愛犬が突然「ゲホゲホ」「カッカッ」と苦しそうな咳をしていませんか?もしかしたら、それは犬の伝染性呼吸器疾患である「ケンネルコフ」かもしれません。
ケンネルコフは「犬かぜ」とも呼ばれ、特に子犬や老犬では重症化しやすく、肺炎を引き起こして命に関わることもある怖い病気です。しかし、正しい知識を持って早期発見・早期治療を行えば、回復が可能です。
この記事では、犬のケンネルコフの主な原因から具体的な症状、動物病院での治療法、そして最も重要なワクチンによる予防方法と接種時期について詳しく解説します。
犬の病気、ケンネルコフとは?原因は?
ケンネルコフとは、複数のウイルスや細菌が原因となって引き起こされる、犬の伝染性気管気管支炎の総称です。非常に感染力が強く、下記のような病原体が単独または複合的に感染することで発症します。
- 犬パラインフルエンザウイルス
- 犬アデノウイルス2型
- 気管支敗血症菌(ボルデテラ・ブロンキセプチカ)
- 犬ヘルペスウイルス
- 犬ジステンパーウイルス
単独の病原体による感染であれば1〜2週間で回復することが多いですが、複数の病原体に複合感染すると症状が重篤化しやすく、完治までに1ヶ月以上を要することもあります。特に空気が乾燥する冬場はウイルスの活動が活発になるため、一層の注意が必要です。
ケンネルコフの感染経路は?子犬や老犬はかかりやすい?
ケンネルコフの主な感染経路は、感染犬の咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した食器・おもちゃなどを介した接触感染です。
ペットホテルやドッグラン、トリミングサロンなど、不特定多数の犬が集まる場所は感染リスクが高まります。また、以下のような犬は特にケンネルコフにかかりやすいため注意が必要です。
- 生後6週~6ヶ月齢の子犬:母親からの免疫が切れ、自身の免疫がまだ十分に発達していないため。
- 老犬:加齢により免疫力が低下しているため。
- ストレスを抱えている犬:環境の変化(引っ越し、新しい家族が増えた等)や過度の興奮はストレスとなり、免疫力を低下させます。
特に子犬や老犬は重症化しやすいため、飼い主が感染経路を理解し、リスクを避ける工夫が求められます。
ケンネルコフの症状は?
ケンネルコフに感染すると、以下のような呼吸器系の症状が現れます。愛犬の様子に少しでも異変を感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
【初期症状】
- 喉に何かが詰まったような、乾いた短い咳(「ゲホゲホ」「カッカッ」という音)
- 興奮時や運動後に咳が悪化する
- 食欲や元気は比較的あることが多い
【悪化した場合の症状】
- 発熱
- 食欲不振、元気消失
- 黄色や緑色がかった膿のような鼻水、目ヤニ
- 湿った咳や、吐くような仕草を伴う咳
- 重症化すると呼吸困難や肺炎を引き起こす
ケンネルコフの治療法は?
ケンネルコフの治療は、症状の重さや原因となっている病原体によって異なりますが、基本的には犬自身の免疫力で治すためのサポート(対症療法)が中心となります。
動物病院では、主に以下のような治療が行われます。
- 抗生物質:細菌による二次感染を防いだり、治療したりするために処方されます。
- 咳止め薬・気管支拡張薬:辛い咳の症状を和らげ、呼吸を楽にします。
- ネブライザー療法:霧状にした薬剤を直接気道に送り込む吸入治療です。鼻水や咳がひどい場合に効果的です。
- インターフェロンなど:免疫力を高めるための注射や投薬を行うこともあります。
治療と並行して、湿度を保った部屋で安静にさせる、栄養価の高い食事を与えるなど、飼い主による自宅でのケアも回復を早めるために非常に重要です。
ケンネルコフから愛犬を守る方法は?ワクチンを接種するの?
ケンネルコフから愛犬を守るために最も効果的な方法は、混合ワクチンの接種です。ケンネルコフの原因となる病原体のうち、「犬ジステンパーウイルス」「犬アデノウイルス2型」「犬パラインフルエンザウイルス」は、多くの混合ワクチンに含まれています。
さらに、任意で気管支敗血症菌(ボルデテラ)に対するワクチン(点鼻タイプなど)を接種することも可能です。多頭飼いやペットホテルを頻繁に利用する場合は、獣医師と相談するとよいでしょう。
ワクチン接種以外の予防法は以下の通りです。
- 環境の管理:室内の温度・湿度を適切に保ち、常に清潔な環境を維持する。
- ストレスの軽減:過度な運動や急激な環境の変化を避ける。
- 感染犬との接触を避ける:咳などの症状がある犬との接触は避けましょう。
特に多頭飼いの場合、もし1頭がケンネルコフに感染したら、速やかに他の犬と隔離し、食器や寝床も完全に分けて二次感染を防ぐことが大切です。
ワクチン予防接種の時期は?
ケンネルコフを予防するためのワクチン接種は、子犬の時期に開始し、その後は定期的な追加接種が必要です。一般的な接種時期の目安は以下の通りですが、必ず獣医師の指示に従ってください。
【子犬のワクチンプログラム(例)】
- 1回目:生後6~8週齢頃
- 2回目:1回目の接種から3~4週間後
- 3回目:2回目の接種から3~4週間後
※注意:ワクチンプログラムが完了するまでは十分な免疫がついていないため、ドッグランや他の犬との積極的な接触は控えるのが安全です。
【成犬の追加接種】
子犬の時期のワクチンプログラム終了後は、1年に1回の追加接種が推奨されています。これにより、ワクチンの効果を持続させ、ケンネルコフを含む様々な感染症から愛犬を守ることができます。かかりつけの獣医師と相談し、愛犬に最適な接種計画を立てましょう。
犬を飼う前に必ず確認すること
これから新しく犬を家族に迎える場合、ケンネルコフの感染リスクを減らすために事前の確認が重要です。ペットショップやブリーダーから迎える際には、必ずワクチン接種証明書の有無を確認し、必ず受け取りましょう。
接種証明書には、いつ、どの種類のワクチンを接種したかが記録されており、今後の健康管理やワクチン計画を立てる上で不可欠な情報となります。また、迎えた直後は環境の変化で犬がストレスを感じやすいため、咳などの体調変化がないか、特に注意深く見守ってあげてください。