愛犬の耳の中に、黒いコーヒーかすのような耳あかを見つけたり、それが動いているように見えたりしたら驚きますよね。
その黒い耳あかの正体は、「ミミヒゼンダニ(耳ダニ)」かもしれません。犬の耳ダニは非常に繁殖力が高く、一度寄生すると自然には治りません。また、他の犬にも簡単に感染させてしまう、やっかいな寄生虫です。
この記事では、犬の耳ダニの詳しい症状や原因、動物病院での取り方(治療法)、処方される薬、そして家庭でできる効果的な対策・予防法までを詳しく解説します。
耳ダニとは?何が原因なの?
耳ダニとは
ミミヒゼンダニ
犬に寄生する耳ダニとは、主に「ミミヒゼンダニ」という種類の、0.5mmほどの小さなダニを指します。
このミミヒゼンダニは、犬の耳の中(外耳道)に寄生し、耳あかや皮膚からの分泌物をエサにして成長します。卵は2〜4日で孵化し、わずか3週間で成虫となって耳の中で大量の卵を産み、繁殖を繰り返します。
犬の耳ダニを放置すると、激しいかゆみから外耳炎を発症し、さらに中耳炎、内耳炎、耳血腫といった深刻な病気の原因となるため、早期の発見と治療が非常に重要です。
耳ダニの原因
垂れ耳などの犬種的な要因
耳のケア不足
感染した犬との接触
耳ダニの感染には、いくつかの原因が考えられます。ダックスフンドやキャバリアのような「垂れ耳の犬種」は、耳の中が蒸れて湿気がこもりやすく、耳ダニが繁殖しやすい環境になるため特に注意が必要です。
また、飼い主さんが愛犬の耳掃除を怠るなど、日々の耳のお手入れが不足していることも、耳ダニが繁殖する原因となります。
耳ダニは感染力が非常に強いため、耳ダニに感染している他の犬とじゃれ合ったり、同じブラシを使ったりするなどの直接的・間接的な接触が感染の主な原因となることも少なくありません。
耳ダニの診断法
基本的に両耳に症状が出る
寄生は耳の中が中心
子犬の時期に感染しやすい
多頭飼育では全頭に感染が広がりやすい
黒い耳あかがあるからといって、必ずしも耳ダニが原因とは限りません。しかし、耳ダニによる耳疥癬(みみかいせん)症には、上記のような特徴的な診断ポイントがあります。
特に多頭飼いしているご家庭では、一頭でも耳ダニに感染すると、他の犬にも感染している可能性が極めて高いです。その場合、全頭を同時に治療しなければ、再感染を繰り返し根絶が困難になります。
犬の耳ダニの特徴、どんな症状が出る?
激しく耳をかゆがる
耳の周りの脱毛
目や耳の炎症
黒く乾燥した耳あか
耳からの異臭
耳だけでなく首もかゆがる
ふらつき・平衡感覚の異常
同じ方向をぐるぐる回る(旋回運動)
犬が耳ダニに感染した場合、特徴的な症状として、まず激しいかゆみから「しきりに耳を掻く」行動が見られます。掻きすぎた結果、「耳の周りの毛が抜け落ちたり」「自分の爪で耳や目を傷つけ、炎症を起こしたり」することもあります。
また、耳の中の違和感から「頭をブルブルと頻繁に振る」「床や家具に耳をこすりつける」といった行動も、犬の耳ダニの典型的な症状です。
耳ダニの症状が重症化すると、かゆみは「耳の周辺だけでなく首のあたりまで広がり」ます。
さらに炎症が内耳や平衡感覚を司る三半規管まで達すると、神経に異常が生じます。その結果、うまくバランスが取れなくなり、「首を傾けたままふらふらしたり」「同じ場所をぐるぐる旋回したり」といった神経症状が見られるようになります。
犬の耳ダニ、取り方は?
耳の中の毛の処理
耳の洗浄(耳あか・かさぶたの除去)
殺ダニ剤の投与・塗布
犬の耳ダニの取り方として最も安全で確実な方法は、動物病院で適切な治療を受けることです。自己判断で耳を掃除すると症状を悪化させる恐れがあるため、まずは獣医師に診断してもらいましょう。病院では、耳ダニを完全に駆除するまで治療を受けられます。
病院での治療(取り方)は、まず耳道内の毛を処理し、薬が浸透しやすいようにします。
次に、専用の洗浄液などで耳あかやかさぶたを丁寧に取り除き、殺ダニ効果のあるイベルメクチンやセラメクチンといった駆除薬を投与、または点耳薬を塗布します。
耳ダニのライフサイクル(卵から成虫になるまで)が約3週間であるため、再発を防ぐにはこの期間に合わせて、継続的に治療を受けることが重要です。
犬の耳ダニ、薬は何を使うの?
使う薬
耳ダニの駆除薬(滴下タイプなど)
抗生剤や抗真菌剤の塗り薬
抗炎症作用のある点耳薬
犬の耳ダニ治療では、動物病院で耳を洗浄してもらった後、耳ダニに効果のある駆除薬を投与してもらいます。その後は獣医師の指示に従い、処方された塗り薬・点耳薬を使って飼い主さんがご自宅でお手入れを続けるのが一般的です。
薬の副作用
使用で炎症が悪化することも
犬種や体質によっては重篤な副作用の危険も
犬の耳ダニに使う薬には、副作用のリスクもあるため、使用前には必ず獣医師と相談してください。
例えば「バイオチャンジ」という耳洗浄液は効果的ですが、刺激が強く、すでに炎症がひどい犬に使うと症状を悪化させる可能性があります。
また、過去にノミ・ダニ駆除薬として使われていた「フロントライン」は、耳ダニの成虫自体には効果がありません。犬種によっては重篤な副作用や死亡例も報告されているため、自己判断で薬を使用することは絶対にやめてください。
犬の耳ダニを対策するには?
生活環境を清潔に保つ
シャンプー後は耳をしっかり乾かす
食事管理と運動で免疫力を維持
感染した動物との接触を避ける
愛犬を耳ダニから守るためには、日頃からの対策が非常に重要です。犬の耳ダニを予防する基本は、愛犬の耳と生活環境を常に清潔に保つことです。特に垂れ耳の犬や耳の中に毛が密集している犬種は、シャンプー後に耳の内側に水分が残らないよう、優しく拭き取ってしっかり乾かしましょう。
また、バランスの取れた食事や適度な運動は免疫力を高め、耳ダニを含む様々な感染症にかかりにくい体を作るための有効な対策です。
そして、耳ダニは接触で感染するため、感染している動物との接触を避けることが最も重要な対策の一つです。愛犬が感染してしまった場合は、他の犬への配慮として、ドッグランの利用を控えたり散歩ルートを変更したりするなどの対応が求められます。
vet所属獣医師先生
気になる初期症状は獣医師に相談してみる
「愛犬が耳をしきりにかいている」「耳から少し変なニオイがする」といった、飼い主さんだからこそ気づける愛犬の初期症状を見逃さないでください。
それらは耳ダニや他の病気のサインかもしれません。できれば愛犬の様子がわかる動画を撮ったうえで、些細なことでもまずはかかりつけの獣医師に相談することが、愛犬の健康を守るための第一歩です。
人間への影響
「犬の耳ダニは人間にうつるの?」と心配になるかもしれませんが、犬に寄生するミミヒゼンダニが人間の耳に寄生して繁殖することは基本的にありません。
ただし、非常にまれですが、アレルギー体質の人が耳ダニに触れることで、一時的に皮膚にかゆみや赤い発疹が出ることがあります。愛犬の健康のため、そして家族が快適に暮らすためにも、日頃から生活環境をきれいに保ち、愛犬の体をよく観察して耳の内部も定期的にチェックしてあげてくださいね。