愛犬が突然下痢をすると、ぐったりしている姿を見るのはつらいですし、片付けも大変で飼い主さんも心配になりますよね。
犬の下痢は、元気な場合もあれば、嘔吐や血便など他の危険な症状を併発することも少なくありません。いざという時に慌てないためにも、下痢の原因や対処法について正しい知識を身につけておくことが大切です。
この記事では、飼い主さんが抱える以下のような疑問にお答えします。
- ✓元気で食欲もあるのに下痢をするのはなぜ?
- ✓水のようなシャバシャバの下痢が続く原因は?
- ✓便に血が混じっている…すぐに病院へ行くべき?
この記事を読めば、愛犬が下痢をしたときの原因の見分け方から、嘔吐や血便を伴う場合の緊急性の判断、家庭での対策、さらには下痢の犬におすすめのドッグフード選びのポイントまで、総合的に理解できます。
愛犬の健康を守るため、下痢のサインを見逃さず、適切に対応できるよう準備しておきましょう。
愛犬の下痢、元気・食欲があるときは?食事が原因?
・食べ過ぎや早食い
・フードの切り替え
・脂肪分の多い食事やおやつの摂取
・ストレスや遊び疲れ
犬が下痢をしていても、元気で食欲もある場合は、病気ではなく一過性の消化不良であることがほとんどです。原因としては「ドッグフードの食べ過ぎ」「脂肪分の多いおやつの摂取」「急なフードの変更」「遊び過ぎによる疲れや環境の変化によるストレス」などが考えられます。
特に好奇心旺盛な子犬は、体力の限界以上に遊んでしまい、疲労から翌日に下痢をすることがあります。また、消化機能が未発達なため、少しの食事の変化でもお腹を壊しやすい傾向にあります。
対策:胃腸を休ませて様子を見る
疲れが原因の場合は、まずゆっくりと休ませてあげましょう。特に体力のない子犬や小型犬は、遊びの時間を適切に管理することが大切です。
食べ過ぎや食事が原因と考えられる場合は、まず半日~1日程度食事を抜き、胃腸を休ませてあげましょう。ただし、水は切らさないようにしてください。その後、下痢が落ち着いていれば、普段のフードを半分程度の量から再開し、数日かけて元の量に戻していきます。
下痢が続くと水分やミネラルが失われがちです。脱水を防ぐため、いつでも新鮮な水が飲めるようにし、必要であれば獣医師に相談の上、犬用の経口補水液などを活用するのも良いでしょう。
犬の下痢が水っぽいときの原因は?
・寄生虫の感染(ジアルジアなど)
・ウイルス性疾患(犬パルボウイルスなど)
・細菌性の食中毒
・食物アレルギー
水のようにシャバシャバした下痢が続く場合、小腸に異常が起きている可能性が高く、注意が必要です。考えられる原因には、寄生虫感染、ウイルス性の病気、細菌による食中毒、食物アレルギーなどがあります。
このタイプの水様性下痢は、急激に体内の水分と電解質を失うため、脱水症状を引き起こしやすく、特に子犬や老犬では命に関わる危険性があります。
寄生虫
特に注意が必要な寄生虫に「糞線虫」や「ランブル鞭毛虫(ジアルジア)」があります。これらは重篤な症状を引き起こすことがあります。
糞線虫は、成犬では無症状のこともありますが、子犬が感染すると激しい下痢を起こし、発育不良や体重減少が見られます。特に生後間もない子犬では急性出血性腸炎により命を落とすこともあります。
ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)は、汚染された水(水たまりなど)の飲水や他の犬の便との接触で感染し、若い犬に多く見られます。透明で悪臭の強い大量の水様便が特徴です。
アレルギー
特定の食べ物に対するアレルギー反応として、下痢を引き起こすことがあります。原因となるアレルゲンは犬によって様々ですが、一般的に「牛肉」「乳製品」「小麦」「大豆」「とうもろこし」などが原因となりやすいと言われています。アレルゲンを含まないフードに切り替えることで、症状が改善することが多いです。
対策:すぐに動物病院で診察を受ける
水っぽい下痢が数回続いた場合は、自己判断で様子を見ずに動物病院を受診してください。診断の際には、以下の情報を獣医師に伝えるとスムーズです。
- いつから下痢が始まったか
- 1日に何回下痢をしているか
- 便の色や臭い、状態
- 普段の食事内容(フード、おやつ)
- 寄生虫の駆除歴
- 拾い食いや変わったものを口にした可能性
愛犬の様子をメモしたり、便の写真を撮っておいたりすると、より正確な診断につながります。
vet所属獣医師先生
犬が下痢をして、嘔吐もするときの原因は?
・ウイルス性胃腸炎(コロナウイルスなど)
・細菌性の食中毒
・異物の誤飲による腸閉塞
・膵炎などの内臓疾患
下痢と嘔吐は同時に起こることが多く、原因も共通している場合が少なくありません。食中毒、ウイルス性胃腸炎、そしておもちゃなどの異物誤飲による腸閉塞などが主な原因として挙げられます。
特に腸閉塞は、何度も嘔吐や下痢を繰り返し、命に関わる緊急性の高い状態なので、細心の注意が必要です。
嘔吐と下痢は、体内の有害物質を排出しようとする防御反応ですが、激しく続くと深刻な脱水症状を引き起こすため、速やかな治療が不可欠です。
例えば「犬コロナウイルス性腸炎」に感染すると、突然元気がなくなり食欲不振に陥ります。その後、特徴的なオレンジ色の水様性下痢と嘔吐が見られます。成犬は7~10日で回復することが多いですが、免疫力の低い子犬では重症化し、突然死に至るケースもあります。
対策:繰り返す場合はすぐに病院へ
嘔吐が1回だけで、その後は元気で食欲もあるなら、少し様子を見ても良いかもしれません。しかし、嘔吐が2回以上続く、ぐったりしている、子犬や老犬であるといった場合は、迷わず動物病院へ連れて行きましょう。
犬の下痢、血便の原因は?緑色やねばつきがある場合は?
・大腸炎、出血性胃腸炎、腫瘍など
・犬パルボウイルスなどの感染症
・寄生虫
・食物アレルギーや消化不良
・胆汁の異常(腸機能の低下)
・クロロフィルを含む植物やサプリの摂取
・抗生物質の影響
・大腸や小腸の炎症
・寄生虫(鞭虫など)
・ストレス
血便の原因
下痢に血が混じる血便は、消化管のどこかで出血が起きているサインです。大腸炎や出血性胃腸炎、場合によっては腫瘍などの深刻な病気の可能性も考えられます。便の色によって出血部位を推測できます。
- 鮮やかな赤い血(鮮血便):肛門やその近くの大腸からの出血が考えられます。大腸炎などが疑われます。
- 黒くてタール状の便(黒色便):胃や小腸など、肛門から遠い場所で出血し、血液が消化されて黒くなった状態です。出血性胃腸炎や胃潰瘍などが疑われます。口の中の出血を飲み込んだ場合も黒い便になることがあります。
食べ物が原因の場合
急なフードの変更や食べ過ぎによる消化不良、またはフードに含まれる原材料へのアレルギー反応で腸が傷つき、血便が出ることがあります。
寄生虫が原因の場合
消化管に寄生虫が大量発生して炎症を起こしたり、寄生虫が腸壁に噛み付いて出血させたりすることで血便が見られます。寄生虫だけでなく、ウイルス感染による腸炎も血便の一般的な原因です。
感染力の強いウイルスに注意
特に「犬パルボウイルス」は、激しい嘔吐と血便を伴う重篤な胃腸炎を引き起こします。感染力が非常に強く、子犬の致死率が極めて高い病気のため、混合ワクチンによる予防が不可欠です。ワクチンプログラムが完了していない子犬は特に注意が必要です。
緑色の便の原因
緑色の便は、通常は小腸で再吸収されるはずの胆汁が、腸の機能低下によってそのまま排出され、酸化して緑色に見えるケースがあります。消化吸収に問題が起きているサインなので、動物病院の受診を推奨します。その他、葉緑素(クロロフィル)を多く含む草やサプリメントを食べた場合や、抗生物質の影響で腸内細菌のバランスが崩れた場合にも見られることがあります。
ねばつきのある便の原因
ゼリー状の粘液が付着した「粘液便」は、腸の粘膜が剥がれ落ちて便と一緒に出ている状態です。これは、大腸に何らかの炎症や異常が起きているサインと考えられます。
寄生虫(特に鞭虫や鉤虫)の感染でも粘液便が見られます。これらの寄生虫は腸に噛み付いて吸血するため、血便を併発することも多いです。
寄生虫感染を防ぐには、散歩中の拾い食いをさせない、他の犬の便に近づけない、生活環境を清潔に保つことが重要です。新しく子犬を迎えた際は、必ず動物病院で糞便検査を受けましょう。
vet所属獣医師先生
犬に下痢の血が混じっている場合の対策は?
犬の便に血が混じっていたら、たとえ少量でも軽視せず、速やかに動物病院を受診することが原則です。受診の際は、できるだけ新鮮な便を持参すると、寄生虫検査などがスムーズに行えます。便を採取する際は、人への感染リスクを考え、マスクやビニール手袋を着用すると安全です。
多頭飼いの場合、感染症の拡大を防ぐため、下痢をしている犬を他の犬から隔離し、食器やトイレも分けてください。
緊急性の高さを見極めるポイント
犬の下痢には、様子を見ても良いケースと、すぐに病院へ行くべき緊急性の高いケースがあります。以下のポイントを参考に、冷静に見極めましょう。
すぐに病院へ行くべきサイン
- 下痢が2日以上続いている(成犬で元気・食欲があっても、長引く場合は受診を)
- 子犬やシニア犬(高齢犬)が下痢をしている(体力がなく急変しやすいため、1〜2回の下痢でも受診が安心)
- 嘔吐、発熱、震えなど他の症状を伴う
- ぐったりして元気がない、食欲がない
- 便の状態が明らかに異常(水様便、血便、黒色便、粘液便など)
- お腹を痛がる素振りを見せる(お腹を丸める、触られるのを嫌がるなど)
様子を見ても良い可能性があるケース
- 成犬で、下痢以外の症状がなく元気で食欲もある
- 下痢が1〜2回で収まり、便の状態が徐々に改善している
- 原因(食べ過ぎなど)がはっきりしている
ただし、少しでも不安があれば、迷わず獣医師に相談しましょう。
下痢をしたときは絶食するべき?
下痢の症状が軽く、嘔吐もなく元気な場合は、胃腸を休ませるために半日~1日程度の「絶食」が有効な場合があります。食事は止めますが、脱水を防ぐために新鮮な水はいつでも飲めるようにしておきましょう。
絶食で症状が治まったら、消化の良い食事(ふやかしたドッグフードなど)を普段の4分の1~半分の量から始め、数回に分けて与えます。問題がなければ、3~4日かけて徐々に元の食事量に戻していきましょう。
症状を繰り返す場合は早急に動物病院へ
絶食しても下痢が改善しない、または食事を再開したら再び下痢をする場合は、家庭での対処は困難です。消化器の病気や感染症の可能性が高いため、すぐに動物病院を受診してください。
気になる初期症状は獣医師に相談してみる
「最近、便が少し柔らかいかも」「たまに便に粘液が混じる」といった、飼い主さんだからこそ気づける愛犬の小さな変化は、病気の初期症状かもしれません。こうしたサインを「様子見」で放置してしまうのは危険です。
便の状態がわかる写真や動画を撮っておくと、獣医師に相談する際に非常に役立ちます。些細なことだと遠慮せず、まずはかかりつけの獣医師に相談してみてください。
vet所属獣医師先生
うんちの色や形、大きさ、量などいつもと違ううんちがみられたときは、うんちを動物病院に持って行ってうんちの確認をしてもらいましょう。日頃からうんちをすぐに捨てずによく観察しておくことをおすすめします。
犬に下痢の症状がみられたらすぐに病院へ
犬の下痢は、単なる食べ過ぎから、命に関わる重篤な病気まで、様々な原因によって引き起こされます。特に、嘔吐や血便、元気消失といった他の症状を伴う場合は、緊急性が高いサインです。
愛犬の様子がおかしいと感じたら、自己判断で様子を見過ぎず、できるだけ早く動物病院を受診することが、愛犬の健康を守るために最も大切なことです。