【獣医師監修】犬の乳腺腫瘍(乳がん)とは?症状と見分け方、手術と費用について解説

犬の病気には多くの種類がありますが、特に未避妊のメス犬が注意したい病気の一つが犬の乳腺腫瘍です。この腫瘍には良性と悪性があり、悪性のものは「乳がん」とも呼ばれ、愛犬の命を脅かす可能性があります。

犬の乳腺腫瘍は、約50%が悪性であると報告されています。ちなみに猫の場合は約90%が悪性のため、犬と猫を一緒に飼っているご家庭では、両方のペットに注意が必要です。

悪性の乳腺腫瘍は、発見が遅れると肺などに転移し、命を落とす危険性が高まります。

しかし、犬の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療によって根治も目指せる病気です。そのため、飼い主さんが日頃から愛犬の体の変化に気づいてあげることが非常に重要になります。

この記事では、犬の乳腺腫瘍について、その原因や症状、治療法、予防策までを詳しく解説します。

犬の乳腺腫瘍とは?

犬の乳腺腫瘍とは、母乳を作る組織である「乳腺」が腫瘍化する病気です。犬の乳腺は、お腹の左右に沿って通常5対(10個)あり、この乳腺のいずれの場所にも腫瘍ができる可能性があります。

特に、避妊手術をしていない高齢のメス犬に多く見られる病気として知られています。

犬の乳腺腫瘍の怖い点は、他の臓器への転移です。腫瘍ができた場所から、近くのリンパ節(特に脇の下や内股のリンパ節)へ転移し、進行すると血流に乗って肺やお腹の中の臓器へと広がっていきます。

犬の乳腺腫瘍の原因は?

犬の乳腺腫瘍が発生する明確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、発情に関わる女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が、発生に大きく関与していると考えられています。

そのため、避妊手術を行うタイミングが発症率に大きく影響します。研究データによると、初めての発情を迎える前に避妊手術を行った犬は、乳腺腫瘍の発生率が著しく低くなることがわかっています。

また、遺伝的要因や、肥満もリスクを高める一因とされています。日頃の体重管理も、乳腺腫瘍の予防につながる大切な要素です。

vet監修獣医師先生

初回発情前に避妊をすると、乳腺腫瘍の発生率は 0.5%と非常に低い割合になります。

犬の乳腺腫瘍の症状は?良性と悪性の見分け方は?

犬の乳腺腫瘍で最もわかりやすい症状は、乳頭のまわりやお腹にできる硬いしこりです。このしこりは、一つだけの場合もあれば、複数個できることもあります。

飼い主さんがしこりを見つけた際、良性か悪性かを見分けることは非常に困難です。一般的に、良性のしこりは比較的小さく(1cm以下)、悪性のしこりは大きく(3cm以上)なる傾向があると言われますが、これはあくまで目安にすぎません。見た目だけで良性・悪性を判断するのは不可能であり、危険です。

確定診断のためには、動物病院でしこりの一部または全体を採取し、病理検査を行う必要があります。また、転移の有無を確認するために、レントゲン検査や超音波検査も行われます。特に肺への転移は末期症状とされ、咳や呼吸困難を引き起こし、有効な治療法が限られてしまいます。

予後は、腫瘍の大きさや転移の有無によって大きく変わります。腫瘍が小さく、転移がない段階で完全に切除できれば良好な経過を期待できますが、肺に転移してしまった場合の予後は極めて厳しいものとなります。

vet監修獣医師先生

乳腺腫瘍でのしこりが見つかった場合、自分だけで判断せず、検査ができる場合は検査を行いましょう。

犬の乳腺腫瘍、治療法は?乳がんだと手術する?

犬の乳腺腫瘍における最も基本的な治療法は、外科手術による腫瘍の切除です。乳腺腫瘍の約半数は悪性(乳がん)であり、転移のリスクがあるため、多くの場合で手術が第一選択となります。

良性の腫瘍であっても、将来的に悪性化する可能性や、大きくなって生活の質を落とす可能性があるため、切除が推奨されることが少なくありません。

ただし、犬の年齢や健康状態、腫瘍の進行度、すでに他の臓器へ転移しているかなど、総合的に判断して治療方針が決定されます。悪性の乳がんと診断された場合は、速やかに獣医師と相談し、愛犬にとって最適な治療法を検討することが重要です。

犬の乳腺腫瘍の手術方法は?

犬の乳腺腫瘍の手術方法は、しこりの大きさ、数、場所、悪性度などを考慮して、主に以下の方法から選択されます。

  1. 腫瘍単独切除(しこりがある部分のみを切除する)
  2. 部分乳腺切除(しこりがある乳腺と、その周辺のつながりが深い乳腺を切除する)
  3. 片側乳腺全切除(しこりがある側の乳腺をすべて切除する)
  4. 両側乳腺全切除(左右すべての乳腺を切除する)

切除範囲が広いほど、新たな腫瘍の発生や再発のリスクは低くなりますが、その分、手術時間も長くなり、犬の体への負担も大きくなります。愛犬の全体的な健康状態を考慮して、最適な手術方法が選ばれます。

手術費用は、病院の設備や手術の規模によって大きく異なりますが、入院費などを含めて5万円以上かかることが一般的です。高額な治療費に備え、ペット保険に加入しておくことで、いざという時の経済的負担を軽減できます。

vet監修獣医師先生

切除する箇所やしこりの個数によって、手術にかかる費用は大きく変動します。あらかじめペット保険に入ることで費用を抑えることも可能ですのでうまく活用しましょう。

犬の乳腺腫瘍は対策できるの?

犬の乳腺腫瘍を100%防ぐ確実な対策はありませんが、発症リスクを大幅に下げることが可能な予防法は存在します。

最も効果的な予防策は、初回発情前に避妊手術(卵巣子宮摘出術)を行うことです。これにより、乳腺腫瘍の発生率を著しく低く抑えることができます。

また、肥満は万病のもとと言われるように、乳腺腫瘍のリスクも高める可能性があります。栄養バランスの取れた食事と、毎日の適度な運動を心がけ、愛犬の体重を適切に管理することも大切な予防策の一つです。

vet監修獣医師先生

避妊手術は乳腺腫瘍だけではなく、子宮蓄膿症などの病気も予防することができます。発症リスクを抑えるためにも避妊手術はできるだけ行うことが望ましいです。特に乳腺腫瘍では初めての発情前に行うことがポイントです。

犬の乳腺腫瘍は早期発見が大切

犬の乳腺腫瘍の治療において、何よりも大切なのは早期発見です。そのためには、飼い主さんが日頃から愛犬の体に触れる習慣を持つことが不可欠です。

体を撫でたり、ブラッシングしたりする際に、お腹や胸周りを優しく触って、しこりや腫れがないかを定期的にチェックしてあげてください。もし何か異常に気づいたら、「様子を見よう」と自己判断せず、すぐに動物病院を受診しましょう。

しこりが小さいうちに発見し、適切に治療できれば、たとえ悪性であっても転移を防ぎ、根治できる可能性が高まります。日頃のスキンシップが、愛犬の命を救うことにつながるのです。

愛犬といつまでも健康に過ごすために…

フード選びが愛犬の健康の鍵!

愛犬が毎日を健やかに暮らすためには、日々の食事が非常に重要です。私たち人間と同じように、犬も毎日の食事が体を作り、健康状態に大きく影響を与えます。適切なフードを選ぶことは、病気のリスクを低減し、将来的な医療費の負担を軽減することにも繋がります。

多くの飼い主さんが、愛犬との楽しい思い出作りや、かけがえのない時間のためにお金を使いたいと願っているはずです。そのためにも、まずは健康の基本である毎日の食事から、愛犬の体を守ってあげることが大切です。

愛犬の年齢、犬種、体質に合ったドッグフードを慎重に選び、愛犬が一日でも長く健康でいられるようサポートしましょう!

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