「なんだか最近、愛猫のお口が臭いかも…」
ふとした瞬間に、愛猫の口臭が気になったことはありませんか?
猫のお口のトラブルは珍しくなく、特にシニア猫(高齢猫)になると口臭が気になり始めるケースが多いです。飼い主さんの中には、こんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
✓口臭がきついけど、病気じゃないか心配…
✓よだれが増えた気がするけど大丈夫?
✓口臭を改善するケアや対策方法が知りたい
猫の口臭は、単なる臭いの問題だけでなく、病気のサインである可能性も。この記事では、獣医師監修のもと、猫の口臭やよだれの原因となる病気や、ご家庭でできるケア・対策について詳しく解説します。
猫の口臭の原因は?
猫はとても綺麗好きな動物で、こまめにグルーミングをするため体臭はほとんど気になりません。しかし、あくびをした時や顔を近づけた時に「あれ…?」と生臭いような臭いを感じたら、それは口臭のサインかもしれません。
食後すぐのフードの臭いとは別に、時間が経っても口臭が消えない場合や、普段から口が臭う場合は、お口の中で何らかのトラブルが起きている可能性があります。
猫の口臭を引き起こす主な原因は、歯垢や歯石の付着です。
猫の口内環境はアルカリ性のため虫歯にはなりにくいですが、歯垢が歯石に変わりやすく、歯周病を発症しやすいという特徴があります。
歯垢とは、歯の表面に付着する白くネバネバした細菌の塊(プラーク)です。この歯垢が、唾液に含まれるカルシウムなどと結びついて石のように硬くなったものが歯石です。歯垢や歯石は細菌の温床となり、強い口臭を発生させます。
歯垢は歯磨きで除去できますが、一度ついてしまった歯石は歯磨きでは取ることができません。
歯石を放置すると口臭が悪化するだけでなく、様々な病気を引き起こす原因にもなります。日頃からお口のケアを習慣づけ、口腔内を健康に保つことが大切です。
vet監修獣医師先生
歯周病になったり、口内炎ができたりすると食事を食べる度に痛みが出たり、食欲が減って栄養が足りなくなり痩せていってしまいます。
猫の口の中をみるのは嫌がってなかなか難しいかもしれませんが、日々口の中をみるようにしましょう。子猫の時から口の中をみることに慣れておきましょう。
猫の口臭、考えられる病気とは
口臭とあわせて、以下のような症状が見られる場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
✓歯茎が赤く腫れている
✓歯に黄ばんだ歯石がたくさんついている
✓食欲がない、食べたそうにするが痛がって食べられない
✓血が混じったよだれや、ネバネバしたよだれが出る
✓鼻水やくしゃみが出る
これらの症状から考えられる代表的な病気は以下の通りです。
✓歯周病
✓口内炎
✓口内異物・熱中症
✓猫風邪(猫カリシウイルス感染症など)
それぞれの病気の症状や対策について解説します。「うちの子、これかも…」と思ったら、早めに動物病院を受診しましょう。
歯茎の腫れや歯垢があるときは「歯周病」
猫の口臭の原因として最も一般的なのが歯周病です。歯周病は、歯垢の中の細菌が出す毒素によって歯肉が炎症を起こす病気で、進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまいます。
歯周病はどんな猫でも発症する可能性がありますが、腎臓病や糖尿病などの持病がある猫や、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染して免疫力が低下している猫は、特に悪化しやすい傾向があります。
歯周病だったときの対策は?
歯周病の最も効果的な対策は、歯垢を溜めないことです。日々の歯磨きで歯垢を取り除き、お口の中を清潔に保ちましょう。
猫用の歯ブラシや、指に巻くガーゼ、綿棒などを使って優しく歯の表面をこすります。歯磨きを嫌がる場合は、デンタルジェルや液体タイプのケア用品から試してみるのもおすすめです。歯茎からの出血や歯のぐらつきが見られる場合は、すでに症状が進行しているため、すぐに動物病院を受診してください。
動物病院では、抗生剤の投与や、全身麻酔下での歯石除去(スケーリング)、抜歯などの治療を行います。歯周病が原因の口臭は、根本的な治療をしない限り改善されません。
よだれがあり、エサを食べられないときは「口内炎」
強い口臭とともによだれが増え、痛みで食事がとれない場合は、口内炎が疑われます。猫の口内炎は非常に強い痛みを伴い、口の中がただれて真っ赤になります。
痛みから食事ができずに体重が減少したり、口周りのグルーミングをしなくなるため汚れてきたりします。また、口の中のネバつきや、血の混じったよだれも特徴的な症状です。
猫の口内炎は、ウイルスの感染や腎不全、糖尿病といった全身性の病気が背景にあることも少なくありません。「強い口臭、よだれ、食欲不振」の3つのサインが見られたら特に注意が必要です。
口内炎だったときの対策は?
口内炎の対策には、日々のケアによる予防と、発症してしまった際の早期治療が重要です。子猫の頃から栄養バランスの取れた食事を心がけ、食後の歯磨きを習慣にして歯垢・歯石の付着を防ぎましょう。
また、口内炎の原因となりうるウイルス感染症は、ワクチン接種で予防または症状の軽減が可能です。定期的に動物病院で健康診断を受け、お口の中もチェックしてもらいましょう。
よだれが止まらない原因は「口内異物」と「熱中症」
口臭とは直接的な原因が異なる場合もありますが、急によだれが増えたときは口の中に異物が刺さっている可能性も考えられます。
猫じゃらしの破片や、植物の棘などが歯の間や上あご、舌などに刺さっていないか確認してみてください。また、夏場に閉め切った室内で、口を開けてハァハァと息をしながらよだれを垂らしている場合は、熱中症の危険なサインです。
口内異物や熱中症だったときの対策は?
口の中に異物が見つかった場合は、可能であればそっと取り除き、難しい場合は動物病院で処置してもらいましょう。熱中症が疑われる場合は、濡らしたタオルで体を冷やしながら、一刻も早く動物病院へ連れて行ってください。
夏場はエアコンを活用して室温を管理し、猫がいつでも新鮮な水を飲める環境を整えましょう。
鼻水やくしゃみが出るときは「猫風邪」
口臭のほか、鼻水やくしゃみ、目やになどの症状が見られる場合、猫風邪が原因かもしれません。特に猫カリシウイルスに感染すると、舌や口の中に潰瘍(かいよう)ができて口内炎を引き起こし、口臭やよだれの原因となります。
感染経路は、感染猫のくしゃみやよだれに直接触れることや、ウイルスが付着した食器や飼い主さんの手を介した間接的な接触です。軽症であれば自然に回復することもありますが、子猫や高齢の猫は重症化しやすいため、早めに動物病院を受診しましょう。
猫風邪の主な原因となるヘルペスウイルスやカリシウイルスは、混合ワクチンで感染を予防したり、症状を軽減したりできます。年に一度のワクチン接種を忘れずに行いましょう。
vet監修獣医師先生
体全体の問題にもなりますので、歯石、歯周病は放って置かずに動物病院で定期的にみてもらい、必要な治療をしましょう。
猫の口臭、よだれは体調不良の兆候
愛猫の口臭やよだれは、お口の中のトラブルだけでなく、体全体の不調を示す重要なサインです。
「動物だから多少は臭うもの」と軽く考えずに、「いつもより臭いがきついかも」「何か病気が隠れているのかも」と、愛猫の変化に気づいてあげることが大切です。
口臭が気になったら、まずはこの記事で紹介したように、歯や歯茎の状態をチェックしてみてください。そして、歯周病や口内炎といった病気の兆候を見逃さないようにしましょう。
日頃からデンタルケア効果のあるフードを選んだり、歯磨きを習慣にしたりと、積極的に口臭対策を行うことが、愛猫の健康寿命を延ばすことにつながります。愛猫の健康を守るために、毎日のお口のチェックを習慣にしましょう。