犬の鼻水が止まらない!色でわかる危険度|獣医師が解説する考えられる病気と対処法

愛犬の鼻が「フガフガ」「ズーズー」と鳴っていたら、それは鼻づまりのサインかもしれません。犬の鼻づまりは、一時的な体調不良のこともあれば、重大な病気が隠れているケースもあります。呼吸がしづらくなると犬の体に大きな負担がかかるため、原因を突き止め、早めに対処することが大切です。

この記事では、獣医師監修のもと、犬の鼻づまりで考えられる症状や原因、ご家庭でできる対処法から動物病院での検査・治療法まで詳しく解説します。

犬の鼻づまり、どんな症状?

犬の鼻づまりとは、鼻の内部で炎症が起きたり、鼻水が溜まったりすることで空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなっている状態を指します。以下のような症状が見られたら、鼻づまりを起こしている可能性があります。

  • 呼吸時に「フガフガ」「ズーズー」「グーグー」といった音がする
  • 口を開けて呼吸している(開口呼吸)
  • くしゃみを頻繁にする
  • サラサラまたはネバネバした鼻水が出る
  • 眠りが浅そう、いびきが大きくなった
  • 食欲がない、元気がない

見た目では判断しにくい場合、眠っている犬の鼻先に手鏡をかざし、曇らなければ鼻呼吸ができていない、つまり鼻が詰まっていると判断できます。愛犬の様子をよく観察し、普段と違う点がないかチェックしましょう。

犬の鼻づまり、原因は?

犬の鼻づまりを引き起こす原因は、病気によるものから、生理現象や老化に伴うものまで様々です。

鼻づまりの主な原因
  • 病気(アレルギー、感染症、歯周病など)
  • 生理現象(異物の混入など)
  • 老化現象

原因その1:病気

長引く鼻づまりや、他の症状を伴う場合は、何らかの病気が原因である可能性が高いです。特に注意すべき病気について解説します。

鼻づまりを起こす代表的な病気
  • アレルギー性鼻炎
  • 副鼻腔炎
  • 鼻腔内腫瘍
  • 歯周病
  • 鼻ポリープ(鼻茸)
  • ウイルス・細菌による感染症

アレルギー性鼻炎

アレルギーの原因物質(アレルゲン)を吸い込むことで、免疫が過剰に反応し、鼻の粘膜が炎症を起こして鼻づまりになります。主なアレルゲンには、花粉、ハウスダスト、カビ、タバコの煙などがあります。

副鼻腔炎

鼻の奥にある副鼻腔という空間に、ウイルスや細菌の感染、アレルギーなどが原因で炎症が起こる病気です。膿のような粘り気のある鼻水が特徴で、慢性化すると治療が長引くことがあります。

鼻腔内腫瘍

鼻の中に腫瘍ができると、空気の通り道を物理的に塞いでしまい、頑固な鼻づまりを引き起こします。悪性の場合は命に関わることもあり、鼻血を伴う場合は特に注意が必要です。

歯周病

重度の歯周病になると、歯の根元から細菌が上顎の骨を溶かし、鼻腔内に炎症や膿が広がることがあります。これが鼻づまりや、くしゃみの原因となります。

鼻ポリープ(鼻茸)

鼻の粘膜にできる良性のイボ(キノコ状のできもの)です。数は多くありませんが、大きくなることで鼻腔を塞ぎ、鼻づまりの原因となります。

感染症

「犬ジステンパーウイルス」や「犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)」などの感染症にかかると、症状の一つとして鼻水や鼻づまりが見られます。これらの感染症は、発熱や咳、食欲不振など全身に症状が現れることが多く、特に犬ジステンパーは命の危険もあるため、ワクチンによる予防が極めて重要です。

原因その2:生理現象(異物の混入)

散歩中などに、草の種やホコリ、ティッシュの欠片といった異物を鼻から吸い込んでしまうことがあります。体はこれを排出しようとする生理的な反応として、くしゃみを連発したり、鼻の粘膜が炎症を起こして鼻づまりになったりします。

原因その3:老化現象

シニア犬になると、鼻の潤いを保つ分泌腺の機能が衰え、鼻が乾燥しやすくなります。鼻が乾燥すると粘膜が傷つきやすくなり、わずかな刺激でも炎症を起こして鼻腔が狭まり、鼻づまりにつながります。

犬の鼻づまり、発症しやすい犬種はいる?

犬の鼻づまりはどんな犬種でも起こり得ますが、特に注意が必要な犬種もいます。

  • 短頭種(パグ、フレンチ・ブルドッグ、シーズー、ペキニーズなど):生まれつき鼻の穴が狭く、気道が短いため、構造的に鼻づまりを起こしやすい傾向があります。
  • 長頭種(コリー、シェットランド・シープドッグなど):鼻腔内腫瘍の発生率が他の犬種より高いと報告されています。
  • シニア犬(高齢犬):老化による鼻の乾燥や、免疫力の低下から様々な病気にかかりやすくなるため、鼻づまりのリスクが高まります。

犬の鼻づまり、発症してしまった場合の対処は?

愛犬に鼻づまりの症状が見られたら、まずは動物病院で原因を特定してもらうことが大前提です。その上で、原因に応じた適切な対処を行いましょう。

病気が原因の場合の対処法

動物病院で診断された病気の治療を最優先します。投薬治療と並行して、免疫力を維持するための栄養バランスの取れた食事や、快適な生活環境を整えることも回復を助けます。ケンネルコフや犬ジステンパーは、混合ワクチンで予防できる病気です。定期的なワクチン接種を必ず行いましょう。

異物が原因の場合の対処法

鼻の奥に入った異物を無理に飼い主さんが取ろうとすると、粘膜を傷つけたり、さらに奥に押し込んでしまったりする危険があります。くしゃみで自然に出ない場合は、必ず動物病院で獣医師に除去してもらってください。

老化や乾燥が原因の場合の対処法

乾燥による鼻づまりには、加湿が効果的です。ご家庭でできるケアとして、以下の方法を試してみてください。

  • 蒸しタオル:40℃程度のお湯で濡らしたタオルを絞り、愛犬の鼻先に数分間あてて蒸気を吸わせてあげましょう。
  • 鼻のマッサージ:犬の眉間から鼻先にかけて、指の腹で優しくなでるようにマッサージすると、鼻の通りが良くなることがあります。
  • 加湿器の活用:加湿器を使い、部屋の湿度を適切に保ちましょう。特に空気が乾燥する冬場は重要です。シニア犬の場合、湿度は60~70%程度が快適とされています。

犬の鼻づまり、どんな検査が必要?

動物病院では、犬の鼻づまりの原因を特定するために、以下のような検査を行うことがあります。

鼻づまりの主な検査方法
  • 血液検査
  • レントゲン(X線)検査・CT検査
  • 鼻鏡検査・内視鏡検査

検査1:血液検査

全身の健康状態や、アレルギーの有無、炎症反応の程度などを確認します。感染症が疑われる場合は、原因となるウイルスや細菌を特定するための検査も行います。

検査2:レントゲン検査・CT検査

画像検査により、鼻腔や副鼻腔の状態を確認します。腫瘍やポリープの有無、歯周病による骨への影響、膿が溜まっていないかなどを詳細に調べることができます。特にCT検査は、鼻の内部構造を立体的に把握するのに非常に有効です。

犬の鼻づまり、対策するには?

犬の鼻づまりを予防するには、日頃から病気になりにくい体づくりと、快適な生活環境を維持することが基本です。

  • 栄養バランスの良い食事:免疫力を高く保つための基本です。
  • 適度な運動:血行を促進し、健康な体を維持します。
  • 清潔な生活環境:ハウスダストやカビを減らすために、こまめな掃除を心がけましょう。
  • 適切な湿度管理:特に乾燥する季節は加湿器などを活用し、鼻の粘膜を守りましょう。
  • 定期的なワクチン接種と健康診断:感染症を予防し、病気の早期発見につなげます。
  • デンタルケア:歯周病を予防することは、鼻のトラブルを防ぐことにもつながります。

日頃の観察で早期発見を

犬の鼻づまりは、飼い主さんが気づきやすい症状の一つです。加湿などのホームケアで改善することもありますが、症状が長引いたり、元気や食欲がなかったりする場合は、自己判断せずに必ず動物病院を受診してください。

愛犬の呼吸音や行動を日頃からよく観察し、ささいな変化も見逃さないことが、病気の早期発見・早期治療につながります。気になることがあれば、すぐに獣医師に相談しましょう。

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