【獣医師監修】老犬の皮膚にできものが!これって病気?原因と見分け方、自宅でのケア方法

愛犬を撫でている時に、これまでなかった「できもの」を見つけた経験はありませんか?特にシニア期に入った老犬は皮膚トラブルが増えやすく、体にできものができることも珍しくありません。

しかし、そのできものが良性なのか悪性なのか、放置して良いものなのか、すぐに動物病院で診察を受けるべきなのか、飼い主さんとしては心配になりますよね。

この記事では、老犬の皮膚にできるできものについて、その原因や良性・悪性の見分け方、考えられる病気の種類、自宅でできるケア方法まで詳しく解説します。

老犬の皮膚のできもの、原因は?

老犬の皮膚にできものができる主な原因は、加齢に伴う免疫力の低下です。

人間と同じように、犬も歳を重ねると免疫力が落ち、ウイルスや細菌への抵抗力が弱まります。その結果、様々な感染症にかかりやすくなり、皮膚のバリア機能も低下するため、できもの(腫瘍やイボ)が発生しやすくなるのです。

老犬の皮膚のできもの、良性と悪性はどうやって見分ける?

愛犬の皮膚にできものを見つけた際、それが良性か悪性か、ある程度の目安を飼い主さんが知っておくことは大切です。しかし、見た目だけで正確に判断するのは非常に困難です。

痒みや痛みといった症状がないからと安心せず、愛犬の体にできものやイボを見つけたら、まずは動物病院で獣医師の診察を受けることを強く推奨します。

良性のできものの特徴

良性の皮膚のできものには、白・黄色・ピンク色で、直径が1cm未満の小さなものが多く見られます。これらはパピローマウイルスの感染による「乳頭腫(イボ)」である可能性が高いでしょう。多くは自然に治癒するため、過度な心配は不要なケースが多いです。

注意すべき悪性のできものの特徴

一方で、黒や赤黒い色のできものは、悪性腫瘍(メラノーマなど)の可能性を疑う必要があります。大きさや形に関わらず、注意が必要です。特に、急に大きくなる、形が変わる、硬くなる、出血やただれがあるといった変化が見られる場合は危険なサインです。痒みや痛みを伴わなくても、早急に動物病院を受診してください。

皮膚のできものから考えられる病気は?

老犬の皮膚にできるできものには、様々な種類の病気が考えられます。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

考えられる病気
  • 毛包腫瘍
  • 脂肪腫
  • 乳頭腫
  • 黒色腫/メラノーマ
  • 基底細胞腫瘍
  • 肥満細胞腫
  • 扁平上皮癌

毛包腫瘍|首や背中にできる硬いコブ

毛包腫瘍は、毛を作り出す「毛包」にできる腫瘍で、中齢〜老犬によく見られます。首や背中、胸、尻尾などに硬いコブのようなできものができ、その部分の毛が抜ける(脱毛)ことで気づく飼い主さんが多いです。良性の場合が多いですが悪性の可能性もあるため、切除手術による治療が一般的です。

脂肪腫|皮膚の下にできる柔らかい塊

脂肪腫は、その名の通り脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。腹部、胸部、内股、脇の下など、皮膚の下にブヨブヨとした柔らかい塊として現れます。特に老犬や肥満気味の犬、メスの犬に発生しやすい傾向があります。命に危険はありませんが、徐々に大きくなり、足の付け根などにできると歩行の妨げになることも。その場合は手術で切除しますが、再発する可能性もあります。

乳頭腫(イボ)|ウイスル性のカリフラワー状のできもの

乳頭腫は、主にパピローマウイルスへの感染が原因で発生するイボ状のできものです。口の中や唇、まぶたなどにカリフラワーのような形のピンク色のできものができます。若い犬に多いですが老犬でも見られます。他の犬にうつる可能性があるため注意が必要です。自然治癒することも多いですが、稀に悪性化して扁平上皮癌になることもあります。経過観察が基本ですが、生活に支障が出る場合は切除手術を行います。

黒色腫(メラノーマ)|特に注意が必要な悪性腫瘍

黒色腫(メラノーマ)は、皮膚の色素細胞(メラノサイト)が癌化した腫瘍で、皮膚が褐色や黒色に変化します。毛の生えている皮膚にできるものは良性が多いですが、口の中、足の指、爪の付け根、眼球などにできるものは悪性度が高い傾向があり、非常に危険です。悪性の場合は転移しやすく、特に肺に転移すると呼吸困難などを引き起こします。治療は、外科手術、放射線治療、抗がん剤、免疫療法などを組み合わせて行われます。

基底細胞腫瘍|高齢犬に多いドーム状のできもの

基底細胞腫瘍は、表皮の一番下にある基底細胞から発生する腫瘍で、6歳以上の犬、特に老犬での発生が多くなります。頭部や首、胸など皮膚の様々な場所にでき、硬く盛り上がったドーム状のできものとして現れ、脱毛を伴うこともあります。ほとんどが良性で転移も稀ですが、悪性の「基底細胞癌」である可能性もゼロではありません。治療は手術による摘出が基本です。

肥満細胞腫|犬の皮膚がんで最も多い悪性腫瘍

肥満細胞腫は、犬の皮膚にできる悪性腫瘍の中で最も発生率が高いものです。「皮膚型」と「内臓型」があり、皮膚型は体の一部にできものができるもので、見た目は様々です。この腫瘍は「偉大な偽装者」とも呼ばれ、ただのイボや脂肪腫に見えることもあるため注意が必要です。刺激を与えると腫瘍内のヒスタミンが放出され、赤く腫れたり、消化器症状(嘔吐・下痢)を起こしたりすることがあります。治療は、可能な限り広範囲を切除する外科手術が第一選択となります。

扁平上皮癌|皮膚の表面が癌化する病気

扁平上皮癌は、皮膚の最も外側にある扁平上皮細胞が癌化する病気です。特に日光(紫外線)を浴びやすい毛の薄い場所(鼻、耳、腹部など)にできやすく、白い被毛の犬や10歳以上の老犬で発症リスクが高まります。初期は赤く硬いしこりやカリフラワー状のできものですが、進行すると表面が崩れて潰瘍になることもあります。転移は比較的遅いですが、早期の外科手術による切除が重要です。

老犬の皮膚のできもの、自宅で出来るケアは?

できものができてしまった後の治療は獣医師に任せるべきですが、日頃から皮膚を健康に保つためのケアは自宅でも行えます。できものの発生予防や、皮膚の状態を良好に保つために、以下の2つのケアを心がけましょう。

自宅で出来るケア
  • 免疫力をサポートする食事
  • 皮膚の保湿ケア

免疫力をサポートする食事
皮膚の健康と免疫力を維持するため、栄養バランスの取れた食事が重要です。特に抗酸化作用のあるビタミンEは、皮膚の健康維持に役立ちます。ビタミンEは「カボチャ」「ほうれん草」「大豆」などの食材に含まれていますが、サプリメントなどで補う際は必ず獣医師に相談してください。

皮膚の保湿ケア
老犬は皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しがちです。乾燥した皮膚は外部からの刺激に弱くなるため、犬用の低刺激な保湿スプレーやローションで潤いを保ってあげましょう。また、加湿器を使って部屋の湿度を40〜60%に保つことも、皮膚の乾燥対策として有効です。

気になる初期症状は獣医師に相談してみる

「あれ、こんなところにできものが…」飼い主さんだからこそ気づける愛犬の小さな変化は、病気の早期発見に繋がる重要なサインです。

「大したことないかも」と自己判断で放置せず、まずは獣医師に相談することが大切です。できものの大きさや形、色、いつからあるかなどを記録し、可能であればスマートフォンで写真や動画を撮っておくと、診察の際に役立ちます。

イボを見つけたら、病院で診断を受けよう!

老犬の皮膚にできるできものには、良性のイボから悪性度の高い癌まで様々な種類があります。見た目や感触だけで良性か悪性かを正確に判断することは獣医師でも難しく、細胞診や病理検査が必要です。

少しでも不安や異常を感じたら、迷わず動物病院で診察を受けましょう。毎日のスキンシップやブラッシングは、愛犬との絆を深めるだけでなく、こうした皮膚のできものを早期に発見する絶好の機会です。日頃から愛犬の体をよく見て、触って、小さな変化も見逃さないようにしてあげてくださいね。

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