犬の便秘、原因と解消法は?獣医師が解説する食事やマッサージでできるケアと危険なサイン

愛犬のお腹が張って苦しそう、うんちが何日も出ていない…。そんな便秘の症状は、見ている飼い主さんにとってもつらいものですよね。便秘が続くと、食欲不振や肌の調子が悪くなるなど、全身の不調につながることもあります。

実は、犬の便秘は決して珍しいことではありません。しかし、その原因や対処法を正しく知っておくことが大切です。

この記事では、飼い主さんが抱える以下のような疑問にお答えします。

  • 犬の便秘ってどんな症状?
  • 何が原因で便秘になるの?
  • 愛犬の便秘に気づいたらどうすればいい?

愛犬のつらい便秘を一日でも早く解消してあげるために、原因からご家庭でできる対処法、便秘解消が期待できるドッグフードの選び方まで詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

犬の便秘、原因は?

まず、犬が便秘になる主な原因について見ていきましょう。原因は一つだけでなく、複数の要因が絡み合っていることもあります。

愛犬が便秘になる主な原因
  • 環境の変化によるストレス
  • 運動不足
  • 水分不足
  • 食事内容の偏り
  • トイレ環境への不満
  • 病気や加齢

環境の変化で排便を我慢することはよく見られますが、猫に比べると犬は単純な便秘が少ないと言われています。しかし、排便の姿勢はとるのになかなか出ない、出にくいといった場合は、会陰ヘルニアなどの病気が隠れている可能性も考えられます。

環境の変化

「引っ越しをした」「家族が増えた(赤ちゃんや新しいペットなど)」「飼い主が変わった」といった環境の変化は、犬にとって大きなストレスとなり、便秘の原因になることがあります。

普段の排便回数や便の状態と比較し、変化がないか観察することが大切です。

運動不足

運動不足も犬が便秘になる原因の一つです。特に室内飼いの犬や、お留守番の時間が長い犬は運動量が不足しがちです。運動によって腸の動きが活発になるため、散歩や遊びの時間が少ないと便秘になりやすくなります。

「毎日散歩をしているから大丈夫」と思っていても、犬種や年齢に応じた適切な運動量が足りていない可能性もあります。ただ歩くだけでなく、時には走らせるなど、愛犬に合った運動を取り入れてみましょう。

水分不足

犬の便秘の直接的な原因として、体内の水分不足が挙げられます。便が硬くなるのは、腸内の水分が足りていないサインです。

もともと水をあまり飲まない子や、冬場で飲水量が減っている場合は特に注意が必要です。いつでも新鮮な水が飲めるよう、水飲み場を複数設置したり、給水器を活用したりして、愛犬が常に水分補給できる環境を整えてあげましょう。

食事の偏り

毎日の食事が偏っていることも、犬の便秘の原因となり得ます。特に、消化しにくい穀類(とうもろこし・小麦など)が多く含まれるフードや、低品質な原材料、人工添加物を使用したフードは、消化不良を起こし便秘につながる可能性があります。

また、カルシウムの過剰摂取も便を硬くする原因になります。骨や骨由来のおやつを与えている場合は、量を見直してみましょう。

トイレが苦手

「トイレが汚れている」「トイレトレーニングで叱られた経験がある」など、トイレ自体にネガティブな印象を持っていると、排便を我慢してしまい便秘の原因になることがあります。

トイレは常に清潔に保ち、排泄に成功したらたくさん褒めてあげることで、トイレが安心できる場所だと教えてあげましょう。

病気

生活習慣に問題が見当たらないのに便秘が続く場合、何らかの病気が原因となっている可能性も疑われます。

考えられる病気 病気の症状・原因
消化器の腫瘍 消化管やその周辺にできた腫瘍が腸を圧迫し、便の通りを妨げている。
前立腺肥大 去勢していないオスに多く、肥大した前立腺が直腸を圧迫する。
会陰ヘルニア 肛門周りの筋肉が弱まり、その隙間から臓器などが飛び出して直腸を圧迫する。未去勢の中高齢オスに多い。
椎間板ヘルニア 神経の圧迫により排便に関わる神経が麻痺したり、痛みでいきめなくなったりする。

これらの病気は、特に以下の犬種で発症しやすい傾向があります。

  • ミニチュアダックスフンド
  • トイプードル
  • コリー
  • ジャーマンシェパード
  • ミニチュアシュナウザー
  • シベリアンハスキー
  • 柴犬
  • ゴールデンレトリバー

これらの犬種を飼っている方は特に注意深く観察し、便秘以外の症状が見られる場合は、すぐに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

犬の便秘は何日から?

犬の排便は通常1日に1~3回程度ですが、個体差があります。では、犬の便秘は何日から心配すべきなのでしょうか。一つの目安として、丸2日間(48時間)排便がない場合は「便秘」と考えられます。

また、毎日便が出ていても、ウサギのフンのように硬くコロコロした便しか出ない場合も便秘のサインです。もし5日以上排便がない状態が続くなら、それは「異常事態」です。腸に便が大量に溜まり、自力で排便できなくなる「巨大結腸症」などの重篤な病気の可能性もあるため、ただちに動物病院を受診してください。

排便しようといきむ姿勢を見せるのに、3日間まったく便が出ない場合も、病院へ連れて行くことを強くおすすめします。

犬の便秘、症状は?

犬の排便回数は個体差が大きいため、「1日に何回」という基準だけで判断するのは難しい場合があります。では、犬の便秘ではどのような症状が見られるのでしょうか。

回数以外に注意したい、犬の便秘の主な症状は以下の通りです。

  • 便が硬く、色が濃く、コロコロしている
  • お腹が張っている、触られるのを嫌がる
  • 何度もいきむが、便が出ない、または少量しか出ない
  • 食欲がない、元気がない、嘔吐する

これらの症状が見られたら、便秘を疑いましょう。特に室内犬の場合は、毎日のトイレ掃除の際に便の状態をチェックする習慣をつけることが、早期発見につながります。

普段から「散歩中に必ずうんちをする」という子が1日でもしなかった場合は、それだけでも便秘のサインかもしれません。注意深く様子を見てあげてください。

犬の便秘、4つの対処法!

愛犬に便秘のサインが見られたとき、飼い主さんがご家庭でできることがあります。ここでは、犬の便秘に効果的な4つの対処法をご紹介します。ただし、これらは応急処置であり、症状が改善しない場合は必ず獣医師に相談してください。

自宅でできる犬の便秘対処法
  • 水分をしっかり摂らせる
  • 適度な運動をさせる
  • 食事内容・ドッグフードを見直す
  • お腹をマッサージする

これらの対処法は、便秘の原因に合わせて行うことが基本です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

対処法1. 水分を摂る

まず試したい犬の便秘対処法は、水分を十分に摂らせることです。水分で便を柔らかくすることで、排泄を促します。

ドライフードをぬるま湯でふやかして与えたり、ウェットフードを取り入れたりするのも効果的です。また、鶏肉のゆで汁(味付けなし)など、風味をつけた水分を与えてみるのも良いでしょう。

ただし、野菜や果物などで水分を補う場合は、与えすぎると下痢の原因になるため、少量から試してください。

対処法2. 適度な運動をする

適度な運動も、犬の便秘を解消するための有効な対処法です。運動は腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、スムーズな排便を助けます。

散歩の時間を少し長くしたり、ドッグランで思い切り走らせたりすることで、腸が刺激されます。運動後には喉が渇き、自発的に水を飲んでくれることも期待でき、便秘解消の好循環が生まれます。

対処法3. 食事・ドッグフードを見直す

毎日の食事内容やドッグフードを見直すことも、犬の便秘の根本的な対処法につながります。消化の良い動物性タンパク質が主原料で、食物繊維がバランス良く含まれたフードを選びましょう。

便秘対策用の療法食もありますが、飼い主さんの自己判断で切り替えるのではなく、必ずかかりつけの獣医師に相談の上で選択してください。

対処法4. マッサージをする

お腹のマッサージも、犬の便秘解消をサポートする対処法としておすすめです。腸の動きを外から優しく刺激してあげましょう。

犬をリラックスさせて仰向けにし、飼い主さんの温かい手で、おへそを中心に「の」の字を描くようにゆっくり優しくなでてあげます。犬が嫌がる場合は無理に行わないでください。

人間用の便秘薬は使わないで!

絶対に自己判断で人間用の便秘薬を犬に与えないでください。人間と犬では体のつくりが異なり、薬の成分が中毒を引き起こすなど、命に関わる危険性があります。

気になる初期症状は獣医師に相談してみる

「最近、愛犬のうんちが出ていないな…」といった飼い主さんだからこそ気づける些細な変化を見逃さないことが重要です。

症状が軽いうちに獣医師に相談することで、早期解決につながります。

心配なときは迷わず病院で診てもらいましょう

犬の便秘は、生活習慣の見直しで改善することも多いですが、病気のサインである可能性も常に忘れてはいけません。2~3日排便がなかったり、ぐったりして元気がないといった症状が見られる場合は、迷わず動物病院を受診してください。

また、元気そうに見えても、排便時に痛そうに鳴く、便に血が混じるなど、普段と違う様子があれば、それも獣医師に相談すべきサインです。

不安な気持ちでインターネット検索を続けるよりも、専門家である獣医師に診てもらうのが最も確実で安心です。原因が分かれば、ドッグフードの変更など、愛犬に合った正しい対策をとることができます。愛犬の健康のために、心配なときはまず病院へ行きましょう。

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