愛犬が1日に何度もおしっこをしている、おしっこの間隔が短いなど、頻尿の症状が見られると「何か病気なのかな?」と心配になりますよね。
犬の頻尿は、単なる水分の摂りすぎだけでなく、膀胱炎や腎臓病、糖尿病といった重大な病気が隠れているサインかもしれません。
この記事では、犬の頻尿で考えられる症状や原因、動物病院での検査や治療、そして家庭でできる対策について詳しく解説します。
犬の頻尿、どんな症状?
・おしっこの間隔が短くなる
・1日に何度もトイレに行く
・1回のおしっこの量が少ない
・おしっこが出ないのに排尿ポーズをとる
犬の頻尿の症状として、まず「おしっこの間隔が短くなる」「1日に何度もトイレに行く」といった変化が挙げられます。排尿回数が増える一方で、1回あたりの量が減るのが特徴です。
特に注意したいのが、排尿ポーズをとるのにおしっこが出ていない、またはポタポタとしか出ない場合です。これは頻尿だけでなく、尿道閉塞や膀胱炎など、緊急性の高い病気の可能性も考えられます。愛犬の様子を注意深く観察しましょう。
犬の頻尿、原因は?
・膀胱炎
・膀胱結石・尿路結石
・慢性腎不全
・前立腺肥大(未去勢のオス)
・糖尿病
・クッシング症候群
・ストレスやマーキング行動
犬の頻尿の原因は様々ですが、多くは泌尿器系の病気が関係しています。代表的な原因として「膀胱炎」「膀胱結石」「尿路結石」「慢性腎不全」「前立腺肥大」「糖尿病」「クッシング症候群」などが考えられます。
原因1:膀胱炎
膀胱炎は、尿道から侵入した細菌が膀胱内で増殖し、炎症を引き起こす病気で、犬の頻尿の最も一般的な原因の一つです。膀胱が常に刺激されるため、何度もトイレに行きたがります。
メスはオスに比べて尿道が短く太いため、地面の細菌が侵入しやすく、膀胱炎の罹患率が高い傾向にあります。細菌感染のほか、ストレス、加齢、排尿の我慢、結石、特定のミネラルバランスのフードなども発症の引き金になります。
原因2:膀胱結石・尿路結石
膀胱結石や尿路結石は、尿に含まれるミネラル成分が結晶化し、石のようになったものです。これが膀胱や尿道を刺激することで頻尿や血尿といった症状を引き起こします。結石によって尿道が塞がれてしまうと尿道閉塞という命に関わる状態に陥る危険性があるため、特に注意が必要です。
おしっこの通り道である尿路に結石ができる尿路結石では、排尿ポーズをとるのにおしっこがほとんど出ていないといった症状がみられたら、すぐに動物病院を受診してください。
原因3:慢性腎不全
慢性腎不全は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、特にシニア犬に多く見られます。腎臓は尿を濃縮する役割を担っていますが、機能が低下すると薄いおしっこを大量にするようになります。その結果、水をたくさん飲み、おしっこの量・回数が増える「多飲多尿」が初期症状として現れます。
進行すると食欲不振や体重減少、被毛のパサつきなど、全身に症状が広がります。
原因4:前立腺肥大
去勢していないオスの犬に見られる病気で、加齢に伴い男性ホルモンの影響で前立腺が大きくなります。肥大した前立腺が膀胱や尿道を圧迫するため、おしっこが出にくくなり、少量ずつ何度も排尿するという頻尿の症状が見られます。
原因5:糖尿病
糖尿病は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが悪くなることで、血液中の糖分濃度が高い状態が続く病気です。体は余分な糖を尿と一緒に排出しようとするため、尿量が増加します。その結果、喉が渇き、水をたくさん飲むようになり、おしっこの量や回数が増加(多飲多尿)します。
原因6:クッシング症候群
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、副腎からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。コルチゾールの影響で血糖値が上昇し、糖尿病と同様に多飲多尿の症状を引き起こします。お腹が膨れる、脱毛なども特徴的な症状です。
犬の頻尿、発症しやすい犬はいる?
犬の頻尿は、特定の犬種に限定されるものではありませんが、発症しやすい傾向を持つ犬はいます。「性別」や「年齢」が大きく関わっており、特に注意が必要です。
オスよりメス
前述の通り、メスは解剖学的な構造から尿道が短く、細菌が膀胱に到達しやすいため、膀胱炎やそれに伴う結石症を発症しやすく、頻尿になりやすいと言えます。
7歳以上のシニア犬
7歳以上のシニア期に入ると、加齢に伴い「慢性腎不全」や「前立腺肥大(未去勢オス)」、「糖尿病」や「クッシング症候群」といった病気の発症リスクが高まります。これらの病気の症状として頻尿が現れることが多いため、高齢の犬は特に注意が必要です。
特定の病気になりやすい犬種
頻尿の原因となる病気には、それぞれかかりやすいとされる犬種が存在します。
慢性腎不全になりやすい犬種
イングリッシュ・コッカー・スパニエル、サモエド、シーズー、スタンダード・プードル、ブル・テリアなど。
糖尿病になりやすい犬種
ミニチュア・シュナウザー、ビーグル、ダックスフンド、プードル、ケアーン・テリアなど。
クッシング症候群になりやすい犬種
プードル、ダックスフンド、ボクサー、ボストン・テリア、ポメラニアンなど。
犬の頻尿、発症してしまった場合の対処は?
愛犬が頻尿を発症してしまった場合、その原因となっている病気に対する適切な対処が必要です。自己判断せず、必ず動物病院で獣医師の診断を仰ぎましょう。
膀胱炎の対処法
細菌性膀胱炎の場合、抗生剤の投薬が主な治療となります。放置すると腎盂腎炎など重篤な病気に発展する恐れがあるため、処方された薬は獣医師の指示通り最後まで飲ませることが重要です。
vet所属獣医師先生
膀胱・尿路結石の対処法
結石の種類によって治療法が異なります。食事療法で溶かすことができる結石(ストルバイト結石など)と、外科手術でしか取り除けない結石(シュウ酸カルシウム結石など)があります。おしっこが全く出ない場合は緊急事態ですので、夜間や休日でもすぐに病院へ連絡してください。
vet所属獣医師先生
慢性腎不全の対処法
残念ながら、一度壊れてしまった腎臓の機能を元に戻すことはできません。そのため、治療は病気の進行を緩やかにし、症状を和らげる対症療法が中心となります。腎臓の負担を軽減する療法食や、投薬、定期的な点滴などを行います。
前立腺肥大の対処法
根本的な治療は去勢手術です。手術をすることで前立腺は縮小し、頻尿などの症状も改善します。内科的治療としてホルモン剤を投与することもあります。
糖尿病・クッシング症候群の対処法
これらの内分泌系の病気は、生涯にわたる治療が必要になることがほとんどです。糖尿病ではインスリン注射、クッシング症候群ではホルモン分泌を抑える薬の投与を継続的に行います。適切な治療を続けることで、良好な生活の質を維持できます。
犬の頻尿、どんな検査が必要?
・尿検査
・血液検査
・画像検査(レントゲン・エコー)
動物病院で犬の頻尿の原因を特定するために必要な検査には、主に「尿検査」「血液検査」「画像検査」があります。
1:尿検査
頻尿の診断において最も重要な検査です。尿中の細菌、結晶、潜血、糖、タンパク質などを調べることで、膀胱炎、結石症、腎不全、糖尿病などの病気を診断する手がかりになります。
2:血液検査
全身状態を把握するために行います。腎臓の数値(BUN, Cre)、血糖値、肝臓の数値などを調べることで、腎不全、糖尿病、クッシング症候群などの病気の診断に繋がります。
3:画像検査
レントゲン検査や超音波(エコー)検査で、膀胱や腎臓、前立腺の形や大きさ、結石の有無などを直接観察します。これにより、結石の場所や大きさ、腫瘍の有無などを確認できます。
犬の頻尿、対策するには?
犬の頻尿を予防・対策するには、日頃からの健康管理が何よりも大切です。特に「食事管理」「飲水量の確保」「ストレスケア」を意識しましょう。
食事管理では、肥満を防ぐために適正なカロリーを心がけ、バランスの取れたフードを選びましょう。高カロリーのおやつの与えすぎは禁物です。また、いつでも新鮮な水が飲める環境を整え、適度な飲水を促すことも結石予防に繋がります。
ストレスは免疫力を低下させ、膀胱炎などの原因になることもあります。快適な室温を保ち、静かな休息場所を確保し、毎日の散歩や遊びで適度な運動をさせてあげることが、心身の健康維持に繋がります。
もし愛犬が頻尿だったら?
もし愛犬が頻尿のサインを見せたら、それは体からの重要なメッセージかもしれません。背後には、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
暑い日の散歩後など、生理的な理由で一時的におしっこの回数が増えることはありますが、「元気がない」「食欲がない」「血尿が出ている」「排尿時に痛そうに鳴く」など、他の症状を伴う場合は特に注意が必要です。自己判断で様子を見ずに、できるだけ早くかかりつけの動物病院で診察を受けてください。