犬が吐いた!黄色や茶色の嘔吐物は病気?獣医師が解説する原因と危険な症状、対処法

愛犬が突然吐くと、飼い主としてはとても心配になりますよね。

実は、犬は体の構造上、人間よりも吐きやすい生き物です。しかし、だからといって全ての嘔吐が問題ないわけではありません。愛犬の嘔吐には、注意すべきサインが隠されていることもあります。

  • 愛犬が吐いてしまった原因はなんだろう?
  • 何か重大な病気の可能性はある?
  • 嘔吐したとき、飼い主としてどう対処すればいいの?

犬が吐く原因は様々で、症状や危険度も一様ではありません。嘔吐の種類を正しく理解しておくことで、いざという時に適切な対応ができます。

この記事では、犬が吐く原因や種類、そして症状ごとの具体的な対処法について詳しく解説します。愛犬の「困った!」を解決するため、ぜひお役立てください。

犬が吐く、「胃内容物を吐く」「食道内容物を吐く」「飲み込むことができない」の違いは?

犬は四足歩行のため胃が横向きで、胃液も濃いことから人間より吐きやすい動物です。犬の「吐く」という行為は、主に「嘔吐」「吐き出し」「嚥下困難」の3種類に分けられます。それぞれの違いを理解することは、獣医師の診断を受ける際に非常に役立ちます。

嘔吐(胃や小腸の内容物を吐く)

「嘔吐」とは、胃や小腸の内容物を吐き出す行為です。吐いたものはある程度消化されているのが特徴で、下を向いて吐き、吐瀉物を再び食べようとすることは稀です。食べたものが消化器系まで達しているため、原因として胃や腸のトラブル、腎臓や肝臓といった内臓疾患などが考えられます。

吐き出し(食道の内容物を吐く)

「吐き出し」は、力強く食べ物を吐き出す行為を指します。吐いたものは消化されておらず、フードの形がそのまま残っていることも多く、それをもう一度食べるケースもあります。吐瀉物が未消化であることから、原因は喉や食道にあると推測されます。獣医師の診断を受ける際は、吐瀉物の写真や、症状が繰り返される場合は動画を見せると、より正確な診断につながります。

嚥下困難(うまく飲み込めない)

「嚥下(えんげ)」とは食べ物を飲み込む動作のことで、「嚥下困難」は食べ物をうまく飲み込めずに吐き出してしまう状態を指します。この場合も、食べ物は胃腸に到達していないため、吐いたものは消化されていません。原因は、飲み込む動作に関わる口腔・喉・食道にあると考えられます。口腔に問題がある場合は、食事中に食べ物をうまくくわえられなかったり、口からポロポロ落としたりする様子が見られることもあります。

犬が吐く、吐くことが多い犬種・世代は?

犬の嘔吐のしやすさには、犬種や年齢も関係しています。ここでは、特に吐くことが多いとされる犬種と世代について解説します。

吐くことが多い犬種

嘔吐しやすい犬種

短頭種
超小型犬~小型犬

気管が細い傾向にある「短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど)」や、チワワ・トイプードルなどの「超小型犬~小型犬」は、比較的嘔吐が多い犬種といわれています。

また、胃捻転や胃拡張といった命に関わる病気の初期症状として嘔吐が見られることもあります。これらの病気は大型犬に多いとされますが、小型犬や中型犬、老犬でも発症する可能性があるため注意が必要です。

吐くことが多い世代

嘔吐しやすい世代

子犬
老犬

成長期の子犬は、消化機能が未熟で適切な食事バランスを整えるのが難しいため、吐いてしまうことがあります。また、強い好奇心からくる異物の誤飲も原因となり得ます。

一方、消化機能が衰えがちな老犬も嘔吐が多くなる傾向にあります。軽い体調不良による嘔吐でも、老犬にとっては体力を大きく消耗する原因になるため注意が必要です。

世代を問わず、「フードが体に合わない」「犬にとって有害なものを食べた」といった理由で吐くこともあります。特に新しいフードに切り替えた直後は、愛犬の様子を注意深く観察しましょう。

問題のある嘔吐と問題のない嘔吐の違いは?

犬の嘔吐には、一時的で心配のいらないものと、病気のサインである危険なものがあります。その違いを見分けるための考え方を紹介します。

人間の子供と同じだと考える

犬の嘔吐の原因は、吐いたものだけでは判断できません。人間の子供の場合を想像すると分かりやすいでしょう。

例えば、車酔いで吐いてしまった場合、すぐに病院へは行かず、まずは安静にして様子を見ることが多いですよね。しかし、原因不明の嘔吐が続き、ぐったりしている場合は、すぐに病院へ連れて行くはずです。

犬も基本的には同じです。「吐いた原因」「吐く頻度」「吐いたものの状態」「吐いた後の様子」をしっかり確認し、動物病院へ行くべきか判断しましょう。判断に迷う場合や不安な場合は、迷わずかかりつけの獣医師に相談してください。

問題のある嘔吐(緊急性が高いケース)

以下のような症状が見られる場合、病気や緊急性の高い状態が考えられます。すぐに動物病院を受診してください。

  • 嘔吐を何度も繰り返す
  • 吐いたものに血が混じっている(赤、茶色、黒っぽい色)
  • 下痢や発熱など、他の症状も併発している
  • 吐いた後、ぐったりして元気がない
  • お腹が張っている、痛がる様子を見せる

問題のない嘔吐(様子を見ても良いケース)

以下のような原因が明らかな場合、緊急性は低いと考えられます。まずは安静にして様子を見てあげましょう。

    • 食べ過ぎ、早食い
    • 空腹(黄色い胃液や白い泡を吐く)
    • 乗り物酔い
    • 散歩中に草を食べた後(ただし、除草剤などの危険性には注意)

 

ただし、安静にしていても元気がない、症状が続くといった場合は、早めに獣医師に相談をしてください。

犬が吐いたときに確認するポイントは?問題のある嘔吐の見分け方

愛犬が吐いてしまったら、慌てずにいくつかのポイントを確認しましょう。これらは獣医師が診断する上でも重要な情報になります。

犬が吐く前、吐いた後の症状は?

吐く前兆の例
  • お腹を波打たせながらえずく
  • よく咳をする
  • よだれが異常に多い

嘔吐の場合、吐く前に「グフッ、グフッ」とお腹を動かしながら「えずく」様子が見られます。もし愛犬が仰向けや横向きでえずいていたら、吐瀉物による誤嚥を防ぐためにうつ伏せの体勢にしてあげましょう。無理に飲食はさせず、静かに様子を見てください。

吐いた後にケロッとして元気であれば、一過性のものである可能性が高く、過度な心配は不要です。しかし、ぐったりしていたり、苦しそうにしていたりする場合は、危険な病気が隠れている可能性を考え、すぐに病院へ連れて行きましょう。

吐く頻度は?

嘔吐の頻度による分類
  • 急性嘔吐:1回きり、または3日以内に治まる
  • 慢性嘔吐:症状が3日以上続く

嘔吐は頻度によって「急性」と「慢性」に分けられます。3日以内に治まる「急性嘔吐」は、早食いや異物誤飲、感染症などが原因として考えられます。

一方、3日以上続く「慢性嘔吐」は、背景に何らかの病気が隠れている可能性があります。たとえ元気や食欲があるように見えても、症状が長引く場合は必ず獣医師の診察を受けてください。

吐いたものに血が混じっている?

血が混じる場合に考えられる病気
  • 急性胃炎
  • 胃潰瘍
  • 腸閉塞
  • 腫瘍

吐いたものに血が混じっている(吐血)場合、「急性胃炎」「胃潰瘍」「腸閉塞」といった消化器系の病気が疑われます。特に、吐瀉物がコーヒーのような茶色や黒っぽい色をしている場合は、胃や腸で出血してから時間が経っていることを示し、重症の可能性が高いため、直ちに病院へ向かってください。

急性胃炎の場合、一時的に絶飲食させて胃腸を休ませる治療が一般的です。症状に応じて制吐剤や胃粘膜保護剤などが投与されます。胃潰瘍や腸閉塞の場合は、より専門的な治療や外科手術が必要になることもあります。

その他にも、以下の病気の可能性が考えられます。

  • 胃拡張・胃捻転
  • 膵炎
  • 腎臓病・肝不全
  • 胆嚢炎・胆管肝炎
  • 慢性腸症(IBD)
  • 子宮蓄膿症
  • 中毒
  • アナフィラキシーショック

嘔吐物に異物や異臭はない?

異臭がある場合に考えられる病気
腸閉塞

通常の嘔吐物は、消化途中のフードと胃酸が混じり、酸っぱいにおいがします。しかし、嘔吐物から便のような臭いがする場合は非常に危険なサインです。これは「腸閉塞」などにより、腸の内容物が胃まで逆流している可能性を示唆します。この場合は一刻を争う事態ですので、すぐに動物病院を受診してください。

犬が吐いてしまうときの原因ごとの対処法は?

よくある嘔吐の原因
  • 元気で食欲もあるのに吐く
  • 1日に何度も吐く
  • エサを食べてすぐに吐く
  • 吐く仕草をしても吐かない
  • 黄色や茶色の嘔吐物を吐く
  • 白い泡を吐く
  • 幽門や噴門の病気で吐く
  • 薬品などの中毒で吐く
  • 草を食べて嘔吐する

犬が元気も食欲もあるのに吐くときの原因と対処法

原因

急性胃炎
疲れやストレス
エサが合わない

対処法

半日程度の絶食
エサをぬるま湯でふやかす

嘔吐以外に症状がなく元気な場合は、「急性胃炎」「ストレス」「食べ過ぎ」「フードが体質に合わない」などが原因と考えられます。特にドッグフードに含まれる小麦やとうもろこしなどの「穀類」は、犬によっては消化不良の原因になります。

対処法としては、まず半日~1日程度絶食させて胃腸を休ませます。その後、ドッグフードをぬるま湯でふやかして消化しやすくしてから少量与えてみましょう。嘔吐が何日も続く場合は、病院で診察を受けてください。

犬が1日に何度も吐くときの原因と対処法

原因

異物の誤飲
アレルギーや病気
寄生虫

対処法

すぐに病院で診てもらう

1日に何度も嘔吐を繰り返す場合は、異物の誤飲、アレルギー、ウイルス感染、内臓疾患など、深刻な原因が考えられます。脱水症状を起こす危険もあるため、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

診察の際は、「何を食べたか」「どんな物を吐いたか」「何回吐いたか」といった状況をできるだけ詳しく獣医師に伝えてください。

犬がエサを食べてすぐに吐くときの原因と対処法

原因

異物の誤飲
エサの早食い

対処法

早食い防止の工夫
食事の量を調整する

フードの形がそのまま残った未消化のものを吐き戻す場合、多くは「早食い」が原因です。特に食欲旺盛な犬によく見られ、吐いたものをまた食べようとすることもあります。この場合は、一回の食事量を減らして回数を増やす、早食い防止用の食器を使うなどの工夫で改善が期待できます。

ただし、異物を飲み込んで食道や胃を傷つけている可能性もゼロではありません。元気がないなど他の症状が見られる場合は、病院を受診しましょう。

犬が吐く仕草をするのに吐かないときの原因と対処法

原因

胃捻転・胃拡張の可能性

対処法

食事回数を増やす
食後の休息をとる

吐こうとしているのに何も出ない、という状態は「胃捻転・胃拡張」のサインかもしれません。これは、胃がガスで膨れ上がり、ねじれてしまう緊急性の高い病気で、特に胸の深い大型犬に多く見られます。よだれを大量に流す、お腹が膨れる、落ち着きなくウロウロするといった症状が見られたら、命に関わるため夜間でも救急病院へ向かってください。

予防策としては、一度に大量のフードを与えず食事回数を分ける、食後すぐの激しい運動を避けるなどが有効です。

犬が黄色や茶色の嘔吐物を吐く原因と対処法

嘔吐物の色も健康状態を知る手がかりになります。黄色い液体は、空腹時間が長くなることで逆流

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