【獣医師監修】老犬の歯ぎしりは病気のサイン?3つの原因と今日からできる対処法

気持ちよさそうに寝ている愛犬の姿は、飼い主にとって何よりの癒やしですよね。

しかし、そんな安らかな寝顔で「カチカチ」「ギリギリ」と歯ぎしりをしていたら、何か病気なのではと心配になるでしょう。実は、犬も人間と同じように歯ぎしりをすることがあります。

この記事では、特にシニア期を迎えた老犬の歯ぎしりに焦点を当て、その原因や考えられる病気、飼い主ができる対処法について詳しく解説します。

犬の歯ぎしり、原因は?老犬も同じ?

歯ぎしりの主な原因

生理的要因(口の中の違和感や病気)
精神的要因(ストレスや不安)

犬が歯ぎしりをする原因は、大きく「生理的要因」と「精神的要因」の2つに分けられます。これは成犬でも老犬でも共通していますが、老犬の場合は加齢に伴う特有のリスクも考慮する必要があります。

生理的要因

生理的な要因としては、主に口の中の不快感や病気が考えられます。子犬の場合は歯の生え変わりによるむず痒さが原因になることもありますが、成犬や老犬の場合は以下のような原因が疑われます。

  • 口腔内の不快感:歯に挟まった食べかす、噛み合わせの悪さなどが原因で歯ぎしりをすることがあります。
  • 歯の病気:犬の歯ぎしりで特に注意したいのが、歯周病や虫歯、口内炎、口腔内腫瘍といった病気です。痛みや違和感から歯をこすり合わせることがあります。特に老犬は歯周病のリスクが高まるため、注意深く観察しましょう。
  • その他の病気:胃酸の逆流による胸やけ(逆流性食道炎)や、てんかんなどの神経系の病気が原因となるケースもあります。

精神的要因

精神的な要因としては、ストレスや不安、欲求不満が挙げられます。犬は非常に繊細な動物であり、環境の変化や飼い主とのコミュニケーション不足がストレスとなり、歯ぎしりとして現れることがあります。

  • ストレスや不安:留守番による寂しさや分離不安、運動不足、騒音、家族構成の変化などがストレスの原因となります。老犬の場合、視力や聴力の低下による不安感から歯ぎしりをすることもあります。
  • 欲求不満・興奮:「もっと構ってほしい」「遊びたい」といった欲求が満たされない場合や、逆に遊びすぎて興奮状態が続いている時に歯ぎしりが見られることもあります。

老犬の歯ぎしり、3つのタイプがある?

歯ぎしりの種類

タッピング
グライディング
クレンチング

犬の歯ぎしりには、音や動作によって3つのタイプに分類されます。どのタイプかによって、緊急性や対処法も変わってきます。

タッピング

上下の歯を小刻みに「カチカチ」と噛み合わせるタイプです。何かを食べているかのように口をパクパクさせることもあります。

グライディング

口を半開き、あるいは閉じた状態で、歯を水平に「ギリギリ」「ゴリゴリ」とすり合わせるタイプです。人間でいう一般的な歯ぎしりに最も近いといえます。

クレンチング

口を固く閉じたまま、上下の歯を強く食いしばるタイプです。音はほとんどしませんが、顎の筋肉が硬直しているのが特徴です。強い力が歯や顎にかかるため、最も注意が必要な歯ぎしりです。

老犬の歯ぎしり、放っておいても問題ない?対処法は?

「タッピング」や「グライディング」のような音のする歯ぎしりも、ストレスや病気のサインである可能性はありますが、最も危険なのは音のしない「クレンチング」です。

クレンチングは過剰な力が歯や顎にかかり続けるため、歯の摩耗や破折、顎関節症などを引き起こし、食事や生活に支障をきたす恐れがあります。また、歯周病などの病気が原因となっている場合は、放置すると病気が進行してしまいます。愛犬の歯ぎしりに気づいたら、決して放置せず原因を探り、適切に対処しましょう。

対処法

歯ぎしりをやめさせるには、その原因を取り除くことが最も重要です。原因に応じた対処法を試してみましょう。

  • ストレスを解消する:飼い主とのスキンシップの時間を増やしたり、散歩や遊びで適度な運動をさせたりして、ストレスを発散させてあげましょう。老犬の場合は、無理のない範囲での短い散歩や、安心できる静かな寝床の確保が効果的です。
  • デンタルケアを徹底する:老犬は特に歯周病になりやすいため、日頃からのデンタルケアが不可欠です。歯ブラシや歯磨きシートを使い、2〜3日に1回は口内を清潔に保つことを心がけましょう。デンタルガムやおもちゃを与えるのも一つの方法ですが、硬すぎるものは歯を傷める危険があるため、年齢や口の状態に合ったものを選んでください。
  • 動物病院を受診する:歯ぎしりが続く、口臭が強くなった、よだれが多い、食欲がないなど、他の症状が見られる場合は、病気が隠れている可能性があります。自己判断せずに、早めに動物病院で獣医師の診察を受けましょう。

病気やストレスを抱えていないか、チェックしてあげて!

犬の歯ぎしりは、言葉を話せない愛犬が送る「体調が悪い」「つらい」という重要なサインです。

特に老犬の場合、加齢による体の変化や病気のリスクが常に伴います。歯ぎしりをきっかけに、愛犬がストレスや病気を抱えていないか、生活環境や体の様子を改めてチェックしてあげることが大切です。

日頃から愛犬の口の中をよく観察し、ささいな変化にも気づいてあげることで、愛犬の健康を守り、穏やかで快適なシニアライフをサポートしてあげてくださいね。

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