【獣医師監修】犬が歯ぎしりをする原因はストレス?病気?考えられる理由と対処法

愛犬が寝ている時やリラックスしている時に「ギリギリ」「カチカチ」と歯ぎしりをしていると、「口の中に何か異常があるのでは?」「もしかして病気のサイン?」と心配になりますよね。

犬の歯ぎしりは、単なる癖ではなく、何らかの不快感やストレスを抱えているサインかもしれません。この記事では、犬が歯ぎしりをする原因や種類、飼い主さんができる対処法について詳しく解説します。ぜひ、愛犬の健康を守るために参考にしてください。

犬の歯ぎしりの種類は?

歯ぎしりの種類

タッピング
グライディング
クレンチング

「歯ぎしり」と聞くと人間特有の癖だと思われがちですが、実は犬も歯ぎしりをすることがあります。犬の歯ぎしりは、その音や動作から主に3つの種類に分けられます。

一般的に「タッピング」「グライディング」「クレンチング」の順で、歯や顎への負担が大きくなる傾向があります。

タッピング

タッピングは、上下の歯が軽くぶつかり「カチカチ」とリズミカルな音を立てるタイプの歯ぎしりです。特に愛犬が寝ている間に、夢を見ているかのように口を小さく動かすことで起こりやすいです。

このタイプの歯ぎしりは、他の2つに比べて歯や顎へのダメージが少ないため、緊急性は低いと考えられています。

グライディング

一般的に「歯ぎしり」として認識されているのが、このグライディングです。上下の歯を強くこすり合わせるように、前後左右に動かすことで「ギリギリ」「ギシギシ」といった不快な音を立てます。口を閉じた状態や半開きの状態で起こるのが特徴です。

グライディングは無意識に強い力が入るため、一度始まると犬自身で止めることが難しく、歯や顎に大きな負担がかかります。

この状態が続くと、「歯の摩耗」や「歯の破折」だけでなく、「虫歯」や「歯周病の悪化」、さらには「顎関節症」といった深刻なトラブルにつながる危険性があります。

vet所属獣医師先生

歯周病が悪化すると、細菌が血管を通って全身に広がり、心臓や腎臓など体の各臓器にも悪影響を及ぼす可能性があります。

クレンチング

クレンチングは、音を立てずに歯を強く「食いしばる」タイプの歯ぎしりです。口を固く閉じたまま、上下の歯にグッと力を込めている状態を指します。

グライディングと同様に、歯や顎には非常に大きな力がかかり、ダメージも深刻です。

クレンチングはタッピングやグライディングと違って音が出にくいため、飼い主さんが気づきにくいという問題点があります。愛犬の口周りの筋肉がこわばっていないか、定期的に歯の状態をチェックしてあげることが早期発見につながります。

犬が歯ぎしりをする原因は?

歯ぎしりの原因

生理的原因(口内の違和感や痛み)
精神的原因(ストレスや不安)

犬が歯ぎしりをしてしまう背景には、大きく分けて「生理的原因」と「精神的原因」の2つの原因が考えられます。

生理的原因

生理的な原因として最も多いのは、口の中の不快感です。「食べカスが歯に挟まっている」「歯の噛み合わせが悪い」「胃酸の逆流による不快感」「歯周病や口内炎による痛み」などが挙げられます。

また、体のどこかにケガや病気による痛みがあり、その痛みを紛らわすために歯を食いしばって歯ぎしりをすることもあります。生理的原因による歯ぎしりは、口臭が強くなったり、よだれが増えたりと、歯や口内に何らかの異常が見られることが多く、原因を特定しやすいのが特徴です。

精神的原因

精神的な原因は、運動不足や留守番による寂しさ、欲求不満などからくる「ストレス」や「不安」が挙げられます。環境の変化(引っ越し、新しい家族やペットが増えたなど)が引き金になることも少なくありません。

精神的な原因は目に見える症状として現れにくいため、特定が難しい場合があります。愛犬の行動や日々の生活を注意深く観察し、ストレスのサインを見逃さないことが早期の解決につながりますよ。

犬の歯ぎしりをやめさせるには?

歯ぎしりの対処法

生理的原因の対処法
精神的原因の対処法
一時的な対処法

愛犬の歯ぎしりをやめさせるには、まずその原因を突き止めることが大切です。原因に合わせた適切な対処を行いましょう。

生理的原因の対処法

歯ぎしりが生理的原因、特に口内のトラブルによるものであれば、原因となっている病気や症状を治療することが根本的な解決策です。

「不正咬合(噛み合わせの悪さ)」や「歯周病」が疑われるなど、飼い主さんだけでは対処できない場合は、速やかに動物病院で獣医師の診察を受けましょう。専門的な治療が必要です。

食べ物が歯に詰まっている場合は、毎日の歯磨きなど丁寧なデンタルケアを習慣にすることをおすすめします。

精神的原因の対処法

口の中に異常が見られない場合は、ストレスや不安といった精神的な原因が考えられます。

運動不足が原因なら、散歩の時間を長くしたり、コースを変えたり、ドッグランなどで思い切り走らせてあげると良いでしょう。飼い主さんとのコミュニケーション不足が原因なら、一緒に遊ぶ時間を増やし、安心感を与えてあげることが効果的です。

また、避妊・去勢をしていない犬の場合、性的な欲求が満たされないことがストレスになることもあります。手術も選択肢の一つとして獣医師に相談してみることをおすすめします。

一時的な対処法

歯ぎしりの根本原因を解消するには時間がかかりますが、目の前の不快感やストレスを一時的に発散させる方法として、犬用のデンタルガムや硬めのおもちゃを与えるのも一つの手です。

ただし、硬すぎるものは歯を傷つける恐れがあるため注意が必要です。歯ぎしりの頻度が低く、たまに見られる程度であれば、ストレス解消行動の一つと捉え、過度に神経質にならずに見守ることも大切ですよ。

犬の歯ぎしりは老犬に多い?

アニコム損害保険株式会社の調査データ

0~7歳 10歳以上
歯肉炎 約20% 約50%
歯垢・歯石 約70% 約90%

結論から言うと、老犬(シニア犬)は歯ぎしりの原因となりやすい歯周病や歯肉炎にかかる割合が高いため、若い犬に比べて歯ぎしりをする傾向にあります。

犬種にもよりますが、一般的に小型・中型犬は11~12歳、大型犬は8~9歳頃から老犬(シニア期)に入ります。

アニコム損害保険会社の調査によると、10歳以上の犬の約半数が歯肉炎を患っており、歯周病の原因となる歯垢や歯石の沈着は約90%に見られました。これは0~7歳の犬(歯肉炎約20%、歯垢・歯石約70%)と比較して非常に高い数値です。

これらのデータから、多くの老犬が歯の痛みや痒みといった口内の不快感を抱えており、それが歯ぎしりを引き起こす一因になっていると推測できます。

出典:アニコム損害保険株式会社「76.3%が歯周病の予備軍、愛犬も歯みがきの習慣化を!

犬が歯ぎしりをするのは何かの病気?

原因と考えられる病気

歯に関する病気(歯周病・虫歯など)
咳を伴う病気(ケンネルコフ・心臓病など)

犬の歯ぎしりは、何らかの病気が隠れているサインである可能性も十分に考えられます。

歯に関する病気

犬が歯ぎしりをする最も一般的な原因は、歯や歯茎に関連する病気です。歯茎の腫れや出血、強い口臭、歯のグラつきなどがあると、口の中に強い違和感や痛みが生じます。この不快感を和らげようとして、歯ぎしりをすることがあります。

犬が特になりやすい歯の病気としては、「歯周病」やその初期段階である「歯肉炎」、人間と同じ「虫歯」などが挙げられます。

咳を伴う病気

口の中だけでなく、咳を伴う病気が原因で歯ぎしりのような音が聞こえることもあります。激しい咳をした際に、意図せず歯がカチカチとぶつかってしまうケースです。

犬がなりやすい咳を伴う病気には、感染症である「ケンネルコフ」や「気管虚脱」、シニア犬に多い「心臓病」などが考えられます。咳と歯ぎしりが同時に見られる場合は、早めに獣医師の診察を受けましょう。

歯ぎしりは犬の健康状態を知るサイン

犬の歯ぎしりは、単なる癖ではなく、愛犬が発する重要な健康のサインです。歯ぎしりを放置すると、歯に深刻なダメージを与え、「歯が折れる」「虫歯や歯周病が悪化する」「顎関節症になる」といった二次的なトラブルを引き起こす可能性があります。

大切な愛犬のために、歯ぎしりの原因をできるだけ早く突き止め、根本から取り除いてあげることが重要です。日頃から愛犬の口の中をチェックする習慣をつけ、少しでも異常を感じたら、迷わず動物病院に相談することをおすすめします。

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