【獣医師監修】スコティッシュフォールドがかかりやすい病気7選|遺伝性骨軟骨異形成症とは

スコティッシュフォールドは、その愛らしい折れ耳と丸い顔、人懐っこい性格で絶大な人気を誇る猫種です。これから家族に迎えたいと考えている方も多いでしょう。しかし、その特徴的な見た目と引き換えに、特定の病気にかかりやすいという側面も持ち合わせています。特に遺伝性疾患のリスクは、飼い主として知っておくべき重要な情報です。

この記事では、スコティッシュフォールドがかかりやすい代表的な病気について、症状や原因、治療法まで詳しく解説します。

遺伝性骨形成異常症とは?

遺伝性骨形成異常症は、スコティッシュフォールドが抱える最も代表的な遺伝性疾患です。この病気は、スコティッシュフォールドのルーツである突然変異の垂れ耳と深く関係しており、軟骨の形成に異常が生じることで、耳だけでなく手足の関節や骨格にも影響が及びます。

代表的な症状として、手足の関節に「骨瘤(こつりゅう)」と呼ばれる硬いコブが形成されることがあります。特に後ろ足の関節に発症しやすく、強い痛みを伴うため、歩き方がおかしくなったり、高い場所に登らなくなったりするなど、歩行に支障をきたすことも少なくありません。

ほかにも、鼻の軟骨に異常が起きて鼻血が出やすくなるケースもあります。現在のところ根治治療はなく、鎮痛剤による痛みの緩和や、放射線療法による進行抑制といった対症療法が中心となります。

遺伝性骨形成異常症は子猫のうちから発症することが多いですが、成猫になってから症状が現れる場合もあります。成長と共に症状が落ち着くこともありますが、関節の変形は元に戻りません。愛猫の痛みを少しでも和らげるために、歩き方の変化など、ささいなサインを見逃さず早期発見・早期治療につなげることが重要です。

スコティッシュフォールドの耳の病気

耳の病気

外耳炎
遺伝性難聴

スコティッシュフォールドの最大のチャームポイントである折れ耳は、残念ながら耳の病気を引き起こす原因にもなり得ます。特に「外耳炎」は日頃のケアで予防できるため、正しい知識を身につけましょう。

外耳炎

外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの外耳道で炎症が起こる病気です。スコティッシュフォールドの折れ耳は、耳の中が蒸れやすく、細菌や真菌が繁殖しやすい環境にあるため、外耳炎のリスクが高いとされています。主な原因には、「細菌・真菌の感染」「耳ダニなどの寄生虫」「耳垢や異物」「アレルギー」などが挙げられます。「頻繁に頭を振る」「耳をしきりに掻く」「耳から異臭がする」「黒っぽい耳垢が増える」といった症状が見られたら、外耳炎を疑い動物病院を受診しましょう。

治療は、原因に応じて耳の洗浄や点耳薬、内服薬などで行われます。再発を防ぐためにも、普段から定期的に耳の状態をチェックし、清潔に保つことが何よりの予防になります。

遺伝性難聴

スコティッシュフォールドは、遺伝性疾患の一つとして先天的な難聴を持って生まれることがあります。これは、特徴である折れ耳が軟骨形成異常に起因するため、音を伝える耳の器官にも異常が生じやすいことが原因です。

「名前を呼んでも反応しない」「大きな物音がしても驚かない」といった様子が見られる場合、難聴の可能性があります。命に直接関わる病気ではありませんが、後ろから近づく車や自転車などの危険を察知しにくくなるため、屋外での事故には特に注意が必要です。難聴の確定診断は難しいですが、気になる行動があれば一度かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。

スコティッシュフォールドの目の病気

目の病気

眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
白内障

スコティッシュフォールドだけでなく、猫全般がかかりやすい目の病気もあります。目の異常は視力低下に直結するため、早期発見と治療で愛猫のQOL(生活の質)を守ってあげましょう。

眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)

眼瞼内反症は、まぶたが内側に巻き込まれ、まつ毛が常に眼球の表面(角膜)を刺激してしまう病気です。この刺激によって、角膜炎や結膜炎といった二次的な病気を引き起こすことがあります。

症状としては、「涙や目やにの量が増える」「目をしょぼしょぼさせる」「光をまぶしがる」「目をこすろうとする」などが挙げられます。遺伝的な要因が大きいとされていますが、外傷や加齢によっても発症します。

治療は、症状が軽度であれば点眼薬で炎症を抑えますが、根本的な解決には外科手術でまぶたの形を整えるのが一般的です。

白内障

白内障は、目の中でレンズの役割を果たす水晶体が白く濁ってしまう病気です。進行すると視力が低下し、「物にぶつかる」「段差でつまずく」など、日常生活に支障をきたすようになります。

スコティッシュフォールドが遺伝的に白内障になりやすいわけではありませんが、他の猫と同様に、目の怪我や糖尿病などの病気が原因で後天的に発症することがあります。初期段階であれば点眼薬で進行を遅らせる治療が中心となります。進行した場合は外科手術も選択肢となりますが、すべての動物病院で実施できるわけではありません。

室内飼育を徹底して喧嘩などによる外傷リスクを減らすことが、白内障の予防にもつながります。

スコティッシュフォールドの内臓の病気

内臓の病気

肥大型心筋症
腎不全
尿路結石症

スコティッシュフォールドは、遺伝的に心臓の病気になりやすい傾向があります。また、猫はもともと飲水量が少ないため、腎臓や泌尿器系の病気にも注意が必要です。命に関わる重篤な病気も多いため、以下のような症状に気づいたら、すぐに動物病院で診てもらいましょう。

肥大型心筋症

肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が分厚くなり、心臓の機能が低下してしまう病気です。スコティッシュフォールドは遺伝的にこの病気を発症しやすい猫種として知られています。

初期はほとんど症状がありませんが、進行すると「疲れやすく、あまり動かなくなる」「呼吸が速い、苦しそう」「咳をする」「食欲不振」などの変化が見られます。この病気の最も恐ろしい点は、心臓内にできた血栓が足の血管などに詰まり、後ろ足の麻痺や突然死を引き起こす「動脈血栓塞栓症」を併発する可能性があることです。

遺伝的要因が大きいため確実な予防法はありませんが、定期的な健康診断(特に心臓の超音波検査)で早期発見に努めることが非常に重要です。

腎不全

腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排出する重要な臓器です。腎不全とは、この腎臓の機能が慢性的に低下していく病気で、高齢の猫に非常に多く見られます。

腎機能が低下すると、老廃物を十分に排出できなくなり、体に毒素が溜まる「尿毒症」を引き起こす危険があります。「水をたくさん飲むようになった(多飲)」「おしっこの量や回数が増えた(多尿)」「食欲がない」「嘔吐」「体重減少」といった症状は、腎不全の代表的なサインです。特に「多飲多尿」は初期に見られる重要な変化なので、見逃さないようにしましょう。

腎臓に配慮した療法食など、日頃からの食事管理が病気の進行を緩やかにするために効果的です。

尿路結石症

尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石(結晶の塊)ができてしまう病気です。結石が尿道を塞いでしまうと、排尿できなくなり、急性腎不全や尿毒症を引き起こす命に関わる状態(尿道閉塞)に陥ることがあります。特に尿道が細いオス猫は注意が必要です。

「何度もトイレに行くが尿が少ししか出ない」「排尿時に痛そうに鳴く」「血尿」「落ち着きがなくソワソワしている」などの症状が見られたら、緊急性の高いサインです。主な原因は食事のミネラルバランスの乱れなどによる尿のpHバランスの崩れです。適切な栄養バランスのフードを与えることが、最大の予防策となります。

スコティッシュフォールドの折れ耳同士の交配で病気にかかりやすくなる?

結論から言うと、スコティッシュフォールドの折れ耳同士の交配は、遺伝性疾患のリスクを著しく高めるため、絶対に行うべきではありません。折れ耳の遺伝子は、骨軟骨異形成症を引き起こす遺伝子と同一であり、折れ耳同士を交配させると、重篤な骨の異常を持つ子猫が生まれる確率が非常に高くなります。

このリスクを避けるため、ブリーディングではアメリカンショートヘアやブリティッシュショートヘアといった立ち耳の猫との交配が基本となります。知識や倫理観のない繁殖は、猫たちを苦しめることにつながります。

これからスコティッシュフォールドを家族に迎える際は、どのような親から生まれた子猫なのか、ブリーダーに交配情報を確認することが、健康な子を迎えるために非常に大切です。

病気の知識が大切

スコティッシュフォールドは、その比類なき魅力の裏で、遺伝的な病気のリスクを抱えていることを理解することが、飼い主としての第一歩です。

信頼できるブリーダーやペットショップから子猫を譲り受けると共に、かかりやすい病気の知識を身につけ、日頃から愛猫の様子を注意深く観察しましょう。定期的な健康診断も病気の早期発見には欠かせません。

あらかじめ病気について正しく知っておくことで、万が一発症してしまった場合でも冷静に、そして迅速に対応することができます。大切な家族と一日でも長く健やかに過ごすために、飼い主としてできる限りのサポートをしてあげましょう。

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