそうはならない(Center SA. 1986. J Am Vet Med Assoc.)。

そのため、猫のALP上昇の鑑別は肝リピドーシスの鑑別と一致する。

猫のL-ALP上昇の鑑別(Center SA. J Vet Intern Med. 1993.、Akol KG. J Vet Intern Med. 1993.、Bruner JM. J Am Vet Med Assoc. 1997.)

  • 原発性肝リピドーシス
  • 続発性肝リピドーシス
    • 甲状腺機能亢進症
    • 糖尿病
    • 膵炎
    • 胆管炎
    • 難治性腸炎
    • 腫瘍

特発性ALP上昇

スコッチテリアでは特に6歳以上ではALPが高い(Nestor DD. J Am Vet Med Assoc. 2006.)

シベリアンハスキーの家族性高リン血症に伴うALP上昇(Lawler DF. 1996. Am J Vet Res.)

GGT

生体内におけるGGTは抗酸化物質であるグルタチオンのγ-グルタミル結合分解酵素である。

GGTは腎臓近位尿細管上皮、膵臓腺房細胞、胆管上皮細胞、肝細胞(zone1/門脈付近)腸、脾臓、心臓、肺、骨格筋、赤血球などの細胞膜に発現している。

犬では近位尿細管上皮と膵臓腺房細胞で最も多く発現しているが、これらの細胞のGGTは血中よりも管腔中へ排泄されてしまうため、血液検査に影響は出ない。

犬猫共に半減期に関する明確な報告は存在しない。

犬では肝胆疾患に対する感度は50%と低いが、特異度は87%でありALPよりも高い。ALP上昇を伴う場合の特異度94%である(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. 2014.)。

猫では肝胆疾患に対する感度は55-86%でありALPよりも高く、特に胆管や膵臓の壊死性炎症で高値を示す。特異度は67%である(Center SA. J Am Vet Med Assoc. 1986.)。

犬猫共に肝臓葉zone2-3の傷害ではGGTは軽度にしか上昇しない。

肝外胆管閉塞では特に猫よりも犬で中程度から重度の上昇を見せる。

猫の肝リピドーシスでは、原疾患に壊死性炎症性肝胆道疾患を持つ場合はGGTの有意な上昇を、そうでない場合はALPの有意な上昇を見せる。

ピロリリジンアルカロイド(植物毒)、Sporidesmin(マイコトキシンの一種)、アルサイククローバーなどによる胆管上皮過形成ではGGTが高値を示す。

肝胆疾患以外によるGGT上昇

犬ではグルココルチコイドによりGGTを含むミクロソーム系酵素の産生が亢進するが、猫では起こらない。

犬では初乳により3日間重度の上昇を見せるが、猫では認められない。

GGTは酸化ストレスによっても上昇する。

食事反応性肝酵素上昇?!

経験豊富な獣医師達の間では生肉やジャーキー、特定のフードなどに反応して肝酵素(特にALT)が上昇することが知られている。

これらは以下の原因が考えられる。

  • 食品の汚染:保存状態の悪いフードやおやつ、人間が生で食べない生肉、ジビエの生食
  • 防腐剤などの添加物:無添加も保存状態の悪化を招く
  • 加熱処理で生じる化合物(ヘテロサイクリックアミン、アクリルアミド)
  • 未消化蛋白質による腸内NH3産生亢進

肝機能の指標

グルコース

肝機能の75%が失われると、グリコーゲン貯蔵、糖新生、インスリンクリアランスなどが損なわれ低血糖が引き起こされる(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. 2014.、Chapman SE. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.)。

詳しくはこちらの記事(article)をご参照ください。

BUNとNH3

重度の肝機能低下または門脈体循環シャントにより、尿素回路によるNH3→BUNの代謝が損なわれることによって、BUN低下とNH3上昇が認められる(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. 2014.、Chapman SE. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.)。

また、猫は食欲不振により容易にアルギニン欠乏症が起こり尿素回路が停止する(Ruland K. Vet Clin Pathol. 2010.)。

肝機能の70%が失われると、高NH3血症が引き起こされる(Center SA. Semin Vet Med Surg (Small Anim). 1990.)。

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アルブミン

肝機能の70%が損なわれた慢性肝不全において低アルブミン血症が認められる(Webster CRL. Kirk’s current veterinary therapy XV. 2014.)。

まれにアルブミンの産生を亢進させる犬の肝細胞癌が存在する(Cooper ES. Vet Clin Pathol. 2009.)。

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グロブリン

αおよびβグロブリンは肝臓で産生されるため低下することもあるが、γグロブリンはBリンパ球で産生されるため、肝不全によってグロブリン全体が低値を示すことは稀である。

グロブリンはクッパー細胞によって除去されるため、炎症を伴わない肝機能低下でも高グロブリン血症を示すことがある(Chapman SE. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.)。

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コレステロール

胆管疾患の場合、胆汁うっ滞により胆汁の材料となるコレステロールの高値が認めらる(Rothuizen J. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2009.)。

肝不全末期には低コレステロール血症が認められる(Chapman SE. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.)。

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ビリルビン

非抱合型/関節ビリルビンと抱合型/直接ビリルビンに分類されるが、飽和状態になるとどちらが先であろうと両方とも上昇するため分類に臨床的価値はない。

ALT/AST優位またはALP/GGT優位の肝酵素上昇による分類の方が臨床的に有用であるが、超音波検査には劣る。

溶血や高脂血症による偽高値にも注意が必要である。

肝臓の血液潅流量に影響されないため門脈体循環シャントでは上昇しない(Rothuizen J. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2009.)。

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総胆汁酸

12時間以上の絶食後に測定したものをpre、その後少量の食事を与えて2時間後に測定したものをpostとして評価する。

門脈体循環シャントと肝硬変を除く肝疾患に対する感度は54-74%でありスクリーニング検査向きとは言えない。

また、その値の重症度から鑑別を絞ることもできないとされているが、例外的に空胞性肝傷害では75-100 µmol/Lを超えるとされている。

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血液凝固障害

肝臓では第Ⅷ因子を除く全ての凝固因子、ATⅢ、プロテインC、Sが合成されている。

胆管閉塞は脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を阻害する。第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子、プロテインC、SはビタミンK依存性タンパク質であり、ビタミンK欠乏症により活性が大幅に低下する。

門脈高血圧症に続発する脾腫により血液がプールされる過程で血小板減少症が引き起こされる(Rothuizen J. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2009.、Kavanagh C. J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2011.)。

び漫性肝疾患(肝炎やリンパ腫)では正の急性相タンパク質として肝臓でのフィブリノーゲンの産生が亢進する。

また、門脈高血圧症では門脈血栓が形成されやすい。

肝疾患に続発してDICが引き起こされる可能性がある。

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赤血球

鉄輸送不全によるMCV低下、標的赤血球、異型赤血球、猫ではハインツ小体の出現。

門脈高血圧症による消化管出血による貧血。

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