この記事では、メス猫の飼い主さんが知っておきたい猫の避妊手術について、適切な時期や具体的な方法、気になる費用や助成金制度まで詳しく解説します。望まない妊娠を防ぐだけでなく、病気の予防にも繋がる避妊手術ですが、デメリットや術後の変化についても気になりますよね。大切な愛猫のために、正しい知識を身につけましょう。
猫の避妊手術はいつ、どんな方法でするの?
猫の避妊手術を受ける適切な時期は、初めての発情を迎える前の生後6ヶ月から8ヶ月頃が一般的です。この時期に手術を行うことで、乳腺腫瘍などの病気のリスクを大幅に低減できるという大きなメリットがあります。猫は個体差もありますが、平均して生後半年から1年で性成熟を迎えるため、その前に動物病院に相談しましょう。
手術の方法は、全身麻酔下で行う「開腹手術」が主流です。お腹を数センチ切開し、卵巣と子宮を摘出します。これにより、将来的な子宮蓄膿症などの病気も予防できます。手術は基本的に予約制で、事前に動物病院で詳しい説明を受け、同意書にサインをする流れとなります。
手術前は10〜12時間程度の絶食と、当日の朝からの絶水が必要です。手術自体は30分〜1時間程度で終わりますが、麻酔からの覚醒や術後の経過観察のため、1泊程度の入院となるのが一般的です。
猫の避妊手術の費用はどれくらい?デメリットは?
猫の避妊手術の費用は、動物病院の立地や設備、術後のケア内容によって変動しますが、おおよそ2万円~4万円が相場です。この費用には、一般的に以下の項目が含まれます。
- 術前検査費用(血液検査など)
- 麻酔費用
- 手術執刀費用
- 入院費用(1泊分)
- 術後の内服薬(抗生物質や痛み止め)
- 抜糸などの処置費用
術後、傷口を舐めて化膿してしまったり、体調不良が続いたりして追加の通院が必要になると、別途料金が発生します。
避妊手術のメリット・デメリット
避妊手術には、メリットだけでなくデメリットも存在します。両方を正しく理解したうえで判断することが大切です。
▼メリット
- 望まない妊娠を防げる
- 卵巣・子宮・乳腺などの病気(子宮蓄膿症や乳腺腫瘍など)のリスクを大幅に減らせる
- 発情期特有の大きな鳴き声やスプレー行動といった問題行動がなくなる
- 発情によるストレスから解放される
▼デメリット
- 全身麻酔による体への負担やリスクがある
- ホルモンバランスの変化により太りやすくなる
- 一度手術すると子どもを産めなくなる
- 発情中の手術は出血量が多くなり、体に負担がかかる場合がある
vet所属獣医師先生
手術をすると性格が変わることがある?
避妊手術によって猫の性格が大きく変わることは稀ですが、変化が見られることもあります。特に、発情期特有の大きな鳴き声や攻撃性といったストレスがなくなることで、性格が穏やかになったり、飼い主さんに対してより甘えん坊になったりするケースがあります。ただし、これは個体差が大きく、必ずしもすべての猫に当てはまるわけではありません。
手術をしたのに発情しているみたいだけど?
避妊手術で卵巣と子宮を摘出したはずなのに、発情のような行動が見られることがあります。これは「卵巣遺残症候群」と呼ばれ、いくつかの原因が考えられます。
すでに発情を経験済み
副卵巣の確認ミス
卵巣や子宮の取り残し
避妊手術をしたのにもかかわらず発情する主な原因は、手術時に卵巣組織が体内に残ってしまう「卵巣の取り残し」です。また、ごく稀に生まれつき卵巣以外の場所に卵巣組織(副卵巣)が存在する猫もいます。手術前に発情を経験している場合、その記憶から発情に似た行動をとることもあります。
対処法
もし術後に発情のような行動が見られたら、まずは手術を行った動物病院に相談しましょう。対処法としては、体に残った卵巣組織を取り除く「再手術」や、体への負担が少ない「ホルモン剤の投与」などがあります。どちらの方法を選択するかは、猫の健康状態や状況を考慮して、獣医師と十分に話し合って決めることが重要です。
猫の避妊手術、助成金はあるの?
猫の避妊手術には、お住まいの自治体や地域の獣医師会から助成金(補助金)が支給される制度があります。これは、望まない繁殖を防ぎ、特に飼い主のいない猫(野良猫)を減らすことを目的としています。飼い猫を対象とした助成金制度を設けている自治体もあります。
助成金制度の探し方と注意点
助成金に関する情報は、以下の方法で確認できます。
- お住まいの市区町村のウェブサイトや広報誌
- 地域の獣医師会のウェブサイト
- 役所の担当課(環境課、保健所など)への電話問い合わせ
ただし、助成金制度は申請期間や頭数に上限があったり、指定された動物病院での手術が条件だったりと、自治体によって内容が大きく異なります。利用を検討する場合は、必ず事前に最新の情報を確認しましょう。
東京におけるメス猫の避妊手術に対する助成金の一例
以下は、東京都内の一部の自治体における助成金(上限額)の例です。(主に飼い主のいない猫が対象)
- 東京都:都としての制度はなし(各区市町村で実施)
- 江戸川区:飼い主のいない猫に対し25,000円(妊娠中は35,000円)
- 文京区:飼い主のいない猫に対し25,000円(妊娠中は30,000円)
- 千代田区、中央区:飼い主がいない猫に対し20,000円(妊娠中は25,000円)
- 江東区:飼い主がいない猫に対し20,000円
- 荒川区:飼い主がいない猫に対し21,000円(妊娠中は29,000円)
- 目黒区:飼い主がいない猫に対し16,000円
- 台東区、北区:飼い主がいない猫に対し10,000円
- 墨田区:飼い主がいない猫に対し地域の対策に取り組み申請する場合22,000円、個人が申請する場合12,000円
- 世田谷区:飼い主がいない猫に対し10,000円、飼い猫に対し6,000円
- 大田区:飼い主がいない猫に対し14,000円、飼い猫に対し5,000円
- 品川区:飼い主がいない猫に対し12,000円、飼い猫に対し区助成金8,000円と獣医師会助成金8,000円
- 新宿区:飼い主がいない猫に対し25,000円、飼い猫に対し4,000円
- 港区:飼い猫がいない猫に対し25,000円
- 渋谷区:飼い猫に対し7,000円
- 豊島区:飼い主がいない猫に対し4,000円
- 葛飾区:飼い主がいない猫に対して10,000円
- 板橋区:区民が飼育・管理している猫に対し4,000円
- 足立区:飼い主がいない猫に対して6,000円、飼い猫に対し4,000円
- 練馬区:飼い猫に対し3,000円
上記は令和5年度現在、各自治体のHPに掲載されている情報です。最新の情報は各市町村に問い合わせて確認してくださいね。