ある日突然、愛猫のトイレに血が混じっていたら、誰でも驚き、心配になるはずです。猫の血便は、人間と同じく体からの重要なSOSサインであり、何らかの異常が起きている証拠です。
この記事では、猫に血便が見られた際の主な原因、血便の種類からわかる危険度のサイン、そして適切な対処法について詳しく解説します。猫の血便は、放置すると命に関わる病気が隠れている可能性もあるため、この記事を参考に早急な対応を心がけてくださいね。
猫の血便が出るのは体調不良のサイン
便に血が混ざるということは、消化管のどこかから出血していることを意味します。特に鮮やかな赤い血が見られる場合は、肛門に近い大腸や肛門付近からの出血が疑われます。血便以外に元気食欲低下や嘔吐などもあれば早めに動物病院を受診し、獣医師の診断を仰ぎましょう。
猫の血便の原因は?
ストレス
便秘
異物の誤飲
病気や感染症
猫の血便を引き起こす原因は多岐にわたります。主な原因として「ストレス」「便秘といった便通の異常」「異物の誤飲」「ウイルスや寄生虫などの感染症、あるいは病気」などが挙げられます。それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
ストレス
猫は非常にデリケートな動物です。急な食事の変更、季節の変わり目、引っ越しや模様替え、新しいペットが増えた、来客があったなど、急な環境の変化が強いストレスとなり、血便を引き起こすことがあります。また、飼い主とのコミュニケーション不足や運動不足もストレスの原因になり得ます。愛猫の様子をよく観察し、ストレスの原因を取り除いてあげましょう。
便秘
水分不足や運動不足で便秘になり、硬くなった便を無理に排出しようとしたいきみで肛門付近が切れ、便に血が付着することも。日頃から適切な食事管理と水分補給を心がけることが大切です。
異物誤飲
おもちゃの破片やビニール、紐、植物など、猫が食べてはいけないものを誤って飲み込んでしまうと、鋭利な部分が消化管の内部を傷つけ、出血させて血便を引き起こすことがあります。誤飲した物によっては腸閉塞などを起こし、命に関わる危険な状態になるため、様子見はせず、直ちに動物病院へ連れて行きましょう。
病気や感染症
ウイルス(猫パルボウイルスなど)や細菌、寄生虫(コクシジウムなど)への感染が原因で腸炎を起こし、血便が出ることがあります。また、食事反応性腸症(FRE)、炎症性腸疾患(IBD)や悪性腫瘍といった病気が隠れている可能性も考えられます。血便以外に嘔吐や食欲不振、元気消失などの症状が見られる場合は特に注意が必要です。
血液が混入した便には何がある?対処法は?
ここでは、血便の色や状態から推測できる危険度や考えられる病気、そして飼い主としてできる対処法についてご紹介します。愛猫の便の状態をよく観察してみてください。動物病院を受診する場合には便の写真や実物を持参するようにしましょう。
真っ赤な下痢をしている(鮮血便・血様下痢)
便全体が真っ赤な液体状の下痢であり、元気食欲も低下している場合には危険である可能性が高い状態です。大腸全体に及ぶ重度な大腸炎や、出血を伴う腫瘍、ウイルス感染症(猫パルボウイルス感染症など)といった重篤な病気が強く疑われます。激しい下痢による脱水症状も命の危険に繋がるため、動物病院を受診してください。
対処法
夜間や休日であっても、救急対応可能な動物病院を探して直ちに受診してください。脱水症状と栄養不良を改善するための点滴や、原因に対する治療が急務となります。猫は体調不良を隠す習性があるため、ぐったりしている時点でかなり危険な状態です。
真っ赤な血が便に混じっている(鮮血便)
硬い便や通常の便あるいは軟便・下痢の表面に、ポタポタと垂れたような、あるいは付着したような真っ赤な血が見られる場合、出血源は肛門に近い大腸後部や直腸、肛門である可能性が高いです。便秘で硬い便を出す際に肛門が切れたり、大腸炎やポリープなどが考えられます。便の異常以外に問題がなければ基本的には一時的なものが多いです。
対処法
一度きりであれば、便秘などが原因の可能性もありますが、続く場合は大腸炎や腫瘍などの病気も疑われます。自己判断はせず、一度動物病院で診てもらいましょう。
黒いドロっとした便が出ている(黒色便・タール便)
便全体が黒っぽく、アスファルトのタールのようなドロっとした便が出た場合、胃や十二指腸、小腸といった上部消化管で出血している可能性があります。血液が胃酸によって酸化されることで黒く変色します。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、腫瘍などが原因として考えられます。鮮血がみられる場合よりも重篤である可能性が高いです。
対処法
消化・栄養吸収に重要な上部消化管(胃、小腸)での出血が疑われる重要な症状です。たとえ元気食欲などに変化がないとしても、便の撮影・実物を持参のうえ動物病院の受診を検討しましょう。
肛門から直接出血している
排便時以外に肛門から出血が見られたり、猫がおしりを気にして頻繁に舐めたり、床にこすりつけたりする場合は、肛門嚢炎や肛門嚢破裂の可能性があります。肛門の左右にある肛門嚢という袋に分泌物が溜まり、炎症や細菌感染を起こす病気です。
対処法
抗生物質の投与や、溜まった分泌物を絞り出す処置が必要になります。悪化すると外科手術が必要になることもあるため、様子見をせずに早めに動物病院を受診してください。
気になる症状は獣医師に相談してみる
愛猫の便に血が混じっているのを見つけると、誰でも動揺してしまうものです。しかし、慌てて病院へ駆け込む前に、飼い主さんだからこそ気付ける愛猫の状態を冷静にチェックし、獣医師に正確に伝える準備をしましょう。些細なことでも診断の重要な手がかりになります。
可能であれば、血便そのものか、それが難しい場合はスマートフォンで撮影した写真や動画を持参すると、口頭で説明するよりも正確に状態を伝えられます。受診の際に獣医師に伝えると良い情報は以下の通りです。
- いつから血便が出ているか(回数や頻度)
- 便の色や状態(鮮血か黒い血か、下痢か硬い便か)
- 血の量(便に付着する程度か、全体的に赤いか)
- 元気や食欲はあるか、普段と変わりないか
- 嘔吐や下痢など、血便以外の症状はないか
- 最近、フードの変更や環境の変化はなかったか
血便を見たら自然治癒を期待せず、早めに動物病院へ
いかがでしたでしょうか?
猫の便の色調には鮮血~黒色便など様々です。消化管による便の異常は、消化・栄養吸収に働く上部消化管由来の「小腸性」と、水分の再吸収による便の形成に働く下部消化管由来の「大腸性」の大きく2つに分類されます。今回色のみで分けるとしたら鮮血は「大腸性」、黒色便は「小腸性」であることが多いとされています。便の色だけでなく、元気食欲といった一般状態や、嘔吐の有無なども併せて評価していく必要があるためこれらにも異常が無いか気にすることも重要です。多くはないですが、凝固異常による易出血性によって血便がでることがあるので注意が必要です。一般状態に問題が無くとも、2日以上続くようであれば動物病院で早めに相談することが推奨されます。
受診時のポイントは上記の箇条書きの内容や便の様子がわけるようなものを用意すると良いと思われます。