最近ではペット飼育可のマンションが増え、犬を室内で飼うご家庭が一般的になりました。しかし、室内飼育で多くの飼い主さんが直面するのが「抜け毛」の問題です。掃除に手間がかかるだけでなく、ご家族にアレルギーを持つ方がいると、より一層気になることでしょう。そのため、抜け毛の少ない犬種を選びたいと考える方が増えています。
この記事では、抜け毛が少ないとされる犬種の特徴や飼い方のポイントを解説するとともに、特におすすめの犬種を10種厳選してご紹介します。
抜け毛が多い犬種と抜けにくい犬種の違いは?
被毛の構造(換毛期の有無)
犬の抜け毛の多さは、主に被毛の構造、つまり「ダブルコート」か「シングルコート」かによって大きく左右されます。この抜け毛が多い犬種と抜けにくい犬種の違いは、体温調節のために毛が生え変わる「換毛期」があるかどうかで決まります。
ダブルコートとは?
ダブルコートとは、体を保護する硬めの毛「オーバーコート(上毛)」と、体温を保持する柔らかく密な毛「アンダーコート(下毛)」の2層構造になっている被毛のことです。アンダーコートは保温性に優れ、犬を寒さから守ります。
このアンダーコートがあるため、ダブルコートの犬種は年に2回、毛が大量に抜け落ちる「換毛期」があります。春には冬毛であるアンダーコートがごっそり抜け、秋には夏毛が抜けて冬に備えるため、抜け毛が多くなる傾向にあります。
シングルコートとは?
シングルコートとは、アンダーコートがなく、オーバーコートのみの1層構造の被毛です。アンダーコートがないため、ダブルコートの犬種に比べて寒さに弱い傾向があります。
シングルコートの犬種には換毛期がないため、抜け毛が少ないのが最大の特徴です。ただし、毛が抜けない代わりに伸び続ける犬種が多いため、定期的なトリミングで毛並みを整え、皮膚の健康を保つ必要があります。
シングルコートでも抜け毛が多い犬はいる
「シングルコート=抜け毛が少ない」と思われがちですが、例外もあります。犬の毛には「毛周期(もうしゅうき)」という生え変わりのサイクルがあり、このサイクルが短い犬種は、シングルコートでも比較的抜け毛が多くなることがあります。毛の長さと抜け毛の量は必ずしも比例しません。
逆に、ダブルコートでも抜け毛が少ない犬種も存在します。犬種ごとの特性をしっかり理解し、「シングルコートだから安心」と決めつけずに選ぶことが重要です。
毛が抜けにくい犬を飼う場合の注意点は?
毛が抜けにくい犬種は、アレルギーを持つ方や掃除の手間を減らしたい方にとって魅力的ですが、飼う上での注意点も理解しておく必要があります。
毎日欠かさずブラッシング
毛が抜けにくいシングルコートの犬は、毛が細く絡まりやすい傾向があります。ブラッシングを怠るとすぐに毛玉ができ、皮膚が引っ張られて痛みを感じたり、通気性が悪化して皮膚病の原因になったりします。
毛玉や皮膚トラブルを防ぐためにも、毎日のブラッシングは欠かせません。また、毛が伸び続ける犬種が多いため、定期的なトリミングで快適な長さにカットしてあげましょう。
vet所属獣医師先生
毛が不自然に抜ける場合は病気の可能性も
一部分だけ円形に毛が抜けている、皮膚に赤みや湿疹があり毛が抜けているなど、不自然な脱毛が見られる場合は、皮膚病のサインかもしれません。ノミ・ダニ対策をしていても、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の可能性があります。
また、脱毛が全身に及び、元気がない、水をよく飲むなどの他の症状も見られる場合は、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)といったホルモン系の病気も考えられます。異常に気づいたら自己判断せず、すぐに動物病院を受診してください。
病気以外の脱毛の原因は「栄養」
病気ではないのに毛並みが悪くなったり、毛が抜けやすくなったりする場合、栄養不足が原因の可能性があります。犬の被毛は主に「ケラチン」というタンパク質でできており、健康な毛を維持するためには良質なタンパク質やビタミン、ミネラルが不可欠です。
与えているドッグフードの栄養バランスが偏っていると、毛艶が悪くなったり毛が抜けたりすることがあります。愛犬の健康な皮膚と被毛を保つためにも、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
毛が抜けにくいおすすめ犬種10選
トイプードル
クルクルとした巻き毛が特徴のトイプードルは、毛が抜けにくい犬種の代表格です。シングルコートで換毛期がなく、抜けた毛もカールした被毛に絡まるため、床に落ちにくいのが魅力です。賢く温厚な性格で、しつけがしやすいため、初心者にもおすすめの犬種といえます。
ただし、毛が絡まりやすく毛玉になりやすいため、毎日のブラッシングと月1回程度の定期的なトリミングが必須です。テディベアカットなど、様々なカットスタイルを楽しめるのも人気の理由です。
ミニチュアシュナウザー
ミニチュアシュナウザーはダブルコートですが、硬いワイヤー状のオーバーコートが抜けにくい性質を持つため、抜け毛が少ない犬種です。特徴的な眉毛や口ひげが威厳と愛嬌を感じさせます。
美しい被毛を維持するためには、週に数回のブラッシングやコーミングが必要です。比較的落ち着いた性格の子が多く、お手入れもしやすいでしょう。
シーズー
長く美しい被毛が魅力のシーズーは、ダブルコートで毛量が多いものの、抜け毛が少ない犬種として知られています。しかし、絹のように細く柔らかい毛質のため、非常に絡まりやすく、毎日の丁寧なブラッシングが欠かせません。
特に子犬から成犬になる時期に一時的に抜け毛が増えることがありますが、これは成長の証です。愛情深く穏やかな性格で、古くから愛玩犬として親しまれています。
ヨークシャテリア
「動く宝石」と称される美しい被毛を持つヨークシャテリアは、シングルコートで抜け毛が非常に少ない犬種です。日々のブラッシングを欠かさなければ、室内で抜け毛が気になることはほとんどないでしょう。
特徴的な「ダークスチールブルー」の美しい毛並みを保つためにも、毎日のブラッシングで優しくお手入れしてあげてください。活発で勇敢な一面も持つ、魅力的な小型犬です。
ビションフリーゼ
真っ白で丸いアフロヘアが愛らしいビションフリーゼは、ダブルコートですが、抜け毛は少ない犬種です。抜けた毛が綿菓子のような被毛の内側に留まるため、外に散らばりにくいのが特徴です。
その分、放置すると毛玉だらけになってしまうため、こまめなブラッシングと定期的なトリミングが不可欠です。陽気で人懐っこい性格で、家庭を明るくしてくれます。
ボロニーズ
イタリア原産のボロニーズは、ふわふわの白い巻き毛が特徴的なシングルコートの犬種で、毛はほとんど抜けません。その優雅な見た目と穏やかで愛情深い性格から、家庭犬として高い人気を誇ります。
抜け毛が少ないためアレルギーを持つ方にも比較的飼いやすいとされますが、美しい純白の被毛を保つためには、毎日のブラッシングと定期的なトリミングが必要です。
チャイニーズクレステッドドッグ
チャイニーズクレステッドドッグには、体が無毛の「ヘアレス」と、全身が細く長い毛で覆われた「パウダーパフ」の2タイプがいます。どちらのタイプもシングルコートで抜け毛は非常に少ないです。
特にヘアレスタイプは抜け毛の心配はほぼありませんが、皮膚が直接外部に晒されるため、乾燥や日焼け対策として保湿クリームを塗るなど、肌のケアが重要になります。パウダーパフタイプも、毛の絡まりを防ぐために週2~3回のブラッシングが必要です。
ベドリントンテリア
まるで子羊のようなユニークな外見を持つベドリントンテリアは、シングルコートで抜け毛が少ない犬種です。柔らかく縮れた被毛は、アレルギーに配慮したい人にも適しています。
見た目の愛らしさとは裏腹に、元猟犬ならではの活発で機敏な一面も持っています。定期的なブラッシングとトリミングで、特徴的なカットスタイルを維持してあげましょう。
マルチーズ
純白でシルクのような直毛が美しいマルチーズは、シングルコートのため抜け毛は少ないです。しかし、被毛が非常に細く長いため、絡まりやすく毛玉ができやすいので、毎日のブラッシングは欠かせません。
毛は伸び続けるため、定期的にトリミングをしないと床を引きずるほど長くなります。特に顔周りの毛は目に入らないよう、リボンで結ぶか短くカットして清潔に保ちましょう。
ポーチュギーズウォータードッグ
アメリカのオバマ元大統領の愛犬としても有名なポーチュギーズウォータードッグは、シングルコートで抜け毛がほとんどない犬種です。活発で賢く、水遊びが大好きなことから「ウォータードッグ」の名が付きました。
被毛は伸び続けるため、もつれを防ぐために週1~2回のブラッシングと定期的なトリミングが必要です。「ライオンカット」など、ユニークなカットスタイルも楽しめます。
毛のお手入れを大切に!
この記事でご紹介した毛が抜けにくい犬種は、抜け毛による掃除の手間やアレルギーの心配を軽減してくれる素晴らしいパートナーです。しかし、抜け毛が少ないからといってお手入れが不要なわけではありません。
むしろ、毛が絡まったり伸び続けたりする犬種が多いため、日々のブラッシングや定期的なトリミングといったお手入れが、愛犬の健康と快適な暮らしを守る上で非常に重要になります。ご自身のライフスタイルや、お手入れにかけられる時間を考慮しながら、最高のパートナーを見つけてくださいね。