大切な愛犬を恐ろしい感染症から守るために、ワクチン接種は非常に重要です。犬のワクチンには、法律で接種が義務付けられているものと、任意で接種するものがあります。
「どのワクチンをいつ打てばいいの?」「費用はいくらくらい?」「副作用が心配」といった飼い主さんの疑問に答えるため、この記事では、世界的な基準である「ワクチネーションガイドライン」を基に、犬の予防接種の種類、適切な時期や回数、費用の目安などを詳しく解説します。
※フィラリア予防薬はワクチン接種ではないので、この記事では割愛しています。
ワクチネーションガイドラインとは?最新版の内容は?
ワクチンをコア※1、ノンコア※2、非推奨※3に分類する
すべての犬・猫に混合ワクチンを接種する
混合ワクチンの最終接種は16週齢以降
混合ワクチン最終接種後、4週間以上空けて抗体検査
状況により、混合ワクチンを26~52週齢で再接種させる
以降3年以内は、混合ワクチンを接種させない
必要に応じて抗体検査を行い、動物の状態を検査する
ノンコアワクチンは、地域の特性に合わせて毎年接種する
狂犬病ワクチンは、その国の法律に従う
「ワクチネーションガイドライン」とは、世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱する、科学的根拠に基づいた犬と猫のワクチン接種に関する指針のことです。
このガイドラインは、画一的なワクチン接種ではなく、個々の動物の状況に合わせて接種することで「ワクチンの副作用リスクを最小限に抑える」「動物にやさしい獣医療を提供する」ことを目的としています。
世界中の獣医療の専門家によって作成されたワクチネーションガイドラインは、現在最も信頼性の高い指針とされており、日本の多くの動物病院でもこの考え方が取り入れられつつあります。
ガイドラインの内容は定期的に更新されており、「成犬は毎年混合ワクチンを接種する」という考え方から、「抗体価検査を活用し、必要なワクチンを3年ごと、あるいはそれ以上の間隔で接種する」という考え方が主流になっています。かかりつけの動物病院がどのような方針か、最新のワクチネーションガイドラインに基づいて相談してみることが大切です。
※1 ジステンパー、アデノ、パルボ
※2 レプトスピラ、パラインフルエンザなど
※3 コロナ
犬の予防接種、ワクチンの種類は?
犬の予防接種で使われるワクチンは、大きく分けて2種類あります。それぞれのワクチンの目的と必要性を理解し、愛犬の健康を守りましょう。
【法律で義務付けられたワクチン】
狂犬病ワクチンがこれにあたります。狂犬病予防法により、生後91日以上のすべての犬に年1回の接種が義務付けられています。
【任意で接種するワクチン】
混合ワクチンがこれにあたります。飼い主さんの判断で接種を決めますが、犬の致死的な病気を予防するために、接種が強く推奨されています。ドッグランやペットホテルなどの施設利用時に、接種証明書の提示を求められることがほとんどです。
狂犬病ワクチン、時期や回数、料金は?
狂犬病ワクチンは、その名の通り「狂犬病」を予防するためのワクチンです。狂犬病予防法により、生後91日齢以上のすべての犬に対し、生涯に1回の登録と年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。
狂犬病ワクチンの接種は、お住まいの市区町村が春ごろに実施する「集合注射」の会場か、個別に動物病院で受けることができます。費用や利便性に合わせて選びましょう。
初めて狂犬病ワクチンを接種する際は、同時に「犬の登録(畜犬登録)」を行います。登録が完了すると「鑑札」が交付されます。翌年からは、市区町村から接種時期をお知らせするハガキが届くので、忘れずに毎年接種しましょう。接種後は、その年の「注射済票」が交付されます。
狂犬病ワクチンの接種料金は、3,000円~4,000円程度が相場です。これに加えて、注射済票交付手数料(550円程度)や、初回の場合は登録手数料(3,000円程度)が別途必要になります。狂犬病ワクチンの未接種は法律違反となり、20万円以下の罰金が科される場合がありますので、必ず接種してください。
犬の予防接種、混合ワクチンの種類、受け方と料金は?
犬の混合ワクチンは、1本の注射で複数の感染症を予防できるワクチンです。予防できる病気の数によって「5種混合ワクチン」「8種混合ワクチン」など、いくつかの種類があります。
どの混合ワクチンを接種するかは、ワクチネーションガイドラインで推奨されている「コアワクチン」を基本に、愛犬の年齢や生活環境(他の犬との接触機会、お出かけ先の地域など)を考慮して、獣医師と相談して決めることが重要です。
混合ワクチンの接種は法律上の義務ではありませんが、愛犬を命に関わる病気から守るために、接種が強く推奨されています。また、ドッグラン、ペットホテル、トリミングサロンなどの施設では、利用条件として混合ワクチンの接種証明書の提示が求められることが一般的です。
混合ワクチンは動物病院で接種します。料金はワクチンの種類や動物病院によって異なりますが、5種混合で5,000円~8,000円、8種や9種混合で8,000円~10,000円程度が目安です。接種を希望する場合は、事前に動物病院へ問い合わせておくとスムーズです。
予防接種の計画は飼い始めに獣医と相談!
犬の予防接種、特に子犬の時期のワクチンプログラムは、その後の健康を左右する非常に大切なステップです。母犬からの移行抗体がなくなるタイミングを見計らい、適切な時期に複数回の混合ワクチンを接種することで、感染症に対する十分な免疫(抗体)を獲得できます。
成犬になってからは、ワクチネーションガイドラインでも推奨されている「抗体価検査」を受ける選択肢もあります。これは、体内に十分な抗体が残っているか血液で調べる検査です。抗体価が十分であればその年の追加接種を見送ることができ、不要なワクチン接種による体への負担や副作用のリスクを減らせます。
新しく子犬を迎える際は、ペットショップやブリーダーから、これまでのワクチン接種歴が記載された「ワクチン証明書」を必ず受け取りましょう。いつ、何種の混合ワクチンを接種したかという情報は、今後のワクチン計画を立てる上で不可欠です。
愛犬に最適な予防接種の計画を立てるためには、飼い主さんだけで判断せず、必ず獣医師に相談しましょう。ワクチンの種類や接種のタイミングについて、愛犬の健康状態やライフスタイルに合わせて最適なプランを提案してくれます。